炉心溶融を震災当日予測 応急措置まで半日も(共同通信 3月28日)経済産業省原子力安全・保安院が、震災当日の11日夜、東京電力福島第1原発事故に関して、3時間以内の「炉心溶融」を予測していたことが27日、分かった。また翌12日未明には放射性ヨウ素や高いレベルの放射線を検出、原子炉の圧力を低下させる応急措置をとる方針が決まったが、実現するまでに半日も要した。政府文書や複数の政府当局者の話で判明した。 溶融の前段である「炉心損傷」を示すヨウ素検出で、政府内専門家の間では危機感が高まり、応急措置の即時実施が迫られる局面だった。 しかし菅直人首相は12日早朝、原子力安全委員会の班目春樹委員長と予定通り現地を視察。政府与党内からは、溶融の兆候が表れた非常時の視察敢行で、応急措置の実施を含めた政策決定に遅れが生じたとの見方も出ている。初動判断のミスで事態深刻化を招いた可能性があり、首相と班目氏の責任が問われそうだ。 政府原子力災害対策本部の文書によると、保安院は11日午後10時に「福島第1(原発)2号機の今後のプラント状況の評価結果」を策定。炉内への注水機能停止で50分後に「炉心露出」が起き、12日午前0時50分には炉心溶融である「燃料溶融」に至るとの予測を示し、午前3時20分には放射性物質を含んだ蒸気を排出する応急措置「ベント」を行うとしている。 保安院当局者は「最悪の事態を予測したもの」としている。評価結果は11日午後10時半、首相に説明されていた。 この後、2号機の原子炉圧力容器内の水位が安定したが、12日午前1時前には1号機の原子炉格納容器内の圧力が異常上昇。4時ごろには1号機の中央制御室で毎時150マイクロシーベルトのガンマ線、5時ごろには原発正門付近でヨウ素も検出された。 事態悪化を受け、東電幹部と班目氏らが協議し、1、2号機の炉内圧力を下げるため、ベントの必要性を確認、4時には保安院に実施を相談した。また菅首相は5時44分、原発の半径10キロ圏内からの退避を指示した。 だが東電がベント実施を政府に通報したのは、首相の視察終了後の8時半で、作業着手は9時4分。排出には二つの弁を開く必要があるが、備え付けの空気圧縮ボンベの不調で一つが開かなかった上、代替用の空気圧縮機の調達に約4時間を費やし、排出が行われたのは午後2時半だった。 与党関係者は「首相の視察でベント実施の手続きが遅れた」と言明。政府当局者は「ベントで現場の首相を被ばくさせられない」との判断が働き、現場作業にも影響が出たとの見方を示した。 政府に近い専門家は「時間的ロスが大きい」とし、ベントの遅れが海水注入の遅延も招いたと解説。1号機では排出開始から約1時間後、水素爆発で同機建屋の外壁が吹き飛んだ。首相「原発事故は予断を許さない状況」(読売新聞 3月29日)地震発生の翌12日に福島第一原発を視察したため初動が遅れたと批判されていることについては、「原子力災害特別措置法に基づいて(原子力緊急事態)宣言を出し、原子力災害対策本部を設けた。現地の状況把握をすることは大変重要と考え、視察した」と述べた。「政治的パフォーマンスではないか」と指摘されたことに対しては、「全く違う」として、「私が視察したので(原子炉内の圧力を弁から逃す)ベントが遅延したというのは全く当たっていない」と述べた。自民党の礒崎陽輔氏の質問に答えた。官房長官、首相の原発訪問「情報把握への問題意識あった」(日経新聞 3月28日)枝野幸男官房長官は28日午後の参院予算委員会で、菅直人首相が東日本大震災の発生翌日の 12日午前に福島第1原子力発電所を訪問したことに関して「首相には現場の責任者、担当者と直接コミュニケーションを取らなければならないとの問題意識があった」と述べた。 訪問の理由に関しては「なかなか現地の把握ができない。 (水蒸気を排出する)ベントを早く進めるべきだと伝えても、東電からなかなか答えがこない。 (このままでは)責任を持った対応ができないとの問題意識があった」とも語った。 これに関連し、原子力安全委員会の斑目春樹委員長は28日午後の参院予算委員会で、 海江田万里経済産業相が12日未明の段階から「東電にとにかく早くベントをしろと言い続けていた」と明らかにした。 社民党の福島瑞穂氏への答弁。 平成23年3月12日(土)午前2-内閣官房長官記者会見 http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4477.html4:17 枝野:本日の早朝、日が上がりましたら総理自らヘリコプターにて現地を訪ねるということで、 今最終的な調整を致しております。 6:24 記者:その大気への作業っていうのは何時くらいにやるんでしょうか? 6:28 枝野:えと、これは東京電力が技術的な点を含めて最終的な調整をする話でありますが、 これを行う前にしっかりと国民の皆さんにあらかじめご報告しなければならないということを、 東京電力の方に要請というよりも指示をいたしまして、それでこの時間に経済産業省および官邸でご報告をしましたので、そんなに遠くない時間になると思います。9:36 枝野:総理は専門的素養お持ちです。12:53枝野:(ベントは)発表してからにしてくれと言うことは要請というよりかなり指示に近い形で 東電の方に申しております。菅首相と枝野氏は、ベント作業を速やかに行えと指示していた、視察のせいで作業が遅れたんじゃないと釈明していますが、過去の会見や記事を辿れば嘘だというのが分かります。今の状況を見ると、責任のなすり合いと、あの時こうしていればの「タラレバ話」にしかなりませんが、危機管理の観点からみても、政府としては、いつ放射性物質が放出されるか分からない場所に首相を行かせるわけにはいきませんし、ベントの指示をして放出されている上空を好き好んでヘリで飛ぶわけもなく、東電としても、放射線物質を含んだ蒸気を首相に浴びせるわけにはいかないので、けっきょくのところ、どうしてもヘリ視察が終わるまで作業を待たなければいけません。それに、一国のトップが視察にくるとなれば、勝手に見てろというわけにはいかないので、東電の幹部や技術者らが説明などの対応しなくてはならず、したがって、政府から連絡があって視察を終えるまでの時間によって、作業に遅れが生じたのは明らかです。そもそも、菅首相は3月20日に福島と宮城を訪問すると言っていましたが、政府は、雨に濡れても健康被害はなく大丈夫とアナウンスして、実際に雨に濡れても大丈夫なのですが、そんな自分は福島は雨が降っていて濡れるのが怖いし、被災者から罵声を浴びせられるのも嫌だからという理由で視察を止めたほどのヘタレが、早くベントをやれと命令しておいて防護服なしでヘリで上空飛んだり、 現地に降りて作業服だけで1時間以上滞在できるとも思えません。これらのことを踏まえて、12日深夜の会見で枝野氏が述べたように、ベントを止めさせて行動していたのが本当のところでしょう。また、東電側は一刻を争う緊急自体だったことを一番理解していたはずにも関わらず、首相の視察を断らず受け入れてしまった。この対応はどちらも最悪の決断をしたと思いますが、与野党は一時政治休戦 補正予算でも協力へ(産経新聞 3月11日)政府や自治体の災害支援活動に支障を与えないよう地震発生から72時間(3日間)は現地入りしないことも申し合わせた。地震発生から3日間は作業の邪魔にならないよう現地入りしないことを決めながら、数時間後には、あっさり反故にして、カメラマンを引き連れてパフォーマンスで原発視察へ動いた菅首相が一番悪いと言えます。さらに言えば、視察に行ったことで、考えられるあらゆる事態を想定して、アメリカやフランスの力も借りれるように早くから依頼するなど、事前の根回しも含めて動いているならまだしも、その動きさえなかったどころか、早くからアメリカが冷却材の提供を申し出たのに、それを断ったという報道さえあったのですから、後の対応に視察がまったく活かされていません。原子力には詳しいが臨界を知らなかった菅首相の行動は、心は誰にも見えないけど、下心は丸見え。 思いは見えないけれど、思惑は誰にでも透けて見える。まさにこれにつきます。