井口健二のOn the Production
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2023年06月25日(日) イビルアイ、マルセル・マルソー沈黙のアート、ジョン・ウィック:コンセクエンス

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『イビルアイ』“Mal de ojo”
2014年製作『パラドクス』と、2015年製作『ダークレイン』
という作品がいずれも「未体験ゾーンの映画たち」の特集で
上映されたメキシコの俊英イサーク・エスバン脚本・監督に
よる2022年製作のメキシカンホラー作品。
都会暮らしだった少女の妹が不治の病となり、彼女らの一家
が住むアパートにも原因不明の病気が蔓延し始めて、母親は
意を決したように家族を引き連れて実家のある田舎町に戻っ
てくる。そこには母親とは疎遠で、姉妹や父親も初めて会う
大邸宅に暮らす祖母がいたが…。
両親が治療法を求めて出掛けることになり、姉妹と祖母、そ
れに使用人の若い男女が邸宅で過ごす内、邸宅内には不穏な
空気が流れだす。果たしてそれは、映画のプロローグに登場
し、使用人の女性が寝物語で姉妹に語った魔女の物語の再来
なのか?

出演は、2012年6月紹介『コロンビアーナ』にも出ていたと
いう1950年生まれのオフェリア・メディーナと、2007年生ま
れで現地のテレビシリーズで頭角を現したパオラ・ミゲル。
他にイヴァーナ・ソフィア・フェロ、サマンサ・カスティー
ヨ、アラップ・ベスキーらが脇を固めている。
脚本・監督の前記の2作品は、時空のループやパンデミック
などSF的な要素も感じられる作品だったようだが、本作は
魔女ものでどちらかと言うとオーソドックスなホラー。コケ
脅かし的な演出も散見されて、ある意味原点に戻った作品と
も言えそうだ。
監督自身は本作の前には演出オンリーでSF作品を手掛けた
ということで、そんな感覚をリセットする意味もあったのか
もしれない。いずれにしてもオーソドックスなホラーを撮る
ことが次回作(SFであるにせよ、ホラーであるにせよ)への
飛躍につながりそうだ。
そんな訳で、本作だけで監督の技量などを計れるものではな
いが、オーソドックスなホラーをきっちりと撮れているとい
うことは、間違いなく力量はある監督と思える。監督の履歴
などを抜きにすれば、それくらいにしっかりとしたホラー作
品といえるものだ。

公開は7月28日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なお本作はオンライン試写で鑑賞したもので、僕自身が鑑賞
中に映画に集中できなかったきらいはある。

『マルセル・マルソー沈黙のアート』“L'art du silence”
ドイツ・ケルン生まれで、チューリッヒ藝術大学の映画監督
学科を卒業、現在は同大学で映像と音についての講師を務め
るというマウリツィウス・シュテルクレ・ドルクス監督が、
フランス出身で「パントマイムの神様」と称えられるマレセ
ル・マルソーについて描いたドキュメンタリー。
実は監督の実父が聾者のパントマイマーなのだそうで、そん
な興味から本作はスタートしたのかな。そんな動機があるだ
けでも本作への取り組み方に深みが生じているようにも感じ
られる。
そして監督はマルソーのアーカイヴを紐解き、未亡人や2人
の娘、さらに孫までもがパフォーマンスの道に進んでいると
いう事実を紹介する。またマルソーが戦時中にレジスタンス
として活動していたという事実なども語られる。
その一方で、マルソーの直弟子のロブ・メルミンがパーキン
ソン病を罹患した中で、パントマイムを応用した療法を編み
出した話や、監督の父親が聾者によるパントマイムの可能性
を描くなど、多岐に渉る話が展開される。
ただこの多元性が観ていて集中を削がれるかな。特にレジス
タンスとして活動していたという話は、その活動で救出され
た人物なども登場してもっと突っ込んでもいいかなとも思え
たが、実は既に映画化もある有名な話だったようだ。
そんなこんなで何となく取り留めもない作品だが、マルソー
の業績やその偉大さなどが明確に判る作品にはなっている。
偉大さの点はまあ先刻判っている話でもあるのだが、そんな
ことをバランスを取りながら描いた作品だ。
とは言うものの映画ファンとしては映画との関りはもう少し
描いて欲しかったかな。テレビはいろいろアーカイヴも登場
するが、映画のシーンなどももう少し登場したら、僕の関心
の度合いも変わったかもしれない。
特にアレハンドロ・ホドロフスキーとの関係は、ホドロフス
キー側からの証言は聞いていたので、マルソー側のエピソー
ドも知りたかったが、本作の体制ではそこには至らなかった
ようだ。
でもまあ、マルセル・マルソーを知らない人にはその偉大さ
を知らしめる作品にはなっている。それが本作の目的と言え
ばそうなのだろうが。

公開は9月16日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ
フォーラムにてロードショウされる。

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
               “John Wick: Chapter 4”
2019年7月21日付題名紹介『ジョン・ウィック3』などキア
ヌ・リーヴス主演、アクションシリーズの第4作。
第1作で愛犬を殺された復讐でロシア人組織を壊滅させ、第
2作では家を破壊された仕返しにイタリアン・マフィアを殲
滅させた伝説の殺し屋が、前作では裏社会の掟を破ったこと
から逃亡者となり、本作では自由を求めて裏社会の本丸との
対決に挑む。
そんな物語はヨルダンの砂漠地帯で始まり、ニューヨークの
本拠地であるコンチネンタルホテルに飛び、さらに大阪梅田
のコンチネンタルホテルに来襲する。そしてそれぞれで銃撃
戦や大爆破、大立ち回りや格闘技など凄まじいアクションが
繰り広げられるというものだ。
さらに映画の後半にはベルリンの旧国立美術館、パリのエッ
フェル塔を臨むトロカデロ広場、凱旋門、サクレ・クール寺
院などでも手を変え品を変えてのアクションが展開される。
なおサクレ・クール寺院(モンマルトルの丘)のシーンでは、
史上最長 222段の階段落ちまで登場する。
因にそれらシーンの撮影には日本、フランス、ブルガリア、
ドイツ、アメリカなどから5人のスタントコーディネーター
とそのチームが招集されており、とにかく2時間49分の上映
時間に、のべつ幕なしのアクションが満載された作品だ。
もちろんそこには互いの信頼や血縁など様々な主人公を巡る
人間模様も絡んでくるが、正直に言ってそんなことより壮絶
且つ華麗なアクションに目を見張る作品と言える。

共演はローレンス・フィッシュバーン、イアン・マクシェー
ン、ランス・レディックのレギュラー陣に加えて、ドニー・
イェン、ビル・スカルスガルド、真田広之、シャミア・アン
ダースン、スコット・アドキンスらが新規に登場。
そしてヒロインには、ロンドンを拠点に活動する新潟出身の
ミュージシャン=リナ・サワヤマが、見事なアクションを含
めた鮮烈な映画デビューを飾っている。因にサワヤマは、米
NYタイムズ紙や英ガーディアン紙などでも紹介され、レデ
ィー・ガガやエルトン・ジョンにも認められたという逸材。
本作ではエンディングテーマも手掛けている。
監督は4作通してのチャド・スタエルスキ。スタントのプロ
で『マトリックス』シリーズにも参加していた監督がリーヴ
スとの最高のコラボレーションを繰り広げたものだ。
ドニー・イェンの役柄は盲目の戦士。『スターウォーズ』に
もそんな役柄で出ていたものだが、リスペクトというところ
かな。でも名前がケインというのは…。他にもサワヤマが演
じる役名はアキラ。いろいろと日本へのリスペクトがありそ
うだ。

公開は9月22日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて
全国ロードショウとなる。


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井口健二