霞的迷想



空の器

2002年02月14日(木)

 「空の器」は壊れやすいという。
 「空の器」は空であるが故に陽でもなく陰でもなく、善でもなければ悪でもない。「空の器」は空であるが故にあらゆる力を収めることができるが、壊れやすいが故に依り代としては相応しくない。何故なら「空の器」の自我は、身の内に降りたモノの力に食いつぶされてしまうからである。

 「龍の器」は龍脈の氣を受け世界を導く定めを持つ者。荒々しき龍の力を受けるためにその器は頑強で、しなやかであり、龍の氣を受ける前から壊しがたいものである。
 「空の器」は龍脈の氣を受けるには足らず、その力を注ぐとき器は破裂し、大地と大気を破壊する。身に過ぎる力を注がれた場合も同様である。

 しかしながら、「空の器」は、己を鍛えることによって、法具に頼らずしてあらゆる属性となりうる可能性を秘めている。「空の器」は己を食いつぶされないためにも自らを鍛錬せねばならない。

 広瀬春乃が「双龍舞連戯」を学んできたのも、「空の器」としての素質を両親に案じられたため。「モノ」に依り憑かれやすく体の丈夫ではない彼女には、最も相応しい術であった。しかし彼女はその奥義を究めるより遥か前に、伊達藩を去らねばならなかった……

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