※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※ ※僕が気になった映画の情報を掲載しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回は賞レースの情報から。 その最初は、12月15日付第173回でも紹介したアカデミー 賞VFX部門の候補作について、その時にも説明したように 7本に絞られた2次候補が発表された。その7本は、 “Australia” “The Crious Case of Benjamin Button” “The Dark Knight” “Hellboy II: The Golden Army” “Iron Man” “Journy to the Center of the Earth” “The Mummy: Tomb of the Dragon Emperror” この7本についてVariety紙の記事では、“Journy…”が 残って、“Indiana Jones”“Cloverfield”“Hancock”が 落選したことを意外と捉えられていたようだが、僕の考えで は、残った7作品のVFXはその方向性が、若返りのメイク アップFXからモンスター、現代から古代の戦闘などヴァラ エティに富んだもので、未見の“Australia”以外の選択は 順当なように感じられる。僕自身としては、その前の15本の 選択のときの方が意外性は大きかった。 因に“Journy…”は、アカデミー賞史上初の3D映画での 選考となったもので、このためアカデミー会員向け上映会の メイン劇場となるゴールドウィンシアターには、3D上映の ための設備が緊急で設けられたとのことだ。そしてこの劇場 では1月15日、最終候補の選考に向けたそれぞれ15分間の抜 粋版の上映と、専門部会員によるスタッフに対するQ&Aな どが行われている。なおこの抜粋版の上映とQ&Aの模様は 無料で一般にも公開されたそうだ。 そしてこの中から最終候補の3本が選ばれる訳だが、僕と しては“Benjamin Button”の選出は固いとは思うものの、 後は大ヒットした“Iron Man”“The Dark Knight”かな? ここでもし“Journy”が残ったら、3D化の流れはいよいよ 本物になると言えそうだ。 * * 続けてアカデミー賞メイクアップ部門も予備候補が発表さ れている。こちらも7本が発表されたもので、その作品は、 “The Crious Case of Benjamin Button” “The Dark Knight” “Hellboy II: The Golden Army” “The Reader” “Synecdooche, New York” “Tropic Thunder” “The Wrestler” 残念ながら、こちらは未見の作品が半数近くあるので評価 はし難いが、観ている作品はそれぞれ納得できるものだ。そ してこの中から最終候補の3本が選ばれることになる。僕の 予想としては、こちらも“Benjamin Button”の選出は固い と思うが、さてどうなるだろうか。 その他、外国語映画部門の予備候補には9作品が発表され て、その中には日本映画の『おくりびと』も含まれている。 こちらは世界中から65本の推薦が在った中から選ばれたもの で、最終候補は5本。4本が落とされるだけというのも微妙 なところだが、果たして日本映画はその関門をくぐることが できるのだろうか。 アカデミー賞の全部門の最終候補は1月22日に発表され、 受賞式は2月22日となっている。 なお、1月11日に発表されたゴールデングローブ賞では、 “The Dark Knight”の故ヒース・レジャーが助演男優賞を 獲得したが、果たしてその勢いがアカデミー賞にも波及する かどうかも興味が湧くところだ。 * * ここからは、製作ニュースを報告しよう。 まずは、シーア・ラブーフ主演作の『ディスタービア』と 『イーグル・アイ』を手掛けたJ・D・カルーソ監督が、童 話「ジャックと豆の木」の大人版と称する“Jack the Giant Killer”という計画を、ニューラインで進めることが発表さ れた。 物語は、人類と巨人たちは長く平和な関係を保っていたと いう設定で始まる。ところがある日のこと、人間のプリンセ スが巨人に誘拐される事件が起き、両者の関係が崩れてしま う。そして主人公となる農夫の若者は、プリンセス救出のた め危険な巨人の国への遠征を行うことになる…というもの。 脚本は、1975年『星の国から来た仲間』に基づくディズニー の新作でザ・ロック主演による“Race to Witch Mountain” を手掛けたマット・ボマックが担当。製作はニール・モリッ ツという作品だ。 なお、今回題名の“Jack the Giant Killer”は、「ジャ ックと豆の木」(Jack and the Beanstalk)の別題としては 比較的多く用いられているもので、同じ題名での映画化も、 1962年ネイザン・ジュラン監督作品などがすでに製作されて いる。そしてこの作品でも、美しいプリンセスを巡る冒険物 語が展開されていた。因にこの作品は、1970年『恐竜時代』 (When Dinosaurs Ruled the Earth)などのジム・ダンフォ ースが特殊効果とアニメーションシーンを手掛けたとも言わ れているものだ。 という作品だが、前の2作では現代技術の最先端を扱った カルーソ監督がどのような巨人の国を描いて見せるかにも興 味が湧く。そして若き農夫役をラブーフが演じるかどうかも 注目になりそうだ。ただしカルーソ監督の予定では、2008年 2月15日付第153回で紹介したコミックス原作“Y: The Lost Man”の映画化の計画も進められており、今回の計画がその 前になるか後になるかは未定のようだ。 * * お次は、“Terminator: Salvation”の公開を控えるMcG 監督の次回作に、ディズニー製作で“20,000 Leagues Under the Sea: Captain Nemo”という計画が発表された。 この作品は、2006年にトニー・スコットが監督した『デジ ャヴ』などのビル・マーシリの脚本を映画化するもので、内 容は、1954年にディズニーで映画化されたジュール・ヴェル ヌ原作『海底二万哩』に登場するネモ船長のキャラクターを 使ったオリジナルの物語とのことだ。 因に、1954年版の“20000 Leagues Under the Sea”(,の ないのが正式らしい)は、ディズニーがアメリカ国内で製作 した初の実写作品とされる(ディズニーは1950年に凍結資産 解消のためイギリスで実写作品の『宝島』を製作している) もので、同年の興行成績は第2位を記録した他、アカデミー 賞でも3個のオスカーを獲得している。また東京ディズニー ランドなど各地のテーマパークのアトラクションとしても人 気の高いもので、つまり今回は、オリジナルのリメイクと、 アトラクションの映画化の2面を持つものだ。 詳しいストーリーなどは発表されていないが、ファミリー 向けの映画になるとのことで、ディズニーでは、できれば今 年中の製作を期待しているようだ。 一方、McG監督には『ターミネーター』の続きも期待され ているものだが、監督自身の意向でその前に別の作品を1本 撮りたいとしていたもので、今回の作品はそれに合致するも の。ただしこの次回作の契約には各社が争奪戦を繰り広げた もので、ディズニーでは800万ドルの契約金から配給収入の 7%という破格の契約条件を提示したという情報も報告され ている。 主人公のネモ船長役にはウィル・スミスが興味を示してい るという噂もあるようで、いずれにしても超大作の冒険映画 が期待できそうだ。 * * アメリカ航空宇宙局(NASA)の協力の許で製作が進め られている“Quantum Quest: A Cassini Space Odyssey”と 題された3Dアニメーション作品に、『スター・トレック』 で新旧カーク船長役のウィリアム・シャトナー、クリス・ペ インと、『スター・ウォーズ』で新旧ダース・ヴェイダー役 のジェームズ・アール・ジョーンズ、ヘイデン・クリステン センの声優での共演が発表されている。 作品にはこの他にも、サミュエル・L・ジャクスン、マー ク・ハミル、『X−ファイル』のアマンダ・ピート、『ブラ インドネス』のサンドラ・オー、『幸せの1ページ』のアビ ゲイル・ブレスリン、さらにニール・アームストロング船長 らの声優出演も発表されていて、SF/ファンタシー映画の ファンにはニヤリとするところだ。 物語は、太陽の中で暮らしていた光粒子の主人公が、太陽 から飛び出して大宇宙の存亡を掛けた戦いに巻き込まれて行 くというもの。其処には、オールドファンには懐かしいNA SA関連のジェット推進研究所(JPL)で製作された往年 の宇宙探査のシミュレーションCGアニメーションもフィー チャーされるようだ。 脚本は、『スター・トレック:ボイジャー』なども手掛け たことのあるハリー‘ドック’クロアーが執筆したもので、 彼は1996年からこの計画を構想していたとのこと。つまり、 『ボイジャー』当時からの構想だったというものだ。また本 作でクロアーは、『ライオンキング』などにも参加している ダン・セントペリエーと共に監督にも挑戦している。 製作は、台湾のディジマックスというアニメーション会社 が担当し、今年中にImax-3Dでの上映が開始された後、一般 映画館にも配給されるとのこと。日本の3D上映館も増えて いるようだが、3D映像はできればImaxで観たいものだ。 * * 2008年2月1日付の第152回で紹介したマリアド・ピクチ ャーズとスタジオ407の提携第2弾として、これもホラー コミックス原作による“The Night Projectionist”という 計画が発表されている。 内容は、ハロウィン前夜の小さな町の映画館を舞台にした もので、オールナイトのドラキュラ映画大会に映画ファンが 大集合。ところがその上映中に映画館には外から鍵を掛けら れて観客は中に閉じ込められてしまう。しかもそこには本物 のヴァンパイアも紛れ込んでいて…というもの。原作のコミ ックスは2月からミニシリーズで発行されるとのことだが、 この内容はホラ・コメかどうかも微妙なところだ。 ただし、映画館が舞台のこの手の作品もいろいろあるが、 特にジャンルに詳しいマニアが集まっているとなると、いろ いろ相手の裏をかくこともできそうだし、まともに作っても お話は面白くなる。ヴァンパイアものはいろいろ仕来りも煩 いところだが、それを逆手に取る楽しさも期待したい。 なお第152回で紹介した“Hybrid”に関しては、2004年に シリーズ第3作となる“Cube Zero”を監督したアーニー・ バーバラッシュの起用が発表され、深海モンスターものとさ れる作品の映画化は来年の撮影開始を目指すとのことだ。し たがって普通に考えれば、第2弾とされる今回の映画化はそ の後ということになるが、いきなりVFXの多用される作品 というのも厳しいところで、お手軽な作品を先に撮る可能性 はありそう。後は日本の配給会社が順調に決まることを祈り たい。 * * もう1本はちょっと残念な情報で、2002年6月15日付第17 回などで紹介してきたオースン・スコット・カード原作によ るヒューゴ・ネビュラ同時受賞作“Ender's Game”の映画化 が棚上げになってしまったようだ。 この情報は、原作者のカードがシリーズ最新作の“Ender in Exile”のプロモーションの席で発言したもので、それに よると、当初は熱心の映画化を進めていたウォルフガング・ ペーターゼン監督はすでに監督の座を離れており、計画が再 始動する可能性は薄れたとのことだ。 また、原作者自身が、現在のハリウッドで映画化するのは 難しいとも考えているようで、それは原作のテーマが単純な アクション・ヒーローものではないこと、それに原作に描か れる人間関係が、いわゆる映画で描かれるものとは異なって いることなどがハリウッドに合っていなかったとしている。 第17回の記事を書いた頃には、原作者と監督は相思相愛の ようにも感じられたが、結局、そのペーターゼン監督の降板 が映画化を行き詰まらせることにもなったようで、これでは 仕方がないということになりそうだ。 なお、原作のシリーズはすでに11作が発表されているが、 中には異なる視点による並行シリーズが含まれるなど、かな り複雑な構成になっているようだ。そこで今回の記事の紹介 によると、1985年に発表された“Ender's Game”の後には、 “Speaker for the Dead”“Xenocide”“Children of the Mind”“A War of Gift”があって、今回発表された“Ender in Exile”はその続きとのこと。つまり正編シリーズの5冊 目の続編になるものとのことだ。 全11冊ということは、この他に並行シリーズが5冊あるこ とになるが、これだけのシリーズを前に映画会社が指をくわ えているというのも面白いところだ。
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