【眼光紙背】小林よしのり氏とパチンコ問題佐藤優の眼光紙背:第51回政治漫画家の小林よしのり氏のキャラクター『おぼっちゃまくん』がパチンコになったことが問題になっている。6月3日発売の『SAPIO』(小学館)で、小林氏が以下の釈明をしている。この釈明を読んで、筆者ははじめて小林氏の台所事情がわかった。<作品は6人がかりで一日12〜13時間描き続けても、一日2枚しか上がらない。だが原稿料の作画にかかる経費のことは一切考えられていないので、ものすごく安い! 毎月、累積する赤字を単行本の印税で補填するしかない! 単行本が年30万部以上売れなければ大赤字が出る。この出版不況でそれだけ売るのは、益々、困難になってきた。わしが30年以上やってこれたのは、子供を諦めて働き、貯蓄し、ヒットが出ない時は、貯金を切り崩してピンチをしのぐようにしてきたからだ。こんな不況の中で、一般誌に連載していない『卑怯者の島』を2〜3か月、原稿料なしで描ける余裕などない。だがパチンコがヒットすればそれも可能になる。これはありがたい!>実に正直な告白だと思う。ちなみに小林氏はこの釈明の中で、筆者についてこう言及している。<佐藤優と鈴木宗男とその腰ぎんちゃくや金魚のフンどもが奇妙なことを言った。小林よしのりは金儲けのために描いている!>確かに私はそのような認識をもっている。しかし、筆者はそれを「悪い」とはひとことも言っていない。筆者を含む職業作家は、誰もが「金儲け」のために仕事をしているからだ。問題は、どのような言説で金儲けをするかである。筆者は、小林氏のいくつかの言説に強い異論をもっている。そのことで筆者と小林氏の間に諍いが生じた。この点については他の媒体で詳しく論じているので、ここでは繰り返さない。小林氏が、子供を諦めて働き、貯蓄し、ヒットが出ない時は、貯金を切り崩してピンチをしのぎ、パチンコであてて何を表現したいのだろうか? 筆者にはそれがまったく見えない。小林氏は、<身を持ち崩すような毒もパチンコにはあるかもしれないが、それこそ自己責任だ>と自己責任論を展開する。また、小林氏は批判に対して、<ネット右翼は、商売を汚いことだと見なす社会主義的な体質がある。>、<パチンコひとつでガタガタ言っているような匿名のカスなど眼中にない!>と言い切る。ほんとうに小林氏はそう思っているのだろうか? ネットで本件について書き込みをしている人々の多くは、小林氏の愛読者で、小林氏のことを心配しているのだと思う。小林氏の釈明を読んで、何とも形容しがたい悲しみを覚えた。(livedoorニュース 2009年06月05日11時00分)-----------------------------(引用終了)----------------------------小林よしのりさんの作品がパチンコになることについて、当HPの掲示板でもスレッドが立って、多数の意見が書き込まれていました。私も、佐藤優氏の言うように、マンガの作者やアニメや特撮の制作会社が、手がけた作品の著作権使用をパチンコに許可したり、タレントがパチンコに肖像権使用を許可するのは、本人の自由だと思います。ただ、もともとパチンコは存在そのものが下品で嫌いなのと、莫大な売上金の数割が北朝鮮に流れて核開発やミサイルになることを考えると、自分の好きな作品(例えば『ウルトラマン』とか)が、パチンコになってしまうのを目の当たりにしてしまうと、けっこう、何とも言えない気持ちがあります。ちなみに、保守だとかネット右翼に分類されちゃう私は、『戦争論』や『台湾論』などは、まったく読んだことが無く、『ゴーマニズム宣言』も『わしズム』も、たまに書店で立ち読みするぐらいで、小林よしのりさんのマンガで買ったことがあるのは、『靖国論』と『いわゆるA級戦犯』と『天皇論』だけです。正直なところ好きな言論人でもマンガ家でもありませんので、パチンコになったと知ってもショックではありませんでした。それにしても驚いたのが、小林よしのりさんのような知名度が高く人気のあるマンガ家でも経済的に苦しい台所事情であるということです。貯金を切り崩さないとアシスタントを養ったり出来ないのであれば、設置されるパチンコ台が1台につき約3万〜5万円ほど、マンガ家やタレントの収入になるらしいので、そのことを考えれば、マンガ1冊の印税より、はるかに大きい収入になるパチンコに著作権使用を許可してしまうのは無理もないかもしれません。現に『エヴァンゲリオン』を作ったガイナックスも、倒産寸前だったのがエヴァのパチンコ台によって、赤字から黒字に回復したという話もありますし。そのことを踏まえて、小林よしのりさんの場合は、これまで保守言論界において、ゴーマンかまして本音を言い続けていきたのですから、「パチンコ台を作ったメーカーは日本のメーカで北朝鮮とは関係がない。 パチンコを何でも悪と決め付けるな!」みたいな、どちらかと言えばパチンコ台メーカーより、パチンコ台を設置するパチンコ屋が問題なのに、そこを無視した苦しい言い訳を『SAPIO』の前号でせず、逆に、堂々と「生活が苦しいのでお金が欲しかったのだ!」と言い切ったほうが良かったのではないでしょうか。それならば、パチンコに著作権使用を認めなきゃいけないほど切迫してたのかと、またマンガを買ってあげようと思う人も出てきたかもしれません。小林よしのりさんのマンガによって真実を知ったり、保守っぽいものに目覚めた人も多い中で、これまでマンガを買ってくれていた読者をカス呼ばわりするのは、さらに読者が離れてマンガが売れなくなりかねないほどの言動で、マンガが売れない現状を嘆いているわりに、まったく合理性のない行動ではないでしょうか。というか、ネットに存在するような匿名のカスなんて眼中にないと言うのなら、その人たちの反応は無視すればいいのにねぇ。