「スパコン予算廃止」をほくそ笑む周辺国政府の行政刷新会議による「事業仕分け」で、科学技術経費が続々縮小されていることを、米中露や韓国など周辺諸国は「歓迎」している。日本の誇る科学技術力が今後低下し、競争力が弱まる可能性が強いからだ。 ある韓国の外交官は「日本が何でこのような自殺行為をするのかよく分からない」とコメントした。ロシアの外交官も「世界の流れと逆行している」と話した。ロシアでは、プーチン政権下で科学技術予算は最も高い伸びを示し、昨年来の金融危機後も削られていないという。 事業仕分けでは、次世代スーパーコンピューターやGXロケットエンジン開発などの科学技術振興予算がほぼ廃止に等しい判断を下された。民主党・蓮舫議員は、「(スパコンは)なぜ世界1でなければならないのか、なぜ2位ではいけないのか」と切り込み、「予算計上見送りに近い縮減」と判定された。 スパコンは先端工業製品の設計や評価に不可欠で、金融工学や天文学、気候温暖化対策にも使用される高速計算機。わずか276億円のスパコン予算を切ることで、日本の科学技術水準が遅れ、国力・産業力を損なうことになりかねない。各国の技術陣が最もしのぎを削る研究開発分野の一つだ。 GXロケットも、世界の新型宇宙ロケットエンジンの中核になると期待されている。いずれも「健康づくりを進めるボランティア活動」などと同一視することはできない。 さすがに民主党幹部からは、「科学技術と生活保護の話は同じ土俵で議論できない」(枝野幸男元政調会長)などとスパコン予算縮減見直し論が出ているが、民主党政権には国力向上、経済成長の国家戦略が希薄であることが鮮明になった。 米国は2007年、国際競争力の強化を目指す米国競争力法を超党派で制定。ナノテクノロジーやスパコン、代替エネルギーなどの基礎研究プログラム予算を倍増することを決めた。研究・開発費の税額控除の恒久化も議会で審議されている。 事業仕分けでは、地域科学技術振興・産学官連携事業も「廃止」とされたほか、次世代エネルギー源となる国際熱核融合実験炉(ITER)の関連予算も見直し対象とされている。 07年の米国競争力法は、理数系教育拡充のため、小中学生の算数・数学の成績向上に向けた教材充実やテスト実施を盛り込んでいるが、民主党政権は、支持団体の日本教職員組合が主張する学力テスト反対に呼応し、36億円の予算廃止も計画している。世界の常識は民主党の非常識なのだ。(TBS インテルジェンスEYE 2009/11/24)ノーベル賞野依氏 「歴史の法廷に立つ覚悟あるのか」 事業仕分けのスパコン予算カットにノーベル化学賞受賞者で、理化学研究所の野依(のより)良治理事長が25日、自民党本部で開かれた同党文部科学部会に出席し、政府の行政刷新会議の「事業仕分け」作業で、次世代スーパーコンピューターの開発予算が事実上凍結されたことについて、「不用意に事業の廃止、凍結を主張する方には将来、歴史の法廷に立つ覚悟ができているのか問いたい」と痛烈に批判した。 次世代スーパーコンピューターは、理化学研究所が主体で研究開発している。野依氏は「科学技術振興や教育はコストではなく投資だ。コストと投資を一緒くたに仕分けするのはあまりに見識を欠く。次世代スパコンはいったん凍結すると、瞬く間に各国に追い抜かれ、その影響は計り知れない」と強調した。 また、「仕分け人」が「トップを取る意味はどれくらいあるか」などと質問したことに野依氏は「中国やアメリカから買えばいいというのは不見識だ。科学技術の頭脳にあたる部分を外国から買えば、その国への隷属を意味する」と述べ、「仕分け人」らの発想に疑念を示した。(産経新聞 2009.11.25 11:05)山中教授 事業仕分けを批判政府の行政刷新会議の事業仕分けで科学研究の予算の廃止や削減が相次いだことについて、あらゆる組織や臓器になるとされる「iPS細胞」の作成に成功した京都大学の山中伸弥教授は「想像を絶する事態で、今後の日本がどうなるのか深く憂慮している」と厳しく批判しました。これは、25日、山中教授が京都大学の記者会見で述べたものです。この中で山中教授は「この分野の研究を10年続けてようやく成果が出たが、10年前の段階でどの研究が成果につながるか予想するのは不可能だ。多くの研究者のさまざまな研究を支援し、そのうちのいくつかが成果につながるというのが科学だ」と指摘しました。そのうえで、政府の事業仕分けで科学研究の予算の廃止や削減が相次いだことについて、「ありえないことだ。そもそも日本は科学研究費の割合が低く、海外より10年、20年遅れた劣悪な環境で研究をしている。その中で予算を削減するのは想像を絶する事態で、今後の日本がどうなるのか深く憂慮している」と厳しく批判しました。さらに、「日本が科学の後進国になり若い研究者から希望を奪うことにならないよう祈っている」と述べて、科学研究の十分な予算を確保すべきだと強調しました。(NHKニュース 11月25日 17時46分)-------------------------------(引用終了)----------------------------民主党の事業仕分けに対して批判の声が高まっています。特にノーベル賞受賞者やノーベル賞候補者からの抗議はインパクトがあります。ここで勘違いをしてはいけないのは、批判をしている科学者の方々は事業仕分けそのものを否定しているわけではないということです。 国の発展・成長や国力維持のために何を切って何を残すか? その判断基準(政府の指針)が曖昧なまま、財務省のシナリオ通りに予算削減ばかりに走ってしまったことに対する批判です。資源の無い日本はエネルギー自給率や食料自給率でも先進国最低クラスです。 そんな国が、食料や石油を仕入れて国民の生活を維持するための財源はどこから湧いてくるのかといえば、それは、他所から仕入れた原料を技術によって付加価値を持った製品に加工し、仕入れ値よりも高く売り捌いたり、あるいは技術そのものを知的財産として生み出しているからに他なりません。日本と同じように資源のない国シンガポールでは、科学技術分野で国力や国益を増強しようと、科学者への援助を惜しまないそうです。しかも、他国からも科学者を招きいれ、研究や開発に没頭できるよう生活の保障もしているというぐらいです。それぐらい科学技術というのは将来の国益に繋がっているのです。蓮舫議員は、「(スパコンは)なぜ世界1でなければならないのか、なぜ2位ではいけないのか」と呆れた発言をしましたが、科学技術に限らず何事においても1番を目指すからこそ成長があるのです。ナンバー1だからこそオンリー1になれるのです。オンリー1を目指すからこそナンバー1にもなれるのです。大勢の中に普通に紛れていてはオンリー1にはなれないのです。周囲から評価されてこそオンリー1になれるわけで、「世界に一つだけの花」はただの自己満足で努力せず成長が終了してるだけなんです。ちょっと話が別な方向に行ってしまいしたが、科学や医学は時間をかけての研究、何千・何万回もの実験の果てに発見や成功があり理論の証明が出来るのです。例え、その先に失敗があったとしても、その失敗さえ次の成長のために役に立って無駄なものはないのです。私は「ナンバー2でいいんじゃないの」と平然と言う議員を支持しません。(まあ、元から支持していませんが。) これまでにおいても研究費用が格段に違うアメリカにどれだけの頭脳が流出し、 その頭脳の分だけ、技術開発で得られたはずの資金が日本から逃げたのでしょうか。むしろ政権が変わったからこそ、今までの失態を見つめ直すことが大事なのに、この失態を加速させることだけは避けていただきたいものです。