主張:美味しんぼ 独善で風評を助長するな(産経新聞社説 5月14日)放射性物質の健康への影響をめぐって「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の連載漫画「美味(おい)しんぼ」の描写が議論を呼んでいる。 東京電力福島第1原発を訪問後に主人公が鼻血を出す場面や、福島県双葉町前町長が実名で「今の福島に住んではいけない」と発言する姿が描かれている。 福島県民の不安をあおり、風評や偏見を助長するものだ。 福島県は国連科学委員会や医療機関などの専門機関と連携して全県民を対象に健康調査を実施している。これまでに放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はない。 低線量被曝(ひばく)の影響に関しては未解明な部分もあるが、被曝線量の高い放射線技師や宇宙飛行士でも、短期間で健康への顕著な影響が出るわけではない。 ところが、「美味しんぼ」では震災がれきを受け入れた大阪市の焼却場近くの住民について、実在する専門家が「放射線だけの影響と断定はできないが、目や呼吸器系の症状が出ている」と語る場面がある。放射線と健康被害の因果関係を示唆する内容だ。福島県はホームページで「作中に登場する特定の個人の見解が、あたかも福島の現状そのものであるかのような印象を与えかねない」と指摘した。「県民や県を応援してくれる多くの人を殊更に深く傷つけ、風評を助長する」と強く抗議したのは当然である。 原作者の雁屋哲氏はブログで「福島を2年かけて取材し、しっかりすくい取った真実をありのままに書くことが、どうして批判されなければならないのか」と反論している。 表現の自由は最大限に尊重すべきだ。健康への不安を訴える住民の声や、放射線との因果関係があると疑う専門家の見解を伝えることも否定しない。 しかし、「美味しんぼ」の描写は科学的根拠と客観性、さらに結果への配慮が決定的に欠ける。県民の絶望感を増幅させただけではないだろうか。 一面では「被災者に寄り添う」ようにも見える独善が、実際には福島の人々を苦しめているケースは少なくない。 特に悪質なのは、反原発・脱原発の主張を浸透させるために住民の不安をあおり、絶望感を増幅させる表現や行動である。社説:美味しんぼ批判 行き過ぎはどちらだ(東京新聞 5月14日)被災者の切実な声が届くのか。それとも風評被害を増すのだろうか。漫画「美味しんぼ」が物議を醸している。何事にせよ、問題提起は必要だ。だがその表現には、もちろん思いやりも欠かせない。 「美味しんぼ」は一九八三年から週刊漫画誌上で連載されており、昨今のグルメブームの発信源とされている。東日本大震災後は、被災地を取り巻く食の問題などにほぼ的を絞って、問題提起を続けてきた。 前号で、主人公の新聞記者が東京電力福島第一原発を取材直後に鼻血を流す場面が論議を呼んだ。 そして今週号では、福島第一原発のある双葉町の井戸川克隆前町長や関係する学者らが実名で登場し「大阪が受け入れたがれきの焼却場周辺でも眼(め)や呼吸器系の症状がある」「福島にはもう住むべきではない」などと訴えて、騒ぎはさらに広がった。 福島県の佐藤雄平知事は「風評被害を助長するような印象で極めて残念」と強く批判した。 漫画作品だけに、創作部分も多いだろう。表現の隅々にまで、被災者の心と体に寄り添うような細心の注意が必要なのは、言をまたない。その意味で、配慮に欠けた部分もある。 しかし、時間をかけた取材に基づく関係者の疑問や批判、主張まで「通説とは異なるから」と否定して、封じてしまっていいのだろうか。 東電が1号機の格納容器から大量の放射能を含んだ蒸気を大気中に放出するベント作業をした後も、住民にそれを知らせなかった。「そうとは知らず、われわれはその放射線を浴び続けてたんです」と、前町長は作中で訴える。 SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による放射能の拡散情報が、住民に伝えられなかったのも事実である。 またそれよりずっと以前から、原発は絶対安全だと信じ込まされてきたというさらに強い疑念がある。それらが払拭(ふっしょく)できない限り、被災者の心の底の不安はぬぐえまい。素朴な疑問や不安にも、国として東電として、丁寧に答える姿勢が欠かせない。情報隠しの疑念こそ、風評の温床なのである。 問題提起はそれとして、考える材料の提供である。登場人物が事故と被害をどう見ていくのか。作品を通じ、作者は社会に訴えようと試みる。行き過ぎはないか。もちろん、過剰な反応も。行き過ぎはどちらだと書きながらも雁屋氏を応援しているわけですが、> しかし、時間をかけた取材に基づく関係者の疑問や批判、主張まで>「通説とは異なるから」と否定して、封じてしまっていいのだろうか。この社説書いた人はアホなんでしょうか。「通説と異なる」ではなく放射能に関しては蓄積されたデータがあるにも拘らずそのデータを無視してあり得ないことを書いているすなわち明らかなデマを真実と称して書いているから批判されているわけです。この社説の他にも雁屋氏を応援するメディアや政治家や識者などは「分からない」「疑わしい」なんて言葉をよく使っていますが、この人達は分かろうとしてきたのかさえ疑問です。我が国は唯一の被爆国です。そこから放射能や放射線に関して多くの研究者によって研究されてきたわけです。広島・長崎の原爆やチェルノブイリ事故に福島第一原発事故など放射能に関わる不測の事態が起きる度、人々の不安を少しでも解消しよう、対策をどうすればいいかと、多くの研究者や学者達による努力と長年研究に費やされた時間の積み重ねによってここまでは安全・ここからは危険と分かっているのに、「分からない」「疑わしい」とか通説と異なるデマを否定して封じてしまっていいのかって、これまでの積み重ねて得た事実を足蹴にして本当に酷いとしか言わざるを得ません。本来は正しい情報を多くの人に提供して不安を和らげるために必要な人達が事実を無視して不安を煽っている。しかもネットでデマを含めて通説と異なる発言を繰り返したり、分からないとか言っている人達って、普段から反権力志向だったりと思想が偏った人ばかりなんですよね。反権力のために福島を利用しているとしか思えませんよ。社説:【風評との闘い】応援団はずっといる(福島民報 5月14日)東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の被害からの復興を目指す本県への支援が続く。キャロライン・ケネディ駐日米大使は14、15の両日、復興状況視察のため来県する。埼玉県は福島応援キャンペーンを展開する。漫画「美味[おい]しんぼ」による風評被害助長が懸念される中、福島を支える動きは力強さを増している。県民と思いをともにする全国の支援者との一体感を強め、前進していきたい。 ケネディ大使の来県は就任後初となる。福島第一原発を訪れ、楢葉町の沖合に設置されている浮体式洋上風力発電所を見学する。廃炉、再生可能エネルギー産業育成に向けて米国の協力を得る上で、大使の両施設視察は極めて意義がある。国内外で知名度のある大使の本県訪問自体が、福島の安全性発信に大きな力となってくれるはずだ。 埼玉県の応援キャンペーンは、これまでの福島支援の取り組みをさらに拡大する。上田清司知事が音頭を取って福島への旅行を呼び掛け、埼玉県庁職員食堂での福島県産食材メニューの提供、福島産品販売などを行う。「福島県を助けることが埼玉県民の心意気」との上田知事の言葉は、福島県に注がれる温かな視線を実感させてくれる。 一方で、小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」に掲載された漫画「美味しんぼ」の問題は残念であり、腹立たしい。4月28日発売号で主人公らが第一原発を訪れた後に鼻血を出す場面が描かれ、元双葉町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と発言している。原発事故と鼻血にあたかも関係があるかのような印象を与える。双葉町は「大勢いる事実はない」と元町長の言葉を否定、小学館に抗議文を送った。 5月12日発売号では元町長が鼻血の原因を「被ばくしたからですよ」とし、福島大准教授は「除染をしても汚染は取れない」と話している。 個人的見解を取り上げたことで、本県の実情が誤って伝わる恐れが生じている。復興への努力を台無しにしかねない。風評という暗黒の海に投げ出され、光の見える海面近くまで懸命に浮き上がってきたところを金づちでたたかれたようなものだ。12日に県が科学的な根拠を示して反証し、偏らない客観的な事実を基にした表現とするよう強く申し入れたのは当然だ。 そもそも作品の意図が分からない。編集部は議論を深めるためと説明する。県民と支援者の心を傷つけ、復興に使うべき貴重な時間と労力を抗議や反論のために浪費させて何が議論か。「美味しんぼ」問題 県内温泉旅館などで団体旅行キャンセルも(福島14/05/13)(FNNニュース 5月13日)漫画「美味(おい)しんぼ」で、福島第1原発を訪問した主人公が鼻血を出す描写。さらに、「今の福島に住んではいけない」などの表現がされたことに、福島県が抗議した問題の影響が広がっている。こうした描写がされてから、県内の温泉旅館で、キャンセルが発生していることがわかった。観光客は「きのうは、蛇の鼻(本宮市の)。その前は会津の...若松」と話した。全国から観光客が訪れる、福島市の飯坂温泉。観光客は、「全然気にしない」、「(美味しんぼについて、どんなふうに思いました?)漫画までしなくても」、「ひどいと思いました。そんなにね、言わなくてもいいじゃんって思いました」などと話した。「美味しんぼ」の描写を、多くの観光客は気にしていない様子だが、飯坂温泉のある旅館では、数百名の団体客がキャンセルするなど、影響が出ているところもある。旅館関係者によると、美味しんぼの表現を気にした保護者の反対で、県外の学校の団体客数百人が、宿泊をキャンセルしたという。ほかにも、漫画の影響とみられるキャンセルが10件ほど確認されていて、温泉街からは、怒りの声が上がっている。つたや旅館(飯坂温泉)の佐藤 ひとみさんは「今まで、一生懸命頑張ってきたことが、台なしになってしまいかねないので、本当にやめてほしいと思います」と話した。福島を代表する「円盤餃子(ギョーザ)」の店では客足が戻っていて、2014年は、2013年より1割ほど売り上げが増えている。餃子照井飯坂店の佐藤吉則さんは「『美味しんぼ』は、食に関することなので、わたしたちも敏感に対応しないと。飯坂温泉は、観光客相手なので、深刻ですよね。風評被害が広まるのは」と話した。客足を戻したい観光業界に、「美味しんぼ」騒動が突然、降って湧いた。福島では『美味しんぼ』による風評被害の実害が出てきているようで居た堪れない気持ちになります。表現の自由を抜きにしても美味しんぼと小学館の罪は重いのではないでしょうか。