※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回もこの話題から。 前回は、脚本家エリック・イェンドルセンの期待を込めた 経過報告を紹介した“Star Trek 11”だったが、今回はその 期待を叩き潰すようなニュースが報道された。その報道によ ると、パラマウント社が近日公開の“Mission: Impossible III”の監督J・J・エイブラムスに、“Star Trek 11”の 製作と監督を任せることにしたということだ。 そしてその計画では、エイブラムスと、“MI3”を手掛け たアレックス・カーツマン、ロベルト・オーチが脚本を担当 し、題名は未定だが、物語はオリジナルシリーズの前日譚、 Starfleet Academyでのジェームズ・T・カーク、Mr.スポッ クの出会いと、彼らの最初の宇宙への旅立ちが描かれるとい うものだ。また、公開は2008年とされていた。 元々、Starfleet Academyの創成期を描くという計画は、 パラマウント社がシェリー・ランシングに率いられていた数 年前から立案されていたものだが、今回はトップがブラッド ・グレイに替わり、さらに“MI3”はグレイが最初にゴーサ インを出した作品だったということで、その公開に合わせ、 同社最大のシリーズも同じ監督に任せるという発表をしたも ののようだ。 ということで、今回の発表は“MI3”の宣伝の一環という 見方もあるようだが、一方、先のイェンドルセンの報告との 関係で言えば、3部作での製作を目指す彼の計画は、そのリ スクを考えると会社側が簡単にはゴーサインを出せない状況 にある訳で、それを牽制する意味も考えられるところだ。 ところがこの報道に対して、トレッキーの間からはブーイ ングの嵐が巻き起こり、これに対してエイブラムスは、急遽 「報道は我々の意向を無視して行われた。記事では製作も担 当するとされているが、自分は監督の依頼を受けただけだ。 そこから噂が広まったようだが、今回の報道では正確なもの は何一つない」という談話を発表する事態になっている。 もちろんこの談話は報道を全面否定している訳ではなく、 逆に計画が進んでいることも伺わせているものだが、トレッ キーの間ではエイブラムスには今一つ信用が置かれていない ようで、“MI3”にはその不安を払拭する出来が期待される ところだ。さて、その出来はどうなのだろうか。 * * 以下は、いつもの製作ニュースを紹介しよう。 まずは、ワーナーとの製作契約では“Superman Returns” なども手掛けているレジェンダリー・ピクチャーズから、イ ギリスの詩人ジョン・ミルトンが1667年に発表したキリスト 教文学の代表作の一つと言われる叙事詩“Paradise Lost” (失楽園)を大作映画として製作する計画が発表された。 神に叛逆して破れた堕天使ルシファー、イヴの誘惑によっ て神に背きエデンの園を追われるアダムなど、神と悪魔、そ して天使たちの姿を活き活きと描いた原作は、ダンテの『神 曲』、ゲーテの『ファウスト』と並び称せられるキリスト教 文学の代表作とされているものだが、他の2作が戦前・戦後 を通じて繰り返し映画化されているのに対し、本作に関して は1917年にサイレントで映画化された“Conscience”という 作品が同叙事詩に基づくと記録されてはいるものの、以後の ハリウッドでの映画化は実現していなかった。 今回、その実現を目指すのはヴィン・ディーゼルの主演で 2003年に公開された“A Man Apart”(ブルドッグ)などの 製作者ヴィンセント・ニューマン。そして計画では、すでに “The Exorcism of Emily Rose”(エミリー・ローズ)のス コット・デリクソン監督が参加して、脚色が進められている ということだ。因にデリクソン監督は、大学では神学を学ん できたということで、悪魔の存在を実証した前作に続く本作 への参加は、最適の人材と言えそうだ。 物語には、ミカエル、ガブリエル、ラファエルらの著名な 天使たちも登場し、神と悪魔との戦いも描かれるということ で、キリスト教徒以外にも楽しめる大型作品が期待される。 また、ミルトンの原作では、“Paradise Regained”(復楽 園)という続編もあるようだ。 なおこの計画は、当初ハイド・パークで立上げられたもの だが、そのトップだったジョン・ジャシニがレジェンダリー に移籍したため、計画も移籍することになった。またレジェ ンダリーでは、“Superman Returns”の他、同じくワーナー 配給の“Lady in the Water”“10,000 B.C.”などの製作も 手掛けているものだ。 * * お次は、2月15日付第105回で紹介した“Resident Evil: Extiction”について、5月にメキシコで撮影開始されるこ とと、その配役が発表された。 この新作で、主人公のアリス役は、第1作から続投のミラ ・ジョヴォヴィッチ。さらに第2作で活躍したジル役のシエ ナ・ギロリー、カルロス役のオデット・フェール、LJ役の マイク・エプス、アイザックス博士役のイアイン・グレンが 揃って再登場する。特に、原作ゲームの主人公ジル役のギロ リーの再演はファンの期待に適うものだ。 そして製作と脚本は、第1作から全作を手掛けるポール・ WS・アンダースン。監督には、前作のアレクサンダー・ウ ィット(前回の情報は誤り)に替って、ベテランのラッセル ・マルケイが起用される。なお、前回の報告ではアンダース ンの去就が明確ではなかったために心配したものだったが、 製作と脚本は前2作と同様に手掛けるということで、シリー ズのコンセプトが変る心配はなさそうだ。 また、以前の報告では、第3作は副題を“Afterlife”と して物語を完結させるとしていたが、今回の物語ではバイオ ハザードを引き起こした悪徳化学企業アンブレラ社との戦い がまだ続いているようだし、さらに第4作の構想も生まれて いるということは、お話はまだまだ終りそうにない。原作の ヴィデオゲームと同様、舞台を広げて何作も作り続けて行く ことになるのだろうか。 因に、前2作の興行収入は、アメリカ国内だけで合計1億 2700万ドルを超えているということで、これなら当面やめる 理由はなさそうだ。製作会社はドイツのコンスタンティン。 配給はソニーで、当初の計画では2007年10月の全米公開の予 定だったが、このペースなら早まる可能性もありそうだ。と 言ってもソニーの公開スケジュールは満杯で、すでに完成し た作品で1年以上待機中の作品もあるようだが… * * 続けてヴィデオゲーム映画化の話題をもう一つ。 ダークワークスという会社が開発し、ユビソフトが2005年 3月に発売したサヴァイヴァルホラーゲーム“Cold Fear” の映画化権を、アヴェイターフィルムスという会社が契約、 劇場向けに製作することが発表された。 この作品、実はゲームとしてはあまり売れたものではなか ったようだが、映画の製作者たちは、そのゲームの醸し出す 恐怖の雰囲気と、物語性に注目したとのこと。その物語は、 トム・ハンセンという名の沿岸警備隊の指揮官を主人公に、 彼が、嵐で荒れ狂うべーリング海を漂流するロシアの捕鯨船 の救助に派遣され、その血塗られたデッキや揺れ動く船内を 戦場に知性を持った敵と戦うというもの。またその戦いでは プレイヤーを圧倒する恐怖が味わえるということだ。さらに 別の紹介では、主人公は自分の娘との信頼回復を模索しなが らエイリアンに占拠された捕鯨船の奪還作戦を進めるのだそ うで、確かにゲームの設定というよりは、映画的な物語かも しれないというところだ。 そして今回の計画は、同じくユビソフトでゲームを発表し ているコーリー・メイとドーマ・ウェンドシュというゲーム 脚本家が仲立ちして契約されたもので、映画化は彼らも製作 に参加して進められることになっている。なお、製作者たち の方針では、これから監督を募り、それが決まった上で、配 給映画会社との交渉を始めるとのことだ。 ヴィデオゲームの映画化は次々に製作されているが、人気 ゲームの映画化が必ずしもヒットには繋がっていないのが実 情で、その意味ではあまりヒットしていないゲームの映画化 は、逆に映画そのもので勝負ができることになるから面白い 試みと言えるかも知れない。まずは、優秀な監督を捜し出す ことがポイントになりそうだ。 * * 新しいアイデアに貪欲なハリウッドは、映画の原作として いろいろなソースをサーチしているようだが、ゲームの次は 何と、大学院に提出された博士論文を原作にしたコメディの 計画が発表されている。 この作品は、“How to Survive a Robot Uprising”と題 されており、カーネギ・メロン大学ロボット工学部のダニエ ル・H・ウィルスンという学生が発表した博士論文を原作に するもの。その内容は、技術管理者である主人公が、ロボッ トの増加に対する警鐘を鳴らし、また、ロボットによる実効 支配を未然に防ぐ方策を研究するというお話のようだ。 そしてこの論文の映画化権は、昨年パラマウントによって 契約され、すでにトーマス・レノンとベン・グラントによる 脚色の概要も完成。さらに今回はこの概要が、元ニューライ ンで『オースティン・パワーズ』などを手掛けた製作者マイ クル・デルッカの手でマイク・マイヤーズに提示され、それ に反応したマイヤーズがアイデアを足して、彼の主演による 映画化が進められることになったものだ。 技術の進歩に対する警鐘では、チャールズ・チャップリン が『モダンタイムス』を発表している他、ジェリー・ルイス にも同趣向の作品があり、ウディ・アレンも初期に『スリー パー』という作品を発表している。つまり、コメディアンは 必ず一度はやりたい題材のようで、今回のマイヤーズがどの ような作品を作り出すかにも興味が湧くところだ。 ただしマイヤーズの次回作では、ロックバンドthe Whoの ドラマー、キース・ムーンの伝記映画に主演する計画が進め られており、また、大ヒットCGアニメーション“Shrek” の第3作への声の出演も予定されていて、今回の計画が進む のは少し先のことのようだ。 * * ディズニー傘下のミラマックスが、独自にCGアニメーシ ョンを製作する計画が発表されている。 この計画は、歌手のエルトン・ジョンが主宰するロケット ・ピクチャーズで進められている“Gnomeo and Juliet”と 題された作品で、題名から想像できるようにシェークスピア の戯曲『ロミオとジュリエット』を基に、怪物ノームの世界 を舞台に描くというお話。当初はディズニーの製作で進めら れ、一度は2008年の公開という予定も発表されていたが、先 日のディズニーによるピクサー買収によって同社の作品数が 倍増し、製作計画から外されてしまった。 ところが、以前にディズニーの海外配給部門ブエナ・ヴィ スタで代表を勤めていたダニエル・バセックという人物が、 新たにミラマックスの代表に就任するに当って、この作品を 同社の計画として取り上げることにし、ミラマックス初のア ニメーションとして進められることになったというものだ。 因にバセックは、ブエナ・ヴィスタにいた当時からロケッ トとの繋がりがあったということで、この計画も熟知してお り、さらにイギリス出身の彼には、『モンティ・パイソン』 風味の漂うこの作品には親近感もあったようだ。そしてこの 計画では、新たに主人公の声をケイト・ウィンスレットが担 当することも発表された。 その他のヴォイスキャストは未発表だが、音楽はジョンと ティム・ライスの『ライオン・キング』のコンビが手掛ける ことも発表されており、音楽性も豊かな作品になりそうだ。 またジョンは、「ミラマックスと組むことに大変興奮してい る。この作品は先鋭的なコンセプトを持っており、ミラマッ クスはこの作品にとって完璧なホームと言える」との歓迎の 談話を発表している。 それにしても、ディズニー傘下の会社が独自のアニメーシ ョンというのも変な感じだが、さらにディズニー社内のアニ メーション製作では必ず1億ドル以上の製作費が掛かるとい う体制が、ミラマックスではそれ以下で済むという話も伝え られており、今後の計画を進める外部の製作者には、多少微 妙なことにもなりそうだ。 * * 続いては続報で、キャスティングの情報を4本まとめて紹 介しておこう。 最初は今年1月15日付第103回と4月1日付第108回でも紹 介した“Ocean's Thirteen”の配役で、さらにアル・パチー ノの出演が追加された。 この配役では、前作までの男性陣12人と、新たに女優エレ ン・バーキンの登場が先に紹介されていたが、それに加えて オスカー受賞者の参加となったものだ。まあ、クルーニーも 今年受賞したところで、相手役にはちょうど良いバランスと いうところかも知れない。なお物語は依然未公表だが、ワー ナーから漏れた情報では、パチーノの役柄はラスヴェガスの 最新式カジノ・ホテルのオーナーだそうで、これはオーシャ ンたちが狙う標的ということになりそうだ。 撮影は7月21日から、ロサンゼルスとラスヴェガスで行わ れることになっている。 お次は、3月1日付第106回で紹介したデイヴィッド・ク ローネンバーグ監督の“Eastern Promises”に、監督の前作 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に主演したヴィゴ・モ ーテンセンの出演が発表されている。 この作品は、前回紹介したようにロンドンの底辺社会を背 景に、若い看護婦がクリスマスイヴに産辱で亡くなったロシ ア人女性の謎を追うものだが、モーテンセンの役どころは、 亡くなった女性がいたロシア人の売春組織に捕えられた男と いうことになっている。撮影開始は秋の予定だが、キャステ ィングが決まり始めるということは、本作が監督の次回作と いうことにもなりそうだ。 3本目も3月1日付第106回で紹介した作品で、ウォルデ ン・メディアが製作するファンタシー“The Water Horse” に、エミリー・ワトスン、ベン・チャップリン、それに昨年 公開のダニー・ボイル監督作品『ミリオンズ』で大金を手に 入れてしまった兄弟の弟を好演していたアレックス・エテル の出演が発表されている。エテルが謎の卵を手に入れて海竜 を育てる少年の役ということだ。撮影は5月初旬にスコット ランドとニュージーランドで開始される。 続報の最後は、これもウォルデン・メディアの製作で、昨 年12月1日付第100回で紹介した“Journey 3-D”の主演にブ レンダン・フレイザーの起用が発表されている。ジュール・ ヴェルヌ原作の『地底旅行』を現代版にして3D映画化する この作品では、フレイザーは10代の息子とともに先人が隠し たメッセージを見つけ出し、未知の世界を探検する地質学者 を演じる。フレイザーは最近では、オスカー作品賞を受賞し た『クラッシュ』などにも出演しているが、ファンには何と 言っても『ハムナプトラ』の怪演が懐かしいもので、VFX 満載の本作でも怪演振りを見せてもらいたいものだ。 * * 以下は、その他の短いニュースを紹介しておこう。 待望久しかったリドリー・スコット監督の大作“American Gangster”の撮影を7月に控えるラッセル・クロウが、そ の前にインディーズ製作のスリラー作品に出演することが発 表された。 この作品は、ロバート・コーマイア原作の“Terderness” という長編小説を、『ハイド・アンド・シーク』のジョン・ ポルソン監督が映画化するもので、内容は粗暴な10代の若者 エリックを巡るドラマ。クロウはこの作品でエリックの過去 と関わる警部の役を演じることになっている。 ハリウッドでも成功を納めたクロウだが、彼自身は出来る だけ出身地オーストラリアの才能とのコラボレーションを希 望しているということで、ポルソン監督も同国の出身者。因 に元俳優だった監督は、1991年製作の日豪間の第2次大戦秘 話“Prisoners of the Sun”(アンポンで何が裁かれたか) で、当時はまだ脇役だったクロウと共演していたそうだ。 * * 北欧出身のポップグループ=アバの往年のヒット曲を使用 して1999年にロンドンで初演され、全世界の累計で16億ドル を稼ぎ出し、現在も5年目に入ったブロードウェイを始め、 世界11都市でロングランが続いているミュージカル“Mamma Mia!”の映画化を、トム・ハンクス主宰のプレイトーンで進 めることが公表された。 この計画は、舞台の製作者ジュディ・クレイマーがハリウ ッド各社から殺到した映画化の申し入れの中から同社を選ん だもので、その決め手は、ミュージカルと同様ギリシャ系の 家族を描いて同社が製作した『マイ・ビッグ・ファット・ウ ェディング』の成功が大きいとされている。 なおクレイマーは、世界中での舞台と同様、映画化の製作 も直接仕切るということだ。脚本も舞台と同じキャサリン・ ジョンスンが執筆中。ユニヴァーサルの資金調達と配給で、 2007年末公開を目指すとしている。 * * ルネー・ゼルウィガーが、7月31日に撮影開始されるパラ マウント製作のホラー作品“Case 39”に主演することが発 表された。 この作品はレイ・ライトの脚本を映画化するもので、内容 は、ソーシャルワーカーの女性が10歳の少女を問題のある両 親の許から救出するが、実は本当の問題は両親ではなかった …というお話。ゼルウィガーはソーシャルワーカーの女性を 演じる。 なお、ゼルウィガーは、1994年の『悪魔のいけにえ4』に 主演したことを公表しているが、本作はそれ以来のホラー作 品への出演になるものだ。因に、彼女は一時パン兄弟による ハリウッドリメイク版“THe Eye”への出演も発表されてい たが、その情報は消えたようだ。また、クリス・ヌーナン監 督でイギリスの絵本作家ベアトリクス・ポッターの生涯を描 く“Miss Potter”の撮影はすでに完了。年内にワインスタ インCo.の配給で公開予定になっている。 * * 『エイリアン』の創案者の一人で、その後も『ブルー・サ ンダー』や『トータル・リコール』などに関ったダン・オバ ノンの脚本、監督による“They Bite”というSFスリラー の計画が発表されている。 実はこの計画、具体的な内容などは全く紹介されていない のだが、オバノンの名前だけで期待が集まっているようだ。 そしてこの計画には、前パラマウントの重役で『ロンゲスト ヤード』や“MI3”も手掛けたブライアン・ウィッテンと、 前ギャガ・アメリカの代表を務めたロブ・ギャラガーが製作 を担当しており、年内に製作が開始されるというものだ。 話は全く判らないが、取り敢えず名前の挙がった顔ぶれだ けで期待が高まるというのも、映画の面白いところと言えそ うだが、オバノンは過去にいろいろトラブルも起しており、 今回はちゃんと最後まで進むかどうか、これからも注意して 見ていきたいところだ。
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