井口健二のOn the Production
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2009年01月01日(木) 第174回

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
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 明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。
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 まずは新年最初はめでたく選出の話題から、アメリカ議会
図書館が選定する永久保存すべき映像の最新版に、『シンド
バッド七回目の航海』と『ターミネーター』、それに1933年
版『透明人間』の選出が発表された。
 この選出は1989年から毎年25本ずつ行われてきたもので、
すでに『スター・ウォーズ』や『2001年宇宙の旅』なども選
ばれているが、その合計が500本となる記念の25本の中に上
記の3本が選ばれたものだ。因に、昨年は『バック・トゥ・
ザ・フューチャー』と『未知との遭遇』が選ばれている。
 一口に500本と言っても、短編やドキュメンタリーも含め
て数10万本以上あると考えられるアメリカの映像作品の中か
らの選出ということで、それだけでも素晴らしいものだが、
実はその中に、少なく見積もっても30本以上のSF/ファン
タシー系の作品が選出されており、僕としてはそれも嬉しく
なってしまうところだ。
 すでに選ばれている作品では、『博士の異常な愛情』『ブ
レードランナー』『E.T.』『エイリアン』『地球の静止す
る日』『猿の惑星』から、『ナイト・オブ・ザ・リビング・
デッド』『ハロウィン』まで様々あるが、まだまだ選ばれて
欲しい作品はたくさんあるところで、それも来年以降に期待
したい。
 なお2008年版には、1972年『脱出』、1967年『冷血』や、
1954年『大砂塵』なども一緒に選ばれており、一般映画の名
作と呼ばれる作品もまだまだ選出が続いているものだ。
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 ここからは製作ニュースで、その新年1本目は、遂に本格
始動したディズニー製作“TRON 2.0”の情報から。
 1982年に公開された電脳SF映画『トロン』の続編に関し
ては、実は2002年2月1日付第8回で最初に報告しているも
のだが、この時の計画は、結局2003年に発表されたヴィデオ
ゲーム版の“TRON 2.0”として完成されたものだ。因にこの
ゲームからは、2004年“Tron 2.0: Killer App”という続編
も発表されている。
 これに対して映画の情報は、2005年2月15日付第81回でも
紹介しているが、この時はリメイク計画として、ブライアン
・クラグマン、リー・スタンタールという脚本家チームの名
前が挙がっていた。しかしこの計画は、その後は立ち消えに
なってしまったようだ。
 その情報が続編として再登場してきたもので、実はこの情
報も2007年9月15日付第143回の頃からちらほらと聞こえて
いたが、今回の発表では出演者として、前作に主演のジェフ
・ブリッジスと、前作のトロン役でその後のヴィデオゲーム
の声優も務めたブルース・ボックスレイトナーの登場も報告
され、本格的な続編の計画となっているものだ。
 そしてこの作品に、2007年11月紹介『ボビーZ』に出演の
オリヴィア・ワイルドと、2008年5月紹介『近距離恋愛』に
出ていたビュー・ガレットの2女優の出演も発表された。た
だしこの2人の役柄では、ワイルドはヴァーチャル世界でマ
スター・コントロール・プログラム(MCP)との戦いを支
援する労働者、ガレットはヴァーチャル世界の女神となって
おり、物語の主人公はそれ以外にいるようだ。
 と言っても、ブリッジスやボックスレイトナーが主演とい
うことはないようで、噂ではこの主人公役に、新作の“Star
Trek”で若き日のマッコイ役を演じているカール・アーバン
の出演の情報も流されている。
 脚本は、テレビシリーズ“Lost”などの製作総指揮も務め
るアダム・ホロウィッツとエドワード・キトシスが担当。ま
た監督には、第143回で紹介したように“Logan's Run”にも
起用の報告されているCF監督のジョセフ・コジンスキーが
発表されているもので、さらに今回の発表によると、撮影は
2月に開始され、公開は2011年の予定となっている。
 物語の詳細は公表されていないが、横暴なMCPが君臨す
るヴァーチャル世界の解放を目指して、ハッカーたちが再び
挑戦するお話ではあるようで、最新のCGIで再々現される
ヴァーチャル世界がどのように進化しているかも楽しみだ。
なお題名は“TR2N”としている情報もある。
 それにしても、ブリッジスとボックスレイトナーは、現実
世界の役柄では年齢的な変化も理解できるが、ヴァーチャル
世界での風貌は年を取るのかな。これも最近の映画を観てい
ると、CGIでならどのようにでもできそうだが、本作では
どう処理するか、その辺にも興味を引かれるところだ。
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 続いても長年の情報で、最初は2002年1月1日付第6回に
報告したコロムビア製作“Sinbad”シリーズ再開の計画が、
今春『ベッドタイム・ストーリー』の公開を控えるアダム・
シャンクマン監督で発表された。
 この計画に関しては、2005年3月15日付第83回でも報告し
ているが、以前にはジョン・シングルトンやロブ・コーエン
の名前も挙がっていた本作の監督に、『ヘアスプレー』など
のミュージカルやコメディが専門と思われる監督の起用が発
表されたものだ。この起用が何を意味するかは微妙なところ
だが、以前あったキアヌ・リーヴスの主演は不明なものの、
ニール・モリッツの製作は変っておらず、アクション映画と
いうスタンスは変えていないようだ。
 一方、映画化のストーリーに関しては、中国を舞台にした
アラジンの魔法のランプを巡る物語とも言われており、基本
はディズニーに本拠を置くシャンクマンとしては、この辺も
微妙なところだ。アニメーションと実写、主人公も異なるも
のだから競合にはならないが、ランプの精ジニーは登場する
のだろうし、その表現はどうするのだろうか?
 ただしシャンクマンの予定では、ディズニーで“Bob the
Musical”という計画も進行中で、他人の心の中の音楽が聞
こえるようになる…という、ちょっとファンタスティックな
趣もあるこの作品と、どちらを先に撮るかは決まっていない
とのこと。しかし、海外紙の報道では監督が次に撮る2作と
されているもので、それはつまり12月1日付第172回で紹介
した2011年公開予定の“Hairspray 2”の前に、今回の2作
を撮るということになる。
 2作ともキャスティングなどはまだ発表されていないが、
シャンクマンの周辺は年明けから忙しくなりそうだ。
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 次はちょっと最近の情報で、デイヴィッド・フィンチャー
監督が、製作母体のパラマウントからの移行を表明している
アニメーション作品“Heavy Metal”の計画に関して、監督
自身による進行状況の報告が行われた。
 それによると、まずアンソロジーの各篇の監督にはゴア・
ヴァビンスキー、ザック・スナイダーが参加しているとのこ
とだ。また内容的には、「今まで誰も考えなかったようなも
のを用意している。それは『24』のような展開になるもの
で、その内の1本をスナイダーが撮り、ヴァビンスキーにも
気に入ったものがある」とのことだ。さらに監督自身も1本
か2本撮る余裕はあるとしており、全体で8本か9本を作る
資金は用意しているとのことだ。
 「『24』のような展開」というのがどのようなものか判
らないが、テレビの印象からすると、キャラクターや物語は
連続しているものの、それぞれの回で異なる監督が別々の展
開を描くということになりそう。それがうまくまとまるかど
うかは、監督の間で相当の連携と信頼が必要になりそうだ。
うまく行くことを祈りたい。
 ただし、以前の報道でソニーに持っていくとした製作母体
はまだ決定していないようで、「何処でもいいからやらせて
欲しい」というようなニュアンスの発言もあった。この年末
の経済はどの会社も厳しい状況になっていると思われるが、
『ベンジャミン・バトン』の評価も高くなっているし、なん
とか実現してほしいものだ。
 なおフィンチャーは、原作となる雑誌及び1981年の映画化
については、「『ブレードランナー』も『エイリアン』も、
Heavy Metal抜きには誕生しなかった。それに世界中の何処
のCGスタジオに行ってもこの雑誌が必ず目に留まる。その
影響力は計り知れないものだ」として作品の価値をアピール
していたようだ。
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 新規の情報で、アメリカのSF作家フリッツ・ライバーが
1943年雑誌発表した長編小説“Conjure Wife”の映画化を、
ソニー傘下のユナイテッド・アーチスツ(UA)とフランス
のカナル+の共同で進める計画が発表された。
 原作の物語は、大学教授の主人公が不思議な幸運に恵まれ
ていることに気づき、それが妻の魔力によってなされたもの
であることを知って…というもの。単純には映画化もされた
『奥様は魔女』を連想するお話だが、この原作からは1944年
に“Weird Woman”、1962年にはイギリスで“Night of the
Eagle”(アメリカ題名は“Burn, Witch Burn”)、1980年
に“Witches Brew”の題名での映画化がすでにされていると
のことだ。
 因に、1962年の映画化はSF作家のリチャード・マシスン
とチャールズ・ボーモントが脚色を務めたもので、その未出
版の脚本は2月に発行されるマシスンのトリビュート短編集
“He Is Legend”に収載されるそうだ。
 そして今回の映画化は、その1962年版の権利を獲得した上
記の2社がリメイクを進めるもので、その脚色と監督には、
2003年『ニュースの天才』などのビリー・レイの契約が発表
されている。このレイ監督は、脚本家として2005年の『フラ
イトプラン』や、ワーナー製作“Westworld”のリメイクの
脚本にも起用が発表されており、この他にも、1994年のSF
テレビシリーズ“Earth 2”の全21エピソードの脚本も手掛
けたとのこと。彼のSFセンスに期待したいところだ。
 それから本作の原作本は以前に翻訳されたことはあるが、
現在は絶版のようで、これを機会にその再刊も期待したい。
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 次もUAの情報で、製作者として『魔法にかけられて』な
どを手掛けたバリー・ソネンフェルドが、監督復帰を目指し
て“The How-To Guide for Saving the World”と題された
アクションコメディの計画を進めている。
 この計画は、昨年4月に紹介した『シューテム・アップ』
にアシスタントとして参加していたというベンデイヴィッド
・グラビンスキーの脚本を映画化するもので、そのお話は、
異星人の侵略から地球を守るべく活動してきた秘密の防衛組
織が壊滅し、残された防衛マニュアルがある男の手に渡る。
ところがその男は全くヒーロータイプではなく、しかも彼を
嫌っている女性がそのマニュアルの存在を知ったことから、
否応なしに地球を護らされる羽目に陥る…というもの。
 かなり強烈なお話になりそうだが、ソネンフェルド監督は
元々『メン・イン・ブラック』の監督も手掛けた人だから、
この手の作品はお手のもの、それに設定自体が『MIB』に
共通するところもあり、これは面白くなりそうだ。
 因にソネンフェルドの監督は2006年“RV”以来となるが、
その間はテレビシリーズなどを手掛けていたようで、満を持
しての監督復帰にも期待したいものだ。
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 ということで、今回は情報収集期間がクリスマス+年末と
いうことでもあって目に付く情報が乏しく、ここらで筆を置
くことにしたい。今年も製作情報と映画紹介をがんばります
ので、ご愛読の程よろしくお願いいたします。


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井口健二