2023年03月19日(日) |
ハロウィンTHE END、デスパレート・ラン、忌怪島/きかいじま、エスパーX探偵社、世界の終わりから |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ハロウィンTHE END』“Halloween Ends” 1978年にジョン・カーペンターの監督、ジェイミー・リー・ カーティス主演によってスタートされたスラッシャーホラー シリーズが遂に完結となったようだ。 実は、2019年3月17日付題名紹介『ハロウィン』は第1作の 正式な続編と称されていたようで、2021年にはその続編も公 開されていたのだが、COVID-19の影響などもあって観そびっ てしまっていた。 そんな訳でちょっと中抜けの鑑賞になってしまったが、19年 紹介作で復讐の鬼と化していた女性主人公と殺人鬼との44年 越しの最後の戦いが繰り広げられることになる。しかもそこ には別の要素も加わって中々深い物語になっていた。 物語の舞台は第1作から続くイリノイ州ハドンフィールド。 本作の物語の発端は2019年、ブギーマンの恐怖に震えるこの 街である事件が起きていた。それはベビーシッターの少年が 誤って子供を死に追いやってしまったのだ。 しかしその事件は事故として決着し、少年も刑事裁判で無罪 となっていたのだが…。世間の目は変わらず少年の心は苛ま れて行く。そんな周囲の苛めが頂点に達したとき、ブギーマ ンが復活してしまう。 共演はテレビ出身のアンディ・マティチェックと、Disney+ で「ハーディ・ボーイズ」に主演のローハン・キャンベル。 他に前作に続いてのウィル・パットン、ジェームズ・ジュー ド・コートニー。さらに1978年作と同じ役で登場のカイル・ リチャーズらが脇を固めている。 脚本と監督は、リブート3部作を全て手掛けたデヴィッド・ ゴードン・グリーン。カーティスとカーペンターは製作総指 揮にも名を連ね、カーペンターは原案と音楽でも名前が記載 されている。 製作は、2009年12月紹介『パラノーマル・アクティビティ』 などのジェイソン・ブラム。ブラムは2015年6月紹介『パー ジ』なども手掛けているが、2017年のTIME誌で「世界で最も 影響力のある100人」にも選ばれているそうだ。 1978年の第1作は、1974年『悪魔のいけにえ』と共にスラッ シャーホラーの金字塔とされるものだが、ここまで続いてき たということでは『ハロウィン』の方が一歩抜きんでていた のかな。本作を観るとそんな感覚にもなった。 公開は4月14日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国 ロードショウとなる。
『デスパレート・ラン』“The Desperate Hour” 2010年7月紹介『ソルト』などのオーストラリア人監督フィ リップ・ノイスが、2017年5月紹介『ダイバージェント』な どのナオミ・ワッツを主演に向かえ、息子が通う高校で起き た立て籠り事件にスマホ1台で立ち向かう母親の姿を描いた 作品。 その朝、息子の機嫌は悪かった。そんな息子の部屋に1杯の コーヒーを置き、ジョギングに出かけた主人公は、少し先の 森の入り口で現場に急行するらしいパトカーとすれ違う。そ れも気にせず森の中を走る主人公だったが…。 やがて同級生の母親から高校で何か起きていると知らされた 主人公は息子のスマホにメールを入れるが回答はない。そし て息子が学校に向かったという情報を得た主人公は息子に電 話を掛けるが、それにも応答はなかった。 こんな状況が最初はジョギングをしながら、途中からは息子 の居る学校を目指して疾走しながら続いて行く。そしてさら にスマホを通じて知らされる様々な情報や状況が物語を盛り 上げ、主人公の心を混乱させて行く。 ノイス監督はオーストラリアでスクリーンデビューを果たし たワッツと何時か組みたいと思っていたそうだ。しかしCOVI D-19の影響で映画撮影が想い通りにいかなくなったときに、 出演者が1人だけの展開を思いついた。 脚本は2010年9月紹介『リミット』などのクリス・スパーリ ング。前作もライアン・レイノルズのほぼ1人芝居という作 品だったが、孤立無援のシチュエーションの中で見事としか 言えない物語が展開されている。 学校での乱射事件というのはアメリカなど対岸のニュースと いう感じだったが、最近では日本の学校でも凶悪な事件が起 きているようで、こんな状況がいつ自分の身に降りかかって くるかもしれないお話だ。 しかもそこに別の判断も入ってきてしまうのは、子を持つ親 としては正に恐怖が募る作品だった。そんな展開も以前のハ リウッド映画では考えられなかったものが、最近の流れでは もしかするととも思ってしまう。 そんな混乱に観客も陥れる巧みな脚本と言える。そして現代 アメリカで社会問題となっている状況に対するメッセージ性 も見事に描かれた作品だった。 公開は5月12日より、東京は新宿ピカデリー、イオンシネマ 板橋他にて全国ロードショウとなる。
『忌怪島/きかいじま』 2019年9月29日付題名紹介『犬鳴村』などの清水崇監督によ るホラー作品。前作に続く『樹海村』『牛首村』はCOVID-19 の影響で未見だが、本作はその村シリーズが終っての新たな 展開の始りなのかな。 主人公は気鋭の脳科学者。そんな主人公は女性の脳科学者に 誘われ、彼女がチーフを務めるとある島の研究施設にやって くる。ところが施設に彼女の姿はなく、彼女は不審な死を遂 げたと説明される。 そこで主人公は彼女が開発していた、その島をモデルとする メタバースに入り込むが、突然システム障害が発生。辛くも 危険を回避するもそこには謎のバグが生じていた。そのバグ を追って主人公らの捜索が始まる。 一方、その島には怨讐の伝説があり、その伝説が島民を恐怖 に陥れていた。島の伝説と最新のメタバース。それらが交錯 する恐怖の物語が展開される。 出演は“なにわ男子”西畑大吾、2019年5月26日付題名紹介 『ザ・ファブル』などの山本美月、2010年1月紹介『ソラニ ン』などの伊藤歩、2019年8月4日付題名紹介『左様なら』 などの祷キララ。 他に「ジュノン・スーパーボーイ」グランプリの平岡祐太、 元乃木坂46の生駒里奈、2020年「キラメイジャー」の水石 亜飛夢、2018年8月5日付題名紹介『パパはわるものチャン ピオン』などの川添野愛。さらに大場泰正、當真あみ、笹野 高史、大谷凛香、なだぎ武、吉田妙子らが脇を固めている。 メタバースと現実世界が交錯するという話は映像的にも面白 いからいろいろ作られていると思うが、そこに怨讐が絡むと かなりヤバそうだ。ただそれがメタバースの構築とどう関係 するのかはもう少し詰めて欲しかったかな。 本作の場合はそこに男女の関係も絡んでくるようで、そこに 付け込んで怨念が突破してきたようにも思えるのだが、そこ を描き切るのは難しいとしても、その理論的な部分をしっか り構築して欲しかった感じはした。 でもまあこれがシリーズ化されたら、その辺の関係性も明確 になってくるのかな。うまくすれば新しいジャンルになるよ うな気もするし、日本だけでなく世界中の怨念の絡む伝説と メタバースを関連させた作品を観てみたいものだ。 公開は6月16日より、全国ロードショウとなる。
『エスパーX探偵社〜さよならのさがしもの〜』 1973年生まれ、2003年から多数の短編作品で受賞も果たして いる木場明義監督が、自ら得意と称するSFやファンタシー の要素を日常に注ぎ込んだコメディタッチの作品。 物語の背景は、様々な超能力を持つ人間が存在する世界。そ こでは多くの超能力者が犯罪に加担していた。そんな中で主 人公は、殴られると相手の記憶などが読み取れるという能力 の持ち主。その能力で彼は探偵を開業していたが…。 そんなある日、彼の許に妹が超能力者の犯罪グループに入る のを止めて欲しいという依頼が来る。そこで主人公は調査を 開始するが、そこに顔見知りの刑事が現れ、別件でそのグル ープを追っているから邪魔をするなと警告される。 それでも調査を続けた主人公は、とんでもない殺人鬼の超能 力者と対峙することになってしまう。果たして主人公は、彼 の超能力でその危機を脱することができるのか。 出演は、劇団おぼんろ主宰で舞台の脚本演出も手がける末原 拓馬。他に2018年2月4日付題名紹介『Sea Opening シー・ オープニング』などの佐伯大地、2019年7月紹介『いなくな れ、群青』などの岩井拳士朗らが脇を固めている。 超能力者と探偵というと、ちょっと違うけど1974年に映画化 もされた小松左京原作『エスパイ』辺りが思い浮かぶかな。 アメコミみたいなド派手な戦いでなくても、手軽に描けると いう点では同旨の作品はいろいろありそうだ。 そんな中で本作は、扱われる超能力にいろいろ捻りがあって それなりに楽しめた。それは主人公の能力にしても、副主人 公、さらに敵役の能力も、今までの超能力ものとは少し外し てそれぞれ巧みに設定されていた。 またそれらを伏線として活用する展開もいろいろと巧みで、 この辺は監督が自ら得意と称するだけのことはあるとも感じ られた。SF映画ファンとして納得できる作品だった。これ なら続編も期待したいものだ。 公開は4月29日より、東京は池袋シネマロサ他にて全国順次 ロードショウとなる。
『世界の終わりから』 2009年2月紹介『GOEMON』などの紀里谷和明監督の最 新作で、監督するのは最後かもしれないとされる作品。 時代背景は2030年と設定された現代。主人公はそんな現代で 暮らす女子高校生。両親が交通事故で亡くなり、その後に祖 母も亡くなって、人生に絶望しかかっている状況だ。そんな 彼女の許に突然政府機関の者と称する男性が現れる。 その男性は彼女に最近見た夢を教えて欲しいと言い出し、混 乱する彼女に人類の未来のために協力して欲しいと頼み始め る。そして彼女は戦国時代と思われる過去の世界で幼い女の 子と遭遇する夢を見たことを思い出すが…。 現代と過去、そして未来が交錯する壮大な物語が動き出す。 出演は、2018年8月5日付題名紹介『ギャングース』などの 伊東蒼。共演者には2022年5月紹介『ビリーバーズ』などの 毎熊克哉、2022年『レッドシューズ』などの朝比奈彩、同年 『流浪の月』などの増田光桜。さらに冨永愛、高橋克典、北 村一輝、夏木マリ、岩井俊二、市川由衣、又吉直樹らが脇を 固めている。 実は試写上映の後で紀里谷監督の挨拶があって、それによる と映画の撮影は去年の夏に行われたが、脚本はその半年前ぐ らいに書き始めたということだ。つまりそれはモスクワによ るウクライナ侵攻が始まったころと言える。 本作はそんな状況が色濃く反映された物語とも言える。実際 に監督の言動はかなり厭世的な気持ちに捉われているように も聞こえ、そんな気分が物語の根底にあるのかもしれない。 映画には救いもあるが、そう言い切れない部分もあった。 そんな気持ちが「最後の映画」宣言に繋がったのかもしれな い。しかし『2001年宇宙の旅』の脚本を手掛けたアーサー・ C・クラークは、初めてスタンリー・クーブリック監督に面 会したときに、『博士の異常な愛情』を撮ったばかりの監督 がかなり厭世的で困ったそうだ。 そこを何とか切り替えさせて『2001年』に向かわせたという ことだが、紀里谷監督も作品の傾向から観てSFがお好きな ら、次は『2001年』のような作品で気分転換を図ってもらい たいものだ。協力するSF作家なら色々いると思えるが。 公開は4月7日より、東京はシネスイッチ銀座、新宿バルト 9他で全国ロードショウとなる。
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