狛の日記...狛。

 

 

見送り。 - 2006年06月13日(火)


廊下の広い陽だまりのスペースで、じっと下の方を覗く患者の姿を見て、
何気なく声をかけただけだったのに。

応えとして返ってきた言葉が、少し衝撃的だった。




女房をね、見送ってるんですよ。




それは本当に衝撃でしかなくて。

一緒になって見下ろした分厚いガラス窓の遥か下の方を、
白い服を着た女性が歩いていた。

そうやって、高いところから奥様の後ろ姿を探す姿は、本当に切実で。
時折振り返って手を振る相手に、幸せそうに手を振り返す横顔が印象的だった。
わあ、と揺れる気持ちに思わず笑みが浮かんだ。

嬉しくなって、便乗して手を振ってみてから、
は、と気付いたように慌ててお辞儀をする自分に、
少しだけ笑った顔は穏やかで。

ゆっくりとした足取りの奥様が駅のホームに隠れて見えなくなっても、
姿の確認できない電車が走り去るまで黙って見つめる眼差しは、酷く優しかった。


入院なんていう非日常の出来事に、
動揺し、狼狽えているのは本人だけじゃなくて家族だって同じこと。

だけど病院の中では、家族があまりにも弱くて、驚かされる。

もっと強くて良いのに、と想う。
もっとはっきり言ってくれて良いのに、と想う。

だって大事な家族じゃない、と、そんなことばかり想う。



...



 

 

 

 

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