『この世界の片隅に』公開館数わずか63館で、全国映画動員ランキング10位! 広島国際映画祭では、ヒロシマ平和映画賞受賞のん(能年玲奈)さんがアニメの吹き替えながら久しぶりに復帰するというので、気になっていた映画『この世界の片隅に』を観に行ってきました。朝一番の上映だったのですが満席でした。昨日にネットで座席を予約しておいて正解でした。すでに観た人達から賞賛の嵐でしたが、その評判通りの作品でございました。まずは、のんさんの感想からですが、初声優ながら のんさんの演技が実に素晴らしかった。俳優さんがアニメの声を演じることに関して、声だけの演技で感情を表現しないといけないので、俳優さんの中には「この人は話題づくりのために起用したでしょ」的なヘタクソで畑違いな人達も多く、最初にのんさんが主役を演じる時にも話題作りかなぁと思っていたのですが、映画を観てその考えが間違っていたことに気づかされます。のんさんの演技は話題性とかそんなこと抜きに素晴らしかった。のんさんでも『あまちゃん』の天野アキでもなく画面の中で生きているのは北條すずという一人の女性で、北條すずをものの見事に演じきっていました。物語が進むにつれどんどんすずちゃんに感情移入し心が揺り動かされました。『あまちゃん』の天野アキ役もすばらしい演技をしていましたが、前所属事務所の圧力とか、そんな芸能界のしがらみで埋もれさせてはいけない女優さんですよ。映画についてはネタバレになるので多くは書けませんが、戦争や原爆を描いたアニメですが暗い話ではありませんが、戦況の悪化で生活がどんどん苦しくなることや常に死と隣り合わせという現実の重さのなかにありながら、そんな中においても日常の中の些細な幸せにベースを置いた物語が淡々と進み、それが愛おしくてたまらなくなりました。物語は戦時中を描きながらも戦後の価値観から来る昨今の戦争物を描いたテレビや映画にあるステレオタイプな反戦のメッセージとかそういう押し付けがましさが無いのもよいです。イデオロギーを含んだ安っぽいメッセージを盛り込まなくても戦時中の淡々とした生活を描くだけでも戦争の愚かさや怖さといったメッセージが心に突き刺さるのです。公開館数わずか63館なのですが、ひとりでも多くの人に観てほしい映画です。心を何度も揺さぶられ生きることへの喜びや思いを次に繋げていくことの大切さを感じ映画館から外へ出ると全てのものが愛おしくなるほどに、きっと心に大きなものを残してくれるから。ちなみに、映画の中で流れる「悲しくてやりきれない」が、トーイくんを亡くした今の私の心境と重なって泣けて泣けてしかったなかったです。