せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEX|past|will
2009年11月19日(木) |
講演会『Gay Spirits』とワールドプレミア |
11月19日(木) 東工大での講演会「多言語・多文化とともに生きる(9)講演会『Gay Spirits』」、本番の日。 講演会で本番というのもおかしいが、芝居仕立てなので気分は「初日」だ。 今日は朝から冷たい雨。 構成というか構造をどうしたものか、ずっと悩んでいて、昼前にようやく思いつき、これで行こうと決める。 話の中身は、僕のライフヒストリーがメインなので、何より構造、設定が大事。 以前の谷岡さんとの打ち合わせでは、関根が来れなくなったかわりに急遽代理でやってきた誰かが、関根についてあることないこと話すというもの。 この線に沿って、「じゃあ、誰が来るか」ということをずっと考えていた。実は関根は双子でその一方の方の弟、または妹などなど。 ただ、他人が語るライフヒストリーというのは、ただの伝言でないかぎり、その人が僕をどう思うかということを設定しなくてはならず、そのことで苦労する。 新しい設定は、あくまでも僕自身だ。名前は最後まで名乗らない予定だけれども。 劇中(講演中)に登場するエピソードとセリフ(!)の整理をする。 夕方、大岡山駅の改札で谷岡さんと待ち合わせ。 歩きながら、設定を変更したことをまずは伝える。 その後、書類を提出に学科の準備室へ寄り、会場のホールとなりのカフェへ。 どんなふうに変わったかを説明させてもらう。 場面は、オーディション会場。僕のイメージでは「劇場」なのだけれど、会場のホールはフラットな部屋なので、まずは普通の部屋でも可ということに。 「Gay Spirits」という新作舞台のためのオーディション、ゲイの息子を持った母親役のオーディションに女装して、女優のふりをしてやってきたのが僕という設定。 ダスティン・ホフマンが映画「トッツィー」でやってたようなこと。 演出家を前に、課題になっているチェーホフの「かもめ」のセリフを語る、最終審査の場面。 ダスティン・ホフマンはまんまと成功するんだけども、僕は、男だということがばれてしまう。いろいろ言い訳をするんだけどダメで、演出家たちは出て行ってしまう。 と、一人演出助手の若い男の子が残っているので、彼を相手に話し始める。 というもの。 谷岡さんには、視線を決めたいのとタイムキープをお願いしたいので、客席のセンターに座ってもらえるようお願いする。 で、会場に移動。とてもきれいなホール。全然、劇場ではないのだけれど、やっぱりここは劇場だという設定にしてしまった方が、おもしろそうだと決めた。 着替えてメークをして、お客様に御挨拶。 いっこうさん、ミゾさん、黒岩くん、えりさん、もっちゃん、フライングステージのお客様方など、雨の中、ほんとうにありがたい。 で、開演。 どうなるかわからないけど、まずはやってみる。 舞台に飛び出していくのと同じ気持ちで、控え室からホールへ出て行った。 そして、60分。 大岡山のホールは、いつの間にか日生劇場の舞台になり(笑)、僕は、客席の暗がりにいる若者とずっと話をしていた。 ふしぎな時間。そして、話しているのは自分の人生といういつもの講演と同じなはずなのに、全然違う、気持ちでいることがとても不思議だった。 谷岡さんとの打ち合わせでは、最初と最後が「かもめ」のセリフですと言ったはずが、最後にまたニーナになるだけの度胸がなく(笑)、ややフェードアウト気味に退場して、終わった。 拍手をいただいて、また出て行って御挨拶。 やあ、終わった、終わった。僕は何をやったんだろう? その後、谷岡さんと溝口さん、僕にこの企画をすすめてくれた二人と一緒に座談会。 企画のなれそめ、できたこと、できなかったこと、やりたかったことなどなどを話す。 お客様からの質問で、男役と女役を演じるときの違いについてというのに答えて、少し実演してみる。 あくまでも「僕はこうです」と言いながら。 女の人は、歩くときの左右の足の動線がほぼ一直線だけれども(モデルさんは足の前に足を出す歩き方)、男の人は、右足と左足がそれぞれ前に出て二本の線になるということ。そして、女役は、胸(デコルテ)を気持ち上げるような意識でいること、男役でそれをやると宝塚の男役になってしまうので、僕は男の時は気持ち肩を少し前に入れるような気持ちでいること、などを話した。 その後、近くの居酒屋で打ち上げ。楽しく飲み、しゃべり、いい時間をすごした。 ごちそうさまでした。 次はいつになるかわからないのだけれど、おもしろい一人芝居になりそうな作品が生まれたんじゃないかと思う。 二度目は新鮮さがなくなるねえという意見に、誰かが、「落語みたいにやればいい」と言った。一字一句が同じでなくても、落語のように語っていくと思えば、ずいぶんいろいろなことができるんじゃないか。 何より、女装してオーディションにやってきて、帰りがたくてぐずぐずしている俳優というのは、なんともうすら哀しくもおかしい。 演出助手の彼との話の内容も、彼が何を言うかということを変えていけば、いろんな方向へひろがっていくだろう。 「講演」が「公演」になるといいなと思う。 誰かが言ってくれた「ワールドプレミア(世界初演)」に立ち会ってくれたみなさんに感謝だ。 ありがとうございました。
|