夢三昧
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2004年04月24日(土) 太鼓たたいて笛ふいて

こまつ座 第七十二回公演 紀伊國屋サザンシアター 13:30開演 5列

◎ひと
林芙美子(大竹しのぶ) 林キク(梅沢昌代) 島崎こま子(神野三鈴)
加賀四郎(松本きょうじ) 土沢時男(阿南健治) 三木孝(木場勝己)
ピアニスト(朴勝哲)

◎とき
昭和十(1935)年秋から、昭和二十六(1951)年夏までの十六年間

◎ところ
東京新宿下落合の林芙美子の借邸および自邸、JOAKのスタジオ、信州志賀高原の村役場宿直室など

◎スタッフ
作(井上ひさし) 演出(栗山民也) 音楽(宇野誠一郎) 美術(石井強司) 他


和物、時代物、戦争がらみとなると、地味で質素で暗い舞台を想像しがちですが。
とんでもありません!
どちらかといえば「陽」であり、なんとも「お洒落」というか「粋」というか、、、とってもセンスの良い素敵な舞台でした☆

林芙美子さんのことを、みなさんはどれくらいご存知でしょうか。

昨年、『人間合格』での太宰を観て、井上ひさしさんの世間との視点の違いに驚かされました。
ヘタすると太宰が小説家であったことさえ忘れてしまうくらいに(そんなことは誰でも知っていますから!)小説のことやスキャンダラスな話題にはほとんど触れずに、太宰の平常を、半生を、熱く、優しく、愛情深く表現して下さいました。

林芙美子さんの場合も、同じです。
余計なことは、すっ飛ばしです。話題にもなりません(笑)
たとえば最後のご主人は、「とき」からしても「ところ」からしても存在していなかったはずがありませんが、名前さえ出てきませんでした(聴き逃しただけかもしれませんが)。
そんなところが凄く好きです。ただの伝記では無いところが。
ありきたりでは無い部分や、登場人物の選び方に、にくいほどのセンスを感じました☆

思えば『天保十二年のシェイクスピア』も『不忠臣蔵』も大好きでした。
わたしは井上戯曲の魅力に、かなりゆっくりですが、間違いなく引き寄せられているみたいです。
ちなみに、こまつ座次回作の『父と暮らせば』は残念ながら日程的に無理ですが、その次の『花よりタンゴ』は既に観る気マンマンです(笑)


パンフレットの、井上ひさしさんの前口上の中より。
キャストのみなさんへのひとことがあまりに気に入りましたので、ご紹介致します。

優しくて面白くてしなやかで何が何やら分からないくらい変幻自在な大竹しのぶさん

天使に見え悪魔にも見える広い間口の木場勝己さん

したたかで可愛く油断大敵で純真な梅沢昌代さん

鈍いようでいて実は鋭い松本きょうじさん

体の中にお日さまを飼っているような阿南健治さん

生の哀しみをまっすぐにあらわす神野三鈴さん

こういう豊かな才能の持主たちがどっと雪崩込んできてくださいました・・・・・



読んだとき、涙が出るくらい素敵なコメントたちだと思いました。
特に、阿南さんについてはわたしにもとっても理解しやすいコメントで、役者じゃなくてもこんなふうに言ってもらえる人間になりたいものだと思いましたが、とりあえず今のところはあまりにほど遠い・・・ですね(苦笑)。

そんな愛すべきキャストのみなさんは、終始その豊かな才能を惜しみなく発揮されまくりでした。
一幕は、みなさんがコメディセンス炸裂で爆笑の連続でしたが、二幕は最初から最後まで涙が止まりませんでした(後半は泣き笑いになりましたが)。

一番印象に残っているのは母親役の梅沢昌代さんです。
あまりに元気で賢くて朗らかでちゃっかりしていて憎ったらしいおばあちゃんでしたが、可愛くて可愛くてたまりませんでした。
大竹さんも声にとても特徴がありますが、梅沢さんも特徴のあるパワフルな高い声で(というかこのかたは色んな声が自在に出せるのだと思いますが)、訛りもとっても上手かったのですが、どんどん引き込まれてしまうその口調には、なんとも不思議な魅力がいっぱい・・・でした。
阿南さん、松本さんと3人で唄って踊る?「行商隊の歌」でのハッスルぶりも、ぶっ倒れるんじゃないかと思うほど凄かったです(笑)

ピアノは、客席センター最前列の目の前に、客席と同じ床に置かれていました。
朴さんのピアノも、とっても素敵でした。
楽譜が置かれていなかったのですが、全曲、暗譜して弾かれていました!
ほぼミュージカルですので、ほとんど弾きっぱなしです。
途中、大竹さんに扇子で頭をパシッと殴られる場面があるのですが、わたしのお隣のおじさまは思わず「イテッ!」と声に出しておっしゃいました(笑)

セットはとてもシンプルでした。
特にわたしがすっかり気に入ってしまったのは、幕です。
絣のような生地で、大きいタペストリーのようでもあり、布製のブラインドのようでもある、舞台の端から端まですっぽり隠れてしまわない正方形?の幕が、セット換えの時などに降りてきたのですが、これがなんとも好きでした。

最後に。
客席当日券座席まで満員。平均年齢40代後半〜50代くらいか。男女比4:6くらい。
こまつ座って凄いですね・・・・・・・・・。


夢路 |MAIL