霞的迷想



平行世界

2002年05月16日(木)

 多重世界とか可能世界とかいう概念を絡ませた話が結構好きだ。RPG何かが好きだってのも、結局のところ、PCの行動や選択で結末が変わる、可能世界の具現とでもいう現象があるから。「もしここで違う選択をしたらこの先はどうなるんだろう?」が実際に確かめられて、一つのストーリーを二倍にも三倍にも、それ以上に楽しめてしまう。だから、私はマルチエンディングのゲームの方が好きだ。
 「SO WHAT?」とか「さよりなパラレル」とか「ふたりのかつみ」とか、ゲームじゃなくても可能世界が絡んだ漫画や小説だって勿論好きだし、その絡みで、タイムトラベルものにもかなり心をひかれる。……なんてことは、「夢幻戦域」とか「永遠の風景」(どちらも多重世界が大きく関わる話だし)を見れば一目瞭然だし、はたまた、香月亭の「ORIGINALBOOK」とか、分岐小説とかを見ても如実にその傾向が現れているんだけど。

 私はかなりの「物語中毒者」なので、何かネタを考えたとき、そのバリエーションがある程度まとまってしまうと、それを捨て去るのが惜しくなってしまう。今のところまだ、オリジナルで分岐小説というのはやったことがないけど、やる可能性は決してゼロにはならない、だろう。とはいっても、そうならないために、多重世界という設定を利用しているところもあるので、やるとしても精々企画でやってみるってあたりが一番あり得そうな話。

 「分岐小説にならないため」に利用している多重世界という設定。だけど、全く別の話として知らん顔することもできるのに? わざわざ絡み合う設定を付け加えるよりも、ただの独立した話にしてしまった方が、遙かに楽なようにも思える。
 それができないのは、多重世界が(自分に対して)一体どこに位置づけられているのかということで、いってみれば、一人の作家が描いた種々の小説は、その作者のインナースペースをベースにした多重世界と捉えることもできる。私の場合はそれがとても極端で、「夢幻戦域」を読み返している最中に「MAX」の設定に気がついたり、「MAX」を書いている最中に「永遠の風景」の続きが見えてきたり、まぁ、思考回路に落ち着きがないと言ってしまえばそれまでなのだけれど、それぞれの話だけの囲いを組み立てていくのが非常に難儀な状態だ。何しろ、プロットだけを考えた話も含めれば、数十ものエピソードが頭の中(と、ネタ帳の中)にストックされている。基本的には現在進行形で出している作品に意識を傾けているけど、ふとした弾みに浮かんできた言葉から、連鎖反応で全く違う話や、或いは今までスポットを当てていなかった人間のエピソードを思い浮かべてしまうことも間々あって、それ程切り替えの早いほうでもないので、結局そういったいろいろな想像が「全体の流れ」とでもしなければまとめようもないものになってしまうのだ。

 Aの話で過去にあった事件は、Bの話のこのことに関連している。
 Cのこの場面でこの人物が言っているのはAの登場人物の受け売り。

 ということにしてしまえば、Aの話の過去に何があったのか、新たにややこしく考える必要はとりあえずなくなる(プロットまでならあるから)し、Cで登場人物に影響を与えた人間を、新たにこしらえる(と、当然その人物に関わるエピソードまであれこれ考え始めてしまうので)必要もなくなる。思いつく話の全てが現代日本を舞台にした話ではないから、それが全てつながるためには、多重世界という構造は必要不可欠で、そうするとその世界間を行き来できる人間が必要で、そうすると、遙か昔に書いた話の神様達を改めて活躍させることができる場を作れる。

(―――「神様達」といえば、具体的には何を司る神なのか、話には直接出てこないが、日常生活を考えてこれを司る神がいないのはおかしいはず、じゃあ作ろう。これだけいると派閥がありそうで、そうすると、対等なはずのこの陣営に神様が少ない……といった調子でどんどん人物を作っていくので、増やさなくていいところでは極力人物を押さえなければ、それこそ、お話がいつまでたっても「お話にならない」という間抜けな事態に直面する。イレギュラーで作ったキャラクターを別の話ではレギュラーのキャラにしてしまえば、少なくとも脳内人口にはさほど変化がなくなる。そのスペース分だけ、作品舞台について考えるゆとりも増えるというものだ。)

 要するに、私の頭の中が既に平行世界を漂っているようなものなのだから、その中からわき出てくるものの設定に多重世界が含まれるのはごく当然、というお話。

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