今日から、事業仕分け後半戦が始まりました。事業仕分け前半戦後の各種世論調査でも軒並み好評価で、民主党支持率も上がっています。評価している人のほとんどが、議論の場が公開になったことと多額の無駄使いが削減できるからいいという理由の2つになると思います。これまでは予算要求の折衝は公にされませんでした。それが、民主党政権となり、マスメディアに公開され、そしてネット配信によって国民へ議論の場が生中継されオープンになり、国民の金を好きなように使っている(とされる)官僚や役人が、政治家と民間人から選ばれた事業仕分け人によって叱責され予算を切り刻まれている(という構図の)映像を見て、ざまあみろという気持ちになった人もいたのではないでしょうか。 まるでギロチンにかかる囚人を取り巻く大衆のごとく歓声をあげ、その顛末に溜飲を下げるかのように。この善と悪という図式に描かれてしまうのは、郵政民営化選挙の民営化反対議員vs民営化賛成議員や刺客候補者の手法と一緒で、この分かりやすいパフォーマンスは注目が集まり支持の声が高まりやすくなります。また、議論の場をオープンにしたことにより族議員の圧力を排除し、無駄なものはないのかを確認できること、専門知識や情報量だけでは立ち行かないこともあると理解させるという官僚や役人の意識改革としてだけを見れば事業仕分けはある程度は評価できるのではないでしょうか。私が、今回の事業仕分けで評価できないというか疑問や違和感に感じる部分を言えば、2010年度予算の概算要求に盛り込まれた約4千の事業のうち、事業仕分けの対象となった事業477件と事業全体の15%で、 対象にならなかった支出項目のほうがはるかに多く、はたして対象とならなかった事業に無駄はないのでしょうか。けっして、そんなことはないはずで、仕分けの対象となった事業と対象にならなかった事業の振り分け方も疑問です。今回、対象に選ばれたのは、これまでの密室で行われていた予算審議において、もっとも族議員など政治家の影響力が強かったり、専門用語を多用され官僚ペースによって根負けしたりで、財務省主計局が思うように予算が削れなかった事業なのではないかと思います。一般に向けての公開によって、影響力のある政治家を排除でき、どのくらい削ればいいのかというアドバイスもあらかじめ財務省官僚がテキスト化して配布して、 陪審員役の議員や委員がそれを基に判断を下してくれるので、いわば財務省が作るお望みのシナリオ通りに話を進めているにすぎません。だからこそ財務省関係の事業のみ仕分け対象が少ないのでしょう。 さらに言えば、公開されている事業仕分けで、「廃止」や「削減」の結論が出ても、それは最終決定ではなく、最終的な判断は、権限を持つ内閣や首相が決めます。日テレNEWS 11月23日 スパコン凍結撤回も〜蓮舫氏「政府の判断」廃止や削減から、スパコンのように反発の声に配慮して復活を検討したり、今後、仕分け作業の結論に不満を持つ事業から巻き返しのために復活折衝が行われ、その場で、じっくりと議論がされ見直されたり、与野党の政治家や官僚の利権も絡んで復活する事業もあるでしょう。魔女裁判のような事業仕分けはオープンだったものの、その後の復活折衝の場が非公開で行われたり、事業仕分けで示された廃止や削減が、内閣や首相の判断によって覆って要求通りの予算が出ることになったという最終決断ほとんど報じられないようでは、支持率アップへのパフォーマンスと見られても仕方がないのではないでしょうか。むしろ、仕分け人が仕分けた内容をもう一度内閣で検討して結論を出すのなら、この仕分け作業自体が金の無駄じゃないかとさえ思えます。まあ、民主党にしてみれば、デフレ宣言しながら対策を講じなくても、事業仕分けで1兆円の無駄を削減と言っている間に、TOPIXの時価総額で35兆円も日本の富が失われても、そんなことは知らない人から支持されて、支持率アップにつながったのですから、この実は無意味に思えそうなパフォーマンスは価値があったということでしょう。