※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はエイプリルフールの話題から。 前回4月1日付の記事で嘘情報を流したつもりはないし、 このページでは極力そういったまやかしの情報は流さないよ うにしているものだが、今回のものはちょっと手が込んでい て面白かったので、あえて紹介することにしよう。 今年12月の公開に向けて製作が進められているリメイク版 “King Kong”の公式サイト(www.kongisking.net)に、続 編“Son of Kong”の製作が開始されたという情報が紹介さ れた。これは、サイト内のニュース欄に4月1日付でVideo Diaryとして掲載されたもので、それを開くと、ピーター・ ジャクスン監督や、主演のナオミ・ワッツ、ジャック・ブラ ックらも登場して、続編に対する意気込みや、すでに一部始 まっている撮影の内容などが映像で紹介されるというもの。 “Son of Kong”と記された続編の撮影台本はもちろん、デ ザイン画や模型も登場するという手の込んだものだ。そして 最後に“King Kong: Into the Wolf's Lair”という撮影台 本の表紙が写って、嘘であることが暗示されるというものだ が、かなりの大作で、監督や出演者もノリノリでこの偽情報 を作ったという感じがした。 “Son of Kong”というのは、言うまでもなく1933年に製 作公開されたオリジナル版の続編だが、70分の小品で大猿が 都会で暴れることもない作品でありながら、ファンにはそこ そこの評価を受けている作品。現時点で、いくらヒットを確 信しているからといって、続編の撮影を開始するはずはない し、ましてや続編を作るにしても、この1933年作をリメイク をするとは考え難いものだが、それでもジャクスンがこの作 品のことも忘れていないよと言っているようで、何となく嬉 しくなるエイプリルフールといった感じだった。 それに、紹介されている特撮用のセットなどは、多分本編 の撮影にも使われている本物のセットなのだろうし、そうい った意味ではかなり貴重な映像も紹介されている感じで、一 見の価値はあるというところだろう。上記のアドレスで無料 で公開されているので、一度覗いてみたらいかがだろうか。 * * それともう一つ、これはエイプリルフールを狙ったもので はないが、2007年から“A New Hope”など“Star Wars”の オリジナル3部作を、3Dで順次再公開するという情報も登 場した。実はこの情報は、3月半ばに開催されたアメリカ興 行界最大のイヴェントShoWestの会場で、ジョージ・ルーカ スが発言したもので、本来は嘘というものではないのだが、 その後にルーカスフィルムの幹部からそのような計画は全く 無いとの否定報道がされたものだ。 その経緯を紹介しておくと、このイヴェントではIn-Three という会社からDimensionalizedという2D映像を3Dに変 換する技術が発表され、その席上で“A New Hope”の巻頭の 6分間の3D版が公開されたということだ。そしてその上映 後にルーカスから上記の発言が飛び出したというのだが…幹 部の発言によると、ルーカスはその数日前に初めて3D版を 見たばかりで、会社として何ら具体的な計画が検討されたこ とはないということだ。 ただし、In-Three社の情報では、現状では長編1本を3D 化するには1年程度の時間が掛かっているが、将来はこれを 20日程度に縮めたいということで、現状でも今から作業に掛 かれば2007年5月の公開には充分に間に合うということのよ うだ。つまり後はルーカスフィルムの意向次第ということに なる訳で、出来るものなら実現してもらいたいものだ。 因に、“Star Wars”の3Dに関しては、以前にトレーデ ィングカードのトップス社から、3Diと呼ばれるレンチキ ュラー式の3Dカードが発行されたことがある。これは“A New Hope”と、後に“The Phantom Menace”も登場したが、 特に“A New Hope”に関してはオリジナルの2Dのフィルム から3Dに変換したもので、全63カットのオリジナルのシー ンと、プロモーション用に2カット、それにラルフ・マカリ ーのコンセプトアートも1枚3D化されている。 そしてこのカードは、僕も一応全部揃えてみたが、単なる 奥行き感だけでなく、例えばダースヴェイダーの胸部のよう な丸みのある部分にもそれらしい立体感があり、見事なもの だった。なお、当初は続けて“The Empire Strikes Back” の発行も計画されたが、売れ行きの都合でキャンセルされた ようだ。ただし、“The Empire Strikes Back”と“Return of the Jedi”からも1枚ずつのプロモーションカードが発 行されている。また、“The Phantom Menace”については、 46カットとプロモーションカードが1枚発行された。 このように、ルーカスは以前から3Dには興味を持ってく れており、今回、そのルーカスが認めたということは、この 3D版が相当の出来映えということが言えるもので、期待が 膨らむところだ。 なお、In-Three社のプロモーションでは、他に“The Lord of the Rings”や、1978年製作“Grease”からジョン・ト ラヴォルタのダンスシーンなども紹介されたということで、 この“Grease”の上映後には、Disneylandの3Dアトラクシ ョン“Honey, I Shrunk the Audience”も手掛けているラン ダル・クレイザー監督から、撮影セットに戻ったようだとい う感想も聞かれたそうだ。さらに、In-Three社からは、1年 以内に第1作の公開を目指すという計画も発表されている。 まあ、結果的にルーカスの発言は、現状では嘘ということ になってしまったものだが、ロベルト・ロドリゲス監督の作 品やImaxなどで3Dへの認知も進んでいるところでもあ るし、何とか嘘から出た真になってもらいたいものだ。 * * さて、以下はいつもの製作ニュースを紹介しよう。 最初は、ロブ・マーシャル監督“Memoirs of a Geisha” (SAYURI)では、日本人芸者に扮している中国生まれ の女優コン・リーが、今年中に2本のハリウッド大作に出演 する計画が発表された。 その1本目はマイクル・マン監督による“Miami Vice”。 1984年から89年に放送された人気テレビシリーズを、コリン ・ファレル、ジェイミー・フォックスの共演でリメイクする この作品では、リーはキューバ人と中国人の混血で、多国籍 の犯罪組織の中でその資金を取り仕切る女性=映画の中では 女性の主役を演じるということだ。撮影は5月からマイアミ と南米で行われ、映画の中でリーは英語とスペイン語を話す ことになっている。 因に、オリジナルシリーズでは製作総指揮を担当し、今回 映画版の監督を手掛けるマイクル・マンは、イザベルと名付 けられたリーの役柄について、「心理学的な複雑さと、身体 的な美しさを併せ持ったキャラクターで、リーの持つ雰囲気 そのものだ」と彼女を起用した理由を語っている。 そしてもう1本は、ディノ・デ=ラウレンティス製作によ るハンニバル・レクター・シリーズの最新作、“Behind the Mask”。若き日のレクターの姿を描くこの作品では、リー は孤児院を脱走したレクターがパリで一時身を寄せる叔父の 妻で、レクターに文化的に高度な知識を教育する日本人女性 レディー・ムラサキという役を演じるそうだが、レクターの 人肉食への興味の引鉄となるのだろうか。 なおこの作品は、原作シリーズの作者トマス・ハリス自身 が執筆した脚本をピーター・ウェッバーの監督で映画化する ものだが、リーの起用に関しては、監督自らがエキゾティッ クなニューフェイスを希望して見つけ出したということだ。 撮影は9月にプラハで開始される予定で、現在は、それぞれ 8歳、14歳、20歳のレクターを演じる3人の若手俳優をキャ スティング中となっている。 なおコン・リーは、先日の『SAYURI』の記者会見で も、英語で応対するミシェル・ヨーとは別に、リーだけのた めに中国語の通訳が用意されていたもので、英語が堪能とい う訳ではないようだ。しかし、すでにハリウッドで“Eros” というオムニバス作品の撮影も終えているということで、こ れからますます海外での出演作が増えそうだ。 * * 『アルマゲドン』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』な ど、ディズニー映画の中で大型作品を主に手掛けるジェリー ・ブラッカイマー・フィルムスから、トニー・スコット監督 によるロマンティック・スリラーの計画が発表された。 この作品は“Deja Vu”と題されているもので、『シュレ ック』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』などの脚本を手 掛けたテリー・ロッジオが、ビル・マーシリという脚本家と 共同で執筆したオリジナル脚本を映画化するもの。内容は、 FBIの捜査官がタイムトラヴェルで時間を遡り、難事件を 解決しようとするが、そこで殺人事件の被害者になるはずの 女性に恋をしてしまうというお話。この後がどんな展開にな るかは判らないが、ディズニーでは、昨年7月に契約された この脚本に、数100万ドルの契約金を支払っている。 その脚本の映画化が、トニー・スコットの監督で行われる ことになったものだ。なおスコットは、兄のリドリーと共に スコットフリーと呼ばれるプロダクションを経営し、そこで の作品は基本的にフォックスが優先契約を結んでいるはずだ が、今回の計画に関しては、長年の付き合いのブラッカイマ ーからの依頼が優先してディズニー製作で進められることに なったようだ。 因に、トニー・スコットとブラッカイマーの関係では、ト ム・クルーズが主演した『トップ・ガン』『デイズ・オブ・ サンダー』を始め、『クリムゾン・タイド』『エネミー・オ ブ・アメリカ』など錚々たるヒット作が並ぶが、今回の作品 もそれに続くものとなりそうだ。キャスティングなどは未発 表だが、今年の夏か秋の撮影開始が期待されている。 * * 『スパイダーマン』に続くソニーとマーヴェルコミックス のコラボレーションで、1970年代に刊行されたあまり有名で はないコミックスを、一気に夏休み向けの中心作品として映 画化する計画が発表された。 計画されているのは“Killraven”という題名で、オリジ ナルは1973年に発刊されたAmazing Adventuresの中の1篇と してスタートした作品。元々のアイデアは、H・G・ウェル ズ原作の“The War of the Worlds”の続編を描くというも のだったそうで、1901年に地球を侵略しようとして失敗した 火星人が、2001年に再び地球侵略を開始して今度は征服して しまうのが発端。そして火星人に征服された未来の地球で、 主人公は、最初は征服者である火星人の手で戦士として育て られるが、やがて脱走してフリーマンと名告る抵抗組織のリ ーダーとなって行くというもので、かなりスケールの大きな 物語となるようだ。 そしてソニーからは、この映画化の脚本を“The Kentucky Cycle”という作品でピュリツァー賞受賞の劇作家ロバート ・シェンカンに依頼したことも発表されている。因にソニー では、『スパイダーマン2』のときも、同賞小説部門受賞者 のマイクル・シェイボンに脚本を依頼しているが、それに続 く大物作家への依頼ということになるようだ。 ところでウェルズ原作の“The War of the Worlds”は、 今年映画版のリメイクが公開される予定だが、この再映画化 は、1953年の映画化と同じく舞台を現代にしているというこ とで、ファンが期待したヴィクトリア朝のロンドン・テムズ 河口を火星人のウォーマシンが上陸してくるシーンは描かれ ないようだ。しかし今回の“Killraven”の映画化が実現す れば、もしかするとプロローグでそのシーンが映像化される 可能性もある訳で、ここは是非ともソニー・イメージワーク スの技術で、その映像化にも挑戦してもらいたいものだ。 なお、ソニーとマーヴェルではもう1本、こちらはコミッ クも人気の高い“Ghost Rider”の映画化も、ニコラス・ケ イジ主演、『デアデビル』のマーク・スティーヴン・ジョン スン監督で進めているが、現状はケイジのスケジュールの空 き待ちというところようだ。 * * 後半は短いニュースを紹介しよう。 まずは続報で、前回紹介したM・ナイト・シャマラン監督 の次回作“Lady in the Water”の出演者が発表された。 発表されたのは、ブライス・ダラス・ハワードとポール・ ギアマッティ。この内、ギアマッティはビル管理人の役だと 思われるが、ハワードが彼の管理するアパートのプールに住 む「海の精」なのだろうか。なおハワードは『ヴィレッジ』 に続いてのシャマラン作品への登場となる。 一方、ギアマッティは、『サイドウェイ』での主演が記憶 に新しいところだが、奔放に行動する友人に振り回されて、 いつもおろおろしている主人公の姿は、多分飛んでもない状 況に陥るであろう今回の役柄にはピッタリの感じがする。因 に、ギアマッティの次の出演作は、ラッセル・クロウ、ルネ ・ゼルウィガーとの共演で、ロン・ハワード監督によるボク シング映画“Cinderella Man”だそうで、監督と共演者の違 いはあるが、彼はハワード父子絡みの作品に続けて関わるこ とになるようだ。 * * 『10日間で男を上手にフル方法』など若者向けのロマンテ ィックコメディを手掛けているパラマウント傘下のクリステ ィン・ピータースの製作で、1971年に公開されたホラー映画 “Let's Scare Jessica to Death”(呪われたジェシカ)か らインスパイアされた作品が計画されている。 オリジナルは精神病院を退院したばかりの女性が引越し先 のニューイングランドの農園で恐怖の体験をするというもの だったが、今回計画されている“Let's Scare Jessica”と 題された作品では、コロラドの大学の男子学生が、大学が呪 われているとするガールフレンドのために行動を起こすとい うお話。どこがインスパイアされたのか良く判らないが、こ の脚本をベネット・イェーリンとジェームズ・ジョンストン が担当することも発表されている。 因に、脚本担当のイェーリンは、1994年の『ジム・キャリ ーはMr.ダマー』が代表作のようだ。 * * 2004年8月15日付の第69回でも紹介したドリームワークス とパラマウントの共同製作によるマテル社の玩具からインス パイアされた作品“The Transformers”の実写映画化で、 監督を『アルマゲドン』『バッド・ボーイズ』のマイクル・ ベイが担当することが発表された。 この計画については、以前にも紹介したように錚々たる顔 ぶれの製作陣が名前を並べているものだが、その中心にいる のはスティーヴン・スピルバーグ。そして今回は、ジョン・ ロジャースのオリジナル脚本から、アレックス・カーツマン とロベルト・オーチが執筆した脚本に、スピルバーグのOK が出て、ベイへの招請が行われたようだ。 一方、ベイはドリームワークス製作で今夏公開のアクショ ン大作“The Island”(2004年2月15日付第57回参照)を製 作中にこの脚本を渡され、即座に参加を決めたと伝えられて いる。なお“The Island”は、以前紹介したようにドリーム ワークスとパラマウントとの争奪戦が展開されたものだが、 今回は共同製作の作品に参加することになったようだ。 以前の紹介では、錚々たる製作陣に船頭多くしてというよ うなことを書いたが、自ら“The Amityville Horror”のリ メイク版などの製作も手掛けるベイなら、何とか取り仕切っ てくれそうな感じだ。 * * 1951年ジョージ・パル製作によるパラマウント映画“When Worlds Collide”(地球最後の日)を、『ヴァン・ヘルシ ング』のスティーヴン・ソマーズ脚本監督でリメイクする計 画が発表された。 このオリジナルは、1998年に公開された『ディープ・イン パクト』の原作としても記録されている作品だが、元々は、 社会風刺作家としても知られるアメリカの作家フィリップ・ ワイリーが1933年にエドウィン・パーマーと共著で発表した SF小説に基づくもので、放浪惑星の接近という史上最大の 災厄を前にした人類のさまざまな行動が描かれている。 そしてパル版の映画化では、最後に人類の生き残りが宇宙 に飛び出し、新世界の創造を目指すという壮大な展開となっ ているものだ。しかし1998年作では、そのような展開とはな っていなかった。 そこで今回発表されたソマーズの計画では、わざわざリメ イクと名告っているもので、これは間違いなくパル版のリメ イクを目指してもらいたいものだ。なお、原作者のワイリー は、1934年に“After Worlds Collide”という続編も発表し ており、リメイクにはそちらも考慮してもらいたいものだ。 なおソマーズ自身の製作会社ソマーズCo.は、依然ユニヴ ァーサルに本拠を置いており、ここでは“Flash Gordon”の リメイクの他、最近トップカウ・コミックスの“Proximity Effect”という女性主人公のアクション作品の映画化権も契 約している。しかしこれらの作品では、ソマーズは監督はせ ずに、製作か、製作と脚本のみ担当する計画のようだ。 * * 製作でもめた『エクソシスト』前日譚で、ポール・シュレ イダー版のアメリカ公開が決定した。この経緯に関しては、 昨年4月15日付の第61回で紹介したが、先に公開されたレニ ー・ハーリン版“Exorcist: The Beginning”の前に完成さ れていたシュレーダー版を、5月20日に全米公開することに なったものだ。ただし問題は公開題名で、これはハーリン版 と同じにすることは許されない。そこで、実は先に公開され たオランダでは“Paul Schrader's The Exorcist: Original Prequel”という題名も使われたようだが、アメリカでの公 開題名は、“Dominion: A Prequel to the Exorcist”とな るようだ。 * * 昨年6月15日付の第65回でも紹介したハナ=バーベラのテ レビアニメーションシリーズ“The Jetsons”の実写映画化 で、計画が継続中であることが報告された。すでにサム・ハ ーパーの脚本も完成し、アダム・シャンクマンの監督も決定 している状態だが、製作配給を手掛けるワーナーでは、主人 公のジョージ・ジェットソン役にスティーヴ・マーティンを 希望して交渉を続けているようだ。また製作は実写とCGI の合成で行われるということで、オリジナルには傑作な愛犬 が登場するが、ワーナーでは『スクービー・ドゥー』で完成 させた技術を応用することになるようだ。それなら逆にロボ ットは、着ぐるみでやってもらいたいものだ。 * * 最後に、ファンには嬉しい情報で、来年5月26日の公開が 予定されている“X-Men 3”に、ヒュー・ジャックマン、ハ ル・ベリー、イアン・マッケラン、パトリック・スチュアー トに続いて、フェムケ・ヤンセンが契約したことが発表され た。ヤンセンは、前2作ではジーン・グレイという役で登場 しているが、今回はフェニックスという名前になるようだ。 その理由は…ファンの方ならお判りだろう。
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