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2012年10月09日(火) 科学技術立国でありながら科学者や技術者を守らない国と企業

山中教授「まさに日本という国が受賞した賞」(読売新聞 10月8日)

◆ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京都大の山中伸弥教授の会見要旨◆

 何時間か前にスウェーデンから電話で受賞の知らせをもらった。
私とガードン先生の2人の受賞だが、私が受賞できたのは、国の支援のお陰だ。
これは日本という国が受賞した賞と思う。
iPS細胞の基礎となった研究を始めた30歳代半ば、
私は無名の研究者だったが、国からの支援で研究が発展した。
奈良先端科学技術大学院大から京都大に移り、さらに国の研究費をもらった。
それで出来たのがiPS細胞だ。
マウス、人間で成功した後も、国からの支援を5、6年間もらった。
その支援がなければ、今日のストックホルムからの電話はかかってこなかった。

 感想を一言で表現すると、感謝という言葉しかない。
国、京都大のほか、iPS細胞を一緒に作ってくれた高橋和利氏、
若い研究者らが助けてくれた。

 家族にも心から感謝したい。80歳を超えた私の母に報告できたのが、本当に良かった。
義理の父は医師で、私を留学中から支えてくれたが、今年亡くなり、
報告できなかったのが残念だ。
きっと天国で、25年以上前に亡くなった父と一緒に喜んでくれていると思う。

 喜びも大きいが、同時に非常に大きな責任感を感じている。
iPS細胞技術はまだ新しい技術で、医学や創薬で大きな可能性があるが、
まだ医学や新しい薬の開発に役立っていない。

 今後、何日間かで、受賞の意味を国民の皆さんにできるだけ私の言葉で話したい。
来週からは、研究の現場に戻り、論文も早く出さないといけない。
それが、このノーベル賞の意味でもある。
過去の業績というよりは、これからの発展に対する期待の意味も大きい。
それに報いるよう、これからも現役の研究者として研究開発に取り組んでいきたい。

 ガードン先生との同時受賞が、一番うれしいと言っても過言ではない。
ガードン先生はカエルの研究で、大人の細胞が受精卵の状態に
戻るということを核移植技術で証明した。
まさに、私のしている研究を開拓してもらった。
ガードン先生が実験したのは1962年。私はその年の9月に生まれた。
同時に受賞できたのは、研究者の人生として大きい。ガードン先生もまだ現役で活躍している。
iPS細胞が本当の意味で、医学、創薬の応用に実現できる日まで頑張っていきたい。


京大・山中教授「iPS細胞」でノーベル医学生理学賞(スポーツ報知 10月8日)

会見では国への感謝を口にしたが、決して研究資金が潤沢だったわけではない。
iPS細胞そのものが対象ではないが、09年には、科学技術関連事業の予算が
「事業仕分け」され、削減や見直しが相次いだ。
その際、山中教授は批判と不安の気持ちを述べている。
今年3月には、研究資金の“カンパ”を訴え、アピールするため、京都マラソンに自ら出場した。

 現在も年10回ほど渡航し、資金面など環境が整っている米国で研究している。
この日、会見場では野田首相から祝福の電話が入り、
教授は「国を挙げて支援していただいたおかげです」と答えていたが、
胸のうちには複雑な思いがあったのかもしれない。


関連リンク:
山中伸弥教授が鳩山由紀夫に研究費を3分の1に減らされた所為で
自らマラソン出場しカンパを乞う破目に陥っていた事が判明!



山中教授がカンパを募っている「ジャスト・ギビング・ジャパン」です。
京都大学iPS細胞研究基金


山中教授の会見は、聞いているこちらが恐縮してしまうような素晴らしい会見でしたね。

民主党によって研究費をごっそりと削られても、

国への感謝を述べられておりましたが、

今年3月に不足している研究資金のカンパを募るアピールをするため、

京都マラソンに自ら出場させてしまうというほど、

世界的に著名な研究者にこんなことまでさせていたことを恥じないで、

記者が集まる会見中にわざわざ電話して、

詫びの一言もなく偉業を褒めたたえる野田首相はパフォーマンス丸わかりなのですが、

山中教授は人格者ですね。

もし、私が同じ立場だったら、

記者が集まるここぞとばかりに仕分けで削られた研究費のことで嫌味を述べますよ。

> 現在も年10回ほど渡航し、資金面など環境が整っている米国で研究している。

研究するなら、アメリカや韓国など海外のほうがまだ良い環境なのかもしれません。

これは科学技術の研究に留まらず商品開発にも当てはまる話で、

技術者が商品を日々の努力によって研究開発しているにもかかわらず、

日本の企業は経営者を守って、技術者を守ろうとはしません。

好きなことをやっているんだから安い賃金でもいいだろうって感覚だし。

(これは科学技術分野に限らず芸術にも言えたことだけど。)

リストラと称して高給取りの役員だけを残して、

一番重要な技術者を大切にせず切り捨てまくったツケが回って、

日本の家電メーカーが衰退の一途を辿っていると言えます。

韓国のサムソンが業績を上げたのは、

日本のメーカーに勤める技術開発者を

日本以上の高待遇でヘッドハンティングしまくったからで、

高待遇で好きなだけ研究開発できるのなら、

そりゃ優遇されない日本の企業に居るより、

技術開発者はそっちに行くってもんで、

日本のメーカーはヘッドハンティングされても文句は言えないし、

あんたいらないよって切り捨てた人材が海外の企業に再雇用された形なら余計文句は言えず、

要するに技術者や現場に金を回さないし使い捨てを当たり前にしてきた

企業の経営陣がマヌケで、

そのツケが回ってきて今の状況になっているだけの話ですが、

自分達の過ちに気付いてないから暗澹たる気持ちになります。

山中教授のような研究者にしても、

日本の家電メーカーで働く技術開発者にしても

少ない予算の中で研究や開発をしている科学者や技術者を日本に留まらせているのは、

もはや郷土愛に近いものだけなのかもしれませんが、

その気持ちに慢心しあぐらをかき国は削減し企業は搾取。

それが間違っていることを自覚しないと、

優秀な人材や技術が流出するばかりで国力が下がる一方です。










名塚元哉 |←ホームページ