2022年12月18日(日) |
生きる、二十歳の息子 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『生きる』 2011年3月11日発生の東日本大震災で被災した宮城県石巻市 立大川小学校。その被災児童の遺族が起こした裁判を巡り、 その結審と現在までを追ったドキュメンタリー。 教育機関では唯一と言われる多数(児童74名、教職員10名)の 被災者を出した大川小学校。しかし地震の発生から津波到達 まで51分間、なぜ彼らは安全な場所に避難しなかったのか。 その疑問が遺族たちを突き動かす。 そして幾度か開かれた行政による説明会。そこでも言が左右 されて肝心の疑問を解消するには至らない。こうして疑問を 究明するための最後の手段として裁判が始められる。そこに は当然のように誹謗中傷も生じてくるが…。 我が子はなぜ津波に巻き込まれなければならなかったのか。 その思いだけが支えとなって、行政を訴えるという無謀かも 知れない裁判が続けられる。そこには我が子の死に値段を付 けるという過酷な現実も待っていた。 製作は、2018年11月紹介『描きたい、が止まらない』の松本 裕子、本編は製作者の第2作。監督は元テレビ朝日ディレク ターで、2006年『シリーズ言論は大丈夫か〜ビラ配り逮捕と 公安〜』にてJCJ賞受賞の寺田和弘(初監督)。 東日本大震災関連のドキュメンタリーでは、震災後の半年も 経たないうちからかなりの本数を観た気がするが、その当時 からこれがいつまで語り継がれるのだろうか、という思いは 続いていた。 それがこんな形でここまで続いてしまうとは。正直に言って もっと早くに検証はされるべきものだったと思うし、こんな 裁判になってしまうのは、遺族にとっても無念だったろう。 そんな思いは如実に伝わってきた。 思えば比較的早期に観たドキュメンタリーで、タイトルは忘 れたが数人のドキュメンタリストが取り敢えずカメラを持っ て被災地に向かうというのがあって、最初は福島の原発被災 地を記録していたが、最後は大川小だった。 その時は前半は悪い意味で物見遊山的な作品だったものが、 最後に突然現実を突き付けられるような気分がしたものだ。 その現実が再び突き付けられた。そんな気持ちにもさせられ てしまう作品だった。 公開は2023年2月18日より、東京は新宿K's cinema他で全国 順次ロードショウとなる。 追記:本稿で言及した先の作品は2012年1月紹介『311』 それから11年を経て、ようやく結論に達したものだった。
『二十歳の息子』 2020年1月26日題名紹介『春を告げる町』などの島田隆一監 督が、児童養護施設等から社会に巣立つ若者らが抱える問題 などを描いたドキュメンタリー。 中心で描かれるのは彼らを支援するための NPO法人に勤める 男性。その男性が罪を犯した1人の若者を支援するため、彼 と養子縁組をして一緒に暮らすことを考える。そして準備を して出所する若者を迎えに行くが…。 実は中心で描かれる人物はトランスジェンダーで、若者はそ うではない。そんなこともあって単純な同居ではない、養子 縁組という手段を取ったのかもしれない。だがその辺から曖 昧で何か観ていて引っ掛かるところが多かった。 それでもまあ、男性は2人の関係を自分の両親に紹介したり して行くのだが、元々息子のカミングアウトも認めている親 だからその辺はすんなりと受け入れられたのかな? でも妹 の発言などが、やはり少し引っ掛かってしまった。 つまり全体として描き切れていない感じで、描くべきことは 多々あるのにその辺が歯痒いというか、理解に苦しむ感じの 作品だった。もちろん男性がやっていることは素晴らしいも のだし、それを描くだけで良いことではあるのだが。 しかも結末が、何というか全く結論になっていないもので、 観客は何を訴えられたのかも理解に苦しむ。実は映像がノー マスクで、つまりコロナ以前に撮影されたもののようだが、 それから3年近く経つのに結論が得られていない。 つくづく難しい問題なのだろうという実感は残るが、一過性 の観客にも理解できるような、何らかの問題提起的なものは 欲しい感じがした。取り敢えず彼らの苦しみは理解したいと 思うが、問題の本質は何処なのか。 上映時間86分で描くには、あまりに大き過ぎるテーマだった のかもしれない。この結末で終わらせず、もっとその後も追 いかけて描き尽くすべきものだったのだろう。改めて監督に はそこを期待したい。 公開は2023年2月より、東京はポレポレ東中野他で全国順次 ロードショウとなる。
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