第2京阪用地に行政代執行 園児の農作物引き抜かれる大阪府は16日、第2京阪道路の用地として、門真市の北巣本保育園の畑771.17平方メートルに行政代執行をかけ、強制収用した。月末の芋掘り交流会に向け、園児たちが育ててきたサツマイモや落花生が引き抜かれ、整地された。 午前7時半、大阪府用地室の職員ら100人が農地を囲うフェンスを撤去し、代執行を宣言。8時から、農作物を引き抜き、ご神木のエノキの下にある地蔵尊などを撤去した。 畑には早朝から、保育園理事の松本剛一さん(49)ら約30人の地域住民、園児の保護者らが集まり、「収穫までのあと2週間をなぜ待てないのですか」と抗議した。「サツマイモ畑には子どもの思いがどれだけ詰まっていると思っているのですか」と、叫ぶ保育士らが畑にうつぶせになり、府職員が数人がかりで排除する場面もあった。 松本さんが出している執行停止の申し立てについて、大阪高裁が30日に決定を出す予定。司法判断を待たなかった理由について、府は「10年3月末に予定されている第2京阪の全線供用開始に間に合わなくなるため」としている。 第2京阪道路は、京都市伏見区と門真市を結ぶ28.3キロの自動車専用道路で、国道1号の渋滞を緩和させる役割が期待されている。浪速国道事務所によると、事業用地は保育所の畑を除き、まだ7件、約3千平方メートルが未買収だ。(朝日新聞 2008年10月16日)-----------------------------(引用終了)----------------------------16日からのTVニュースなどでこの動画を見た人は多くいることでしょう。私は16日夕方のニュースでこの光景を見たのですが、いつもは優しいであろう保育士さん達が形相を変え必死な状態で畑を守る姿と、府職員の対立のような光景を見て、泣いている園児が映し出されていたわけですが、そのようないつもとは違った異様な光景を見せてしまうことは、子供の心理面にいいのだろうか、大人の事情で子供を揉め事に巻き込むのは、一種の虐待と同じなのではないかと感じたわけですが、そう思っていると、次の日にこのような続報が。橋下知事「園児の涙利用」と保育園側を批判 行政代執行大阪府の橋下徹知事は17日、第2京阪道路の用地買収に応じなかった門真市の北巣本保育園の畑を行政代執行で強制収用したことについて、「政治的な主張や反対の理由はあると思うが、園の所有者は園児たちの涙を利用して阻止しようとした。一番卑劣な行為だ」と批判した。 同保育園では今月末にイモ掘りを予定しており、園児たちが育ててきたサツマイモなどが16日の行政代執行で引き抜かれた。 橋下知事は「4月から任意交渉はしている。最大の権力行為なので慎重にやった。最後のイベントをやったら立ち退きます、という話があれば応じた」と説明。「もしあれを認めたら、これから公の工事は家庭菜園かイベントで全部阻止になるのか。工事費や損害などを府民が持つならいいが、府民の声はそうではないと判断した」と語った。 一方、同保育園の松本剛一理事は「代執行の反対運動に園が園児を動員した事実は一切ないし、むしろ子どもにはショックを与えたくないので、畑がなくなると知らせることも避けてきた。子どもの涙を利用したと取られるのは心外だ」と話している。16日の行政代執行では、祖母に連れられて通園途中に畑に立ち寄った園児が1人いたが、5分ほどいただけで祖母がすぐに保育園に送ったという。 (朝日新聞 2008年10月17日11時57分)-----------------------------(引用終了)----------------------------保育園の理事は、この騒動に子供を利用していないし、畑にいた園児は5分ほどで保育園に帰ったと主張しています。理事の主張が事実かどうかは、あの場にいて一部始終を取材していた報道記者が知っているわけです。もし理事の主張が正しいのだとすれば、保育士と府職員の攻防や、強制的に抜き取られるサツマイモなどを見て、泣いていた園児の映像はなんだったのでしょうか。また、このような報道もあります。大阪の「涙の園児イモ掘り」問題 行政のごり押しなのか大阪府が、第2京阪道路の建設予定地で、用地買収に応じなかった大阪府門真市の北巣本保育園の畑を行政代執行で強制収用したことをめぐり、橋下知事は涙を浮かべる園児の姿が報道されたことに言及、「園児の涙を利用した」と批判した。一方、土地の所有者である保育園理事は「園児を動員した事実はない」と主張する。ただ、行政がごり押しした結果、というほど単純な話ではないようだ。「芋を掘ってくださいと何度もお願いした」 大阪府の行政代執行が行われたのは2008年10月16日の朝。保育園側は、2週間後の10月31日に他の保育園と合同でこの野菜畑を使ったイモ掘り行事を予定していたため、保育園側が「子供たちの野菜を奪わないで」とこれに抵抗した。テレビなどで、子どもが涙を流す姿が報じられ、府側の職員と保護者などがもみ合う現場に泣きじゃくる子どもの姿も映された。「非常に心苦しいことだが、府民の方々からは子どもを巻き込んだとのご指摘もあった。しかし、こちらとしては誠意を尽くした結果。話し合いで解決できずに非常に残念だ」 こう話すのは府都市整備部用地室の担当者。府庁には、行政代執行をめぐり批判が相次いでおり、職員からは「やはりあの映像(園児の涙)のせいでは・・・」といった声も聞かれる。映像を見ると「念願だった園児たちの芋掘り行事を踏みにじった行政」という印象が拭えないが、府都市整備部用地室の説明ではこれとは少し違った側面が浮かび上がってくる。 府側は2003年から保育園側と野菜畑の用地買収についての交渉を開始。08年4月、府の収用裁決で西日本高速道路会社に所有権が移転したが、土地の所有者の松本剛一理事は土地の強制収用の執行停止を大阪地裁に申し立てた。しかし、08年10月1日に却下され、大阪高裁に即時抗告していた。 府都市整備部用地室によれば、府側は08年5月〜8月にかけて行政代執行の通告書を持参して直接交渉したが、受け入れられなかったという。府側は保育園の芋掘り行事があることも認識しており、「芋を掘ってくださいと何度もお願いした」。10月11日〜13日の3連休に芋掘りをしたらどうか、といった提案もしていたが、断られたという。さらに10月16日の代執行の途中で、保育園の弁護士からの「園児に芋を掘らして欲しい」という要請も受け入れたが、松本理事に最終的に拒絶された、という。第2京阪道路の建設は違法という主張が背景にある 橋下知事は2008年10月16日、行政代執行を2週間遅らせられなかったのか、という指摘に対し、「2週間遅れると6億、7億の通行料の損が出てくる」「逆に僕から言わせてもらうとなぜ2週間早く芋掘りをしていただけなかったのか」と反論した。「芋を掘ってくださいと何度もお願いした」ことが念頭にあるものと思われる。また2008年10月17日付け朝日新聞(夕刊)では、「政治的な主張や反対の理由はあると思うが、園の所有者は園児たちの涙を利用して阻止しようとした。一番卑劣な行為だ」と述べたと報じられている。 松本理事はJ-CASTニュースに対し、「子どもを楯にしているという批判もあるようだが、園児を動員したという事実はない。子どもにはショックだろうということで保育園にいてもらった。映像に映った子どもは(保育園に)向かっている途中に、保護者が『何事か』と立ち寄り、その保護者が子どもを連れていたということ」と説明する。また、行政代執行の途中での芋掘りの提案を断った理由については、「他の畑が踏み荒らされ、職員が100人近くいるなかで、園児が楽しい気持ちで芋掘りできない」と説明している。 知事と松本理事の説明はすべてすれ違っている。 松本理事は橋下知事の発言について「園児の涙に話をすり替えたいようだが、もともとは道路事業の必要性の問題がある」「逆ギレだ」と指摘。第2京阪道路の建設についても違法だとした上で、国の事業認定の取り消しを求める訴訟を06年2月に大阪地裁に起こした、としている。つまり、芋掘り行事を最後まで前倒ししなかった理由は「芋がまだ小ぶりだった」ということのほかにあるようだ。(J-CASTニュース 2008/10/17)-----------------------------(引用終了)----------------------------ほとんどのメディアが、過去に何度も交渉していたという行政代執行に至るまでの過程を無視して、行政側が保育園の話も聞かずに、強制的に子供達が育てた農園を荒らしているような構成の報道に徹していたのは、権力に立ち向かう市民や権力者に泣かされる子供という構図のみで、報道したかっただけではないでしょうか。とくに動画は文字や言葉よりもより強く印象に残るので、そういう単純な対立の構図の方が、判り易いのかもしれませんが問題の本質を摩り替えるようなこの意図的な編集による印象操作に徹してしまうと、橋下知事へ反感を持つ人以外にも、大人の軋轢の中に子供を巻き込むのは間違っているのではないかと、保育園側が抱えている事情を調べない人でさえも、保育園側への反感を持つ人も多く現れますし、その中には保育園へ直接抗議電話をする人だって出てくることでしょう。これは保育園を擁護するどころか、逆に多大なる迷惑を与えかねないので、かえって危険な編集ではなかったでしょうか。今回の件に関して、これまでの経緯を無視したり、府職員が畑からイモを抜いているのを見て、園児が泣いているという意図的な編集をしたTV報道各社に違和感を覚えました。