金山駅女性刺殺、心神喪失で女不起訴へ 遺族は審査請求の方針(中日新聞 1月21日)名古屋市中区の市営地下鉄金山駅で昨年9月、同市港区の無職奥田トシさん=当時(81)=が刺殺された事件で、名古屋地検は、殺人容疑で逮捕、送検された愛知県春日井市の職業不詳の女(23)を不起訴とする方針を決めた。地検は精神鑑定の結果、犯行当時に心神喪失状態で刑事責任を問えないと判断したとみられる。遺族は不起訴を不服として検察審査会に審査を請求する方針。 21日に勾留期限を迎えることから、地検は女を釈放し、心神喪失者医療観察法に基づき名古屋地裁に医療観察を申し立てるとみられる。 不起訴の方針を受け、奥田さんの遺族の1人は20日夜、事件後初めて取材に応じ「残念だし、納得できない」と話した。「包丁を用意して自分より弱い相手を狙った。責任能力を問えないのは納得できない」と指摘。「複数の医師に依頼するなど、もっと時間をかけて精神鑑定をやってほしい」と話した。 遺族によると、担当検事から「説明したいことがある」と言われ、18日に地検を訪ねた。不起訴の理由を問うと、検事は「精神鑑定の結果だけでなく総合的に判断した」と答えた。 逮捕容疑では女は昨年9月5日朝、金山駅構内で奥田さんを出刃包丁で刺殺したとされる。捜査関係者によると、女は取り調べで犯行を認める一方、「私は今日生まれた」「名前はない」と意味不明な発言をしたことなどから地検は鑑定留置して精神状態を調べていた。元ニュース逮捕されたのは同県春日井市の職業不詳の女(23)。容疑は同駅地下1階のトイレや通路で数回にわたり、奥田さんの背中や頭、左腕を出刃包丁(刃渡り16センチ)で刺して殺害したとしている。遺体の傷は計約40カ所。中署によると、女は「私がやったことに間違いはない。刃物でおばあさんを殺しました」と話す一方、「私は今日、父から生まれた。名前はない」などと意味の分からないことを言っているという。女は両親と別居して1人暮らし。両親は中署に「娘は統合失調症で病院に通っていた」と話しているという。http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100906k0000m040053000c.html刑法第39条は「心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セズ」と言いますが、そもそも、どのような殺人犯も、殺人を犯す時点で、基本的に正常な精神状態じゃないと思うんですけどね。それに、この手の事件は、誰彼構わずではなく、必ずお年寄りや子供といった明らかに自分より弱い者を対象にしているので、判断能力があるのではないのかと思うのですが。また、こういう凶悪な事件を起こした犯罪者が、「心神喪失者ノ行為ハ之ヲ罰セズ」こういった文言で裁きを受けかったりすることで、実は、精神障害者が起こす凶悪犯罪は正常な人より率が少ないにもかかわらず、精神障害者は全てが危険だという間違ったイメージの植え付けになり、結果、それが不要な偏見が生まれることにも繋がってしまうので、法の不平等である「刑法39条」はいい加減に削除して、引き起こした結果について責任をとる義務があるのではないかと感じます。ウルトラマンを作った円谷プロによる社会派SFドラマ『怪奇大作戦』(1969年放送)で、刑法39条を真正面から扱った「狂鬼人間」という話があります。現在は放送禁止の欠番扱いとなり、現在は映像ソフト化も禁止になっています。(YouTubeにアップされているので見ることは可能ですが。)大まかにストーリーを解説すると、殺人事件が相次ぐのですが、どの殺人犯も心神喪失状態で、刑事責任を問えないと無罪で釈放されます。ところが、釈放された殺人犯の全てが、数日後に正常な精神状態になって生活していることを疑問に思うSRI(科学捜査班)が調査してみると、狂わせ屋という人物が開発した精神を錯乱状態にさせるマシンを使い、 一時的にキチガイ状態になり復讐したい人を殺し無罪で釈放されていることがわかりました。このマシンを作った人物を探ってみると、脳専門の女性科学者で、脳波について研究しながら家族と幸せな生活を送っていたのですが、ある日、この科学者の家族はキチガイによって惨殺されてしまったのです。しかし、刑法39条があって殺人犯は罪に問われない。自分の家族は殺されたのに、殺人犯は罪にも問われずに生きている。被害者の人権はないがしろにされていることへの怒りと苦しみを他の人間にも味あわせてやろうと、あえて、自分を苦しめている刑法39条を使って、法の欠陥を使った完全犯罪で社会に復讐を果たそうとする話で、物語の結末が、また救いがなく、見終えると重たい気持ちになり考えさせられます。おそらく内容や、所長の最後のセリフ「日本ほど精神異常者が野放しになっている国はない。 政府も考えてくれないと・・・」このセリフがネックになって偏見を助長させると放送禁止になってしまったと思われますが、このストーリーは、精神異常者を差別するために作られたような内容ではなく、「法の矛盾」と「ないがしろにされている被害者の人権」ということを指摘していて、1969年に子供番組で「刑法第39条」の矛盾を指摘した円谷プロは凄いと感じますし、今回の事件などを思い返してみると、改めてこの話の重要さがわかり、TV放送はともかく、製品では欠番扱いにすべきではないと思います。数年前に『たかじんのそこまで言って委員会』で、刑法39条が議論された際に評論家の宮崎哲弥氏が、刑法39条は精神障害者を人間としてみていないし、精神疾患者に対して「自由意志がない」と烙印を押し、司法鑑定医に刑罰の与奪権(生殺与奪権)を与え対処することで、憲法31条:無罪推定の権利、憲法32条:裁判を受ける権利の2つを精神障害者から奪っていることになると指摘し、精神鑑定と刑事精神鑑定の領域の違いの問題についても断じていましたが、死刑の存廃は政治をも巻き込み活発に議論されますが、過去に『たかじんの委員会』で議論のテーマになったように、刑法39条もタブー扱いせずに存廃を含めて議論すべきではないでしょうか。