TOHGA嬢の生活



胸の煙

2003年09月14日(日)

 ごく偶に、煙草を吸いたくなる。

 と言っても、私は喫煙者ではない。
 生まれてこの方、吸った煙草は片手でも余る程の本数だ。

 煙草を吸っている人を、カッコイイとも思えない。
 寧ろ、邪魔に思う事が多い。

 二十歳も過ぎて、煙草に対する好奇心も何もないだろう。

 では何故、煙草を吸いたいと思うのか。

 煙に惹かれているからだ。


   煙草の煙は、外界と自分を隔てる、薄いシールド。

   なんびとも、その煙を越えて私に近づく事は許さない。


 どうやら私は、煙草の煙を万能蚊取り線香か何かと、取り違えているのかも知れない。

 また、煙が出ればなんでも良いのか。という疑問も、当然出てくる。

 煙があるだけで良いのなら、別に煙草ではなく、私のお気に入りのセージのお香でも良いではないか。

 しかし、お香では物足りない。

 お香の煙では私との関係性が薄いから。

 イカやタコの墨の様に、自分から吐き出すモノのほうが、意味合いが明確で、効果もある気がするのだろう。


   煙に私の息が交じり、息には私の意思が交じっている。


 別に、口から視覚的な気体が出れば、私の目的は遂げられる。

 ただ今は、煙草しか思い当たらないだけ。


 ある日、私は煙草をひと箱買った。

 煙草の匂いがあんまり好きじゃないから、「フルーティ・メンソール」なんて書いてあるヤツ。

 封を切って、フタを開ける。

「フルーティ・メンソール」とやらの良い香りと、やっぱり嫌いな煙草の苦い匂い。
 両者は仲が悪いらしく、手も繋がず、どちらも独立したまま私の鼻腔を撫でていった。

 火のつけ方が下手なのか、そもそも煙が少ないタイプのモノを買ってしまったのか。

 想像以上に煙が出ない。

 喉がピリリとするだけで、匂いも味も、はっきりしない。

 ただひとつ。

 一番最初に吸い込んだ時の、僅かな眩暈だけが素敵だった。

 でも、それだけ。

 半分も吸わず、勝手に煙草が灰になって行く様をただ眺めた。

 たった一本で、部屋が臭くなった。

 勿論、フルーティ・メントールの香りは何処にも残っていない。



 今後暫くは、煙草を吸おうとはしないだろう。

 ケースの残り19本は、友人にあげる事にした。

 < あの時、ああしていれば…  …見る?  この時は知る術もなかった… >


TOHGA [はい、もしもし?] ここで逢ったが
人目!!