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2006年10月13日(金) 荻窪巡礼譚


近頃、週2、3回、会社の昼休みに古本屋に行きます。
やはり社会人になっても、古本の匂いや「馬娘婚姻譚」とか「江戸時代の呪詛」とかそーいうタイトルにドキドキする自分を否定できないわけです。ワオ!悪趣味!

そして今日はアンドリュー・ワイエスの図録を発見。1995年に日本でやった企画展の図録なのに、150点近い名作ぞろいの充実ぶりで、全ページカラーで全作品に作者自身の解説付き。かなりゴージャス。
値段がついてなかったのでおばちゃんに聞いたら「入ってきたばかりだからねー、1000円でいいや」とのこと。古本でも2000円はするんじゃないかなーと思っていたのでお買い得でした。

アンドリュー・ワイエス、このひとの描く、丘、木々、塗装の剥げた壁、枯れ草、雪の吹きだまりなんかをぼんやり眺めていると、興奮するのか落ち着くのか、よくわからないけど心が乱されます。ペンシルバニアにもメイン州にも行ったことないけど(モノポリーで土地買った程度だぜ)、懐かしい気すらしてくる。一度にあまりたくさん見ると感傷に浸りすぎて涙腺が緩んでしまうようだ。恐るべしロマン。
自分が一番好きなのは、「春」という題の、寒々とした丘の雪の吹きだまりに全裸の爺さんが埋まってる絵です。リアリズムが売りな画家にしてはめずらしくシュールな作品。青白い爺さんの痩せた脛なんかがむき出しでどちらかというと気持ち悪い絵なんですけど、全体の空気が透き通ってて、孤高の美しさがたまらない…!今日買った図録にも載ってて嬉しかった!

作品解説、画家自身の言葉ははじめて読みましたけど予想以上におもしろかったです。自分の作品の相当の愛情と自信を持っているのがにじみ出ていて、文体がかなり詩的。派手なベッドカバーに寝てる長身の黒人の爺さんを、幼いときにもらったクリスマスプレゼントに例えるなんてのは常人にできる技じゃあないよ…。やはり感性の成せる技か?

しかし、いくら多作な画家とはいえ、日本人の個人蔵多すぎる。。。
バブルか?これがバブルなのか…?


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