特定秘密保護法案、参院特別委で可決(読売新聞 12月5日)安全保障にかかわる機密情報を漏らした公務員らの罰則を強化する特定秘密保護法案は5日午後、参院国家安全保障特別委員会で採決が行われ、自民、公明両党の与党の賛成多数で可決された。 与党は5日夜に参院本会議を再開して法案を緊急上程し、成立させることを検討している。今日の1コマ 【特定秘密保護法案】 委員長「賛成する者の起立を求めます」 反対する野党議員「頭に血が上り全員立ち上がり委員長に詰め寄る」 委員長「全員起立 ! 本案は可決されました」 反対していた福島瑞穂氏も福山哲郎氏も起立していたので、まさかの全会一致の可決でした。特定秘密の範囲を明確にさせるための修正案も出さず、闇雲に反案を叫ぶだけで同じ質問ばかりで議論もする気がないのなら議論も深まるはずもなく、可決されるのは目に見えて明らかだったわけで、野党のみなさんには今さらグダグダ言われても・・・って感じがしますね。そして、秘密保護法案にジャーナリストが反対するのはまだ分かるにしても、特定秘密を知りうるような立場に無い学者や映画監督や俳優など学術芸術分野の人が反対している理由が分からないんですよね。山本太郎が呼びかけても国会前に10万人も集められないし、バカ騒ぎしているだけじゃこんなもんです。特定秘密 民主政権の秘匿をメディアはどう報じたか(産経新聞 12月5日)特定秘密保護法案に対するメディアの批判・攻撃がすさまじい。法案が衆院を通過した翌日(11月27日)の各紙社説は「民主主義の土台を壊す」(毎日)、「ほとんど情報統制の世界に近い」(東京)などと、イソップ寓話(ぐうわ)の「オオカミ少年」もかくやとばかりに警鐘を乱打していた。 とはいえ、こうした扇情的報道には違和感を禁じ得ない。国民の「知る権利」と民主主義の危機は、実は菅直人政権時に訪れていたと思うからである。 安倍晋三首相は4日の党首討論で、菅政権が隠蔽した尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の中国漁船衝突事件の映像を流した元海上保安官、一色正春氏の最近の言葉をこう紹介していた。 「先般、一色氏がテレビに出て『かつて出すべき情報を勝手に秘密にした。こうして(秘密の指定と解除の)ルールを決めることが大切だ。出すべき映像を出さないと判断できる状況が問題だ』と言っていた」 現在、安倍政権はこの映像について「特段の秘匿の必要性があるとは考えにくい」(菅義偉(すが・よしひで)官房長官)とし、「特定秘密」にも該当しないと答弁している。 海保は映像を即日公開するつもりで準備していた。中国に過剰に配慮した菅政権の恣意(しい)的な横やりがなければ、もともと「秘密」でも何でもなかったのだ。にもかかわらず、当時の仙谷由人官房長官は一色氏を初めから「犯罪者」扱いすらし、こう強調した。 「大阪地検特捜部の(押収資料改竄(かいざん)・犯人隠避)事件に匹敵する由々しい事態だ」「逮捕された人が英雄になる。そんな風潮があっては絶対にいけない」 ちなみに、一色氏は国家公務員法(守秘義務)違反容疑で書類送検されたものの「犯行は悪質ではない」として不起訴処分となり、逮捕はされていない。一連の仙谷氏の発言は権力者による人権侵害に近い。 それに対し、現在、特定秘密保護法案の反対キャンペーンを張るメディアの反応はどうだったか。むしろ菅政権の尻馬に乗り、一色氏の行為をたたいていた。 一色氏は、自身のフェイス・ブック(11月21日付)でこうも指摘している。 「3年前のあの映像を、誰が何のために隠蔽したのか。(ジャーナリストらは)それすら明らかにできてはいないではないか。自分たちの都合の良いときだけ知る権利を振りかざしている姿は滑稽である」 振り返ると、映像流出時の朝日社説(22年11月6日付)はこう書いていた。 「仮に非公開の方針に批判的な捜査機関の何者かが流出させたのだとしたら、政府や国会の意思に反することであり、許されない」 毎日社説(同日付)もこれと同工異曲で、「国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた『倒閣運動』でもある」と決め付けていた。 当時の菅首相は「民主主義とは期限を区切った独裁」を持論とし、喜々として三権分立否定論を語っていた人物である。彼らのルールなき情報隠しは正当化しておいて、今さら「国民の『知る権利』の代理人」(朝日)だと胸を張られると、こっちが赤面してしまう。特定秘密保護法案が意味するもの(読売新聞 12月5日)調査研究本部主任研究員 笹森春樹 特定秘密保護法案が、今国会で成立する見通しになった。 国家安全保障にかかわる秘密の漏えいを防ぐのがこの法案の目的であり、およそ普通の国ならこの種の法律を持っている。 日本は、今でも、日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法があり、これによって6年前、イージス艦の情報を漏えいしたとして海上自衛官が逮捕される事件があった(懲役2年6月、執行猶予4年の判決確定)。今回の特定機密保護法案の対象は、防衛だけでなく、外交、テロ防止、スパイ防止を含む4分野で、機密性の高い特定秘密を保護しようという狙いである。秘密保護法制を国際標準に合わせる 罰則は、最高で懲役10年と、秘密保護法の懲役5年や国家公務員法の同1年(守秘義務違反)より重いが、他の主要国と同程度か、むしろ軽いくらいである(米国は最高死刑)。特定秘密指定の有効期間が原則で最大60年というのは、確かに長いが、それでも米国の75年よりは短い。要するに、特定秘密保護法案というのは、秘密保護法制を国際標準に合わせたものと言ってよい。 ところが、メディア、学者、法曹団体などには、法案に反対する声が総じて根強い。ノーベル賞受賞者の益川敏英、白川英樹両氏らが結成した「秘密保護法案に反対する学者の会」は、「思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせる」という声明を発表し、その中の1人は、同法案をナチスドイツの全権委任法になぞらえている。テレビで「戦争への道を開くものだ」と批判するジャーナリストも少なくない。 懸念を抱く気持ちは分からぬでもないが、反発の言辞はやはり大げさだし、滑稽にすら思う。彼らの多くが指摘するように、また、安倍首相も明言するように、特定秘密保護法案は、今国会ですでに成立を見た国家安全保障会議(日本版NSC)設置法とセットのものだ。米国などから機密情報の提供を受けるために、秘密保護法制を強化するのが真の狙いだろう。手の内がすべて筒抜けだった昔 逆に言うと、日本の秘密保護は、法制の面でも意識の上でも諸外国に比べて弱かった。それは今も昔も変わらない。太平洋戦争勃発の1年前から、日本の外交電報は米国に解読され、日米交渉の日本側の手の内はすべて米側に筒抜けになっていた。駐日大使グルーは、最高機密の御前会議の情報を、樺山愛輔伯爵と見られる情報員から得ていた。 有名なドイツ人スパイのゾルゲは、日本の権力中枢に食い込み、独ソ戦勃発後、日本がソ連に参戦しないという情報を入手し、ソ連に伝えた。これによってソ連は、極東で日本の攻撃を心配することなく、ドイツとの戦争に集中できた。日本で刑死したゾルゲは、今でもロシアの英雄だ。 あるいは、毎日新聞の前身の東京日日新聞は、最高機密の対英米開戦日の情報を事前に入手し、当日の1941年12月8日の朝刊に「東亜撹乱・英米の敵性極まる」「断乎駆逐の一途のみ」とピタリと照準を合わせた紙面を作っている。開戦スクープの情報源は、米内光政・元首相だった。この手の話は枚挙にいとまがない。「戦争の時代に回帰するもの」ではない 要するに、機密情報が漏れやすい点は、言論統制下にあった昔も、憲法で言論の自由が保障された今日も、本質的には変わっていない。同盟国(昔はドイツ、今は米国)から「日本は情報が漏れやすい」とたしなめられている点も同じである。特定秘密保護法案というのは、反対論者の「戦争の時代に回帰するもの」ではなく、当然の安全保障上の備えをしようというものにすぎない。