はてな取締役である梅田望夫 氏と『声に出して読みたい日本語』などの著書でおなじみの明治大学文学部教授 齋藤 孝 氏の対談を纏めた新書『私塾のすすめ -ここから創造が生まれる』を読みました。お二人の「学習」や「生き方」に対する熱い考え方に、読み進むほどグイグイと引き込まれ、梅田氏のベストセラー『ウェブ進化論』や、『ウェブ時代をゆく -いかに働き、いかに学ぶか』と同じく、思考を刺激させられる良書だと思いました。対談で梅田氏が述べた、知識(資料)に満ち溢れたウェブ空間やブログ空間は、現代における私塾そのものであり、たとえ現実社会では認識がなくとも、ネット空間には尊敬に値する私淑が多く存在するという考え方に共感します。『ウェブ進化論』でも触れられていましたが、将棋の羽生善治二冠は、ネットによって専門性や実務能力を身につけていく学習のプロセスについて、「学習の高速道路と大渋滞」という概念を提示しました。この概念は、ネットにはどんな分野であっても、言語化された資料などの知的財産が豊富に溢れており、ある分野を知りたいor極めたいという意思さえあれば、あたかも高速道路を疾走するかのごとく容易に効率よく知識を吸収することができる。 しかし、この高速道路も走りきったと思ったあたりに、同じ分野を疾走していた、その道のプロ寸前たちによる大渋滞が起こっている。「その道のプロ」として飯を食っていけるかは、この大渋滞をいかにして抜け切るか(どう生きるか)の創造性にかかる。というものです。私自身、一つの芸術作品との出会いをきっかけに、自分も同じようなものを作ってみたいという「あこがれ」によって、昨年の9月からある趣味をスタートさせ、その分野の高速道路を疾走し、(疾走というほどの爽快なスピード感はなく、 ノロノロ運転に近いのかもしれませんが。)独学で何処まで成長できるのか自分へのプレッシャーを課す意味も込め、新たにブログを開設して、その過程をほぼ毎日のように綴っています。一つの分野の高速道路を試行錯誤しながら進んでいると、すでに同じ分野の高速道路を数年前から疾走して、かなり先を進んでいる方やプロ一歩手前の先駆者の方から、具体的かつ適切なアドバイスを頂くことが多く、そして様々な体験談を聞くにつれ、最初はみな同じような失敗やスランプを経験したりしながら、それを成長への糧として高速道路を進んでいたのだなと痛感し、まさに梅田氏の述べるように、同じ趣味を持つ人同士が、自分の経験や考えを述べ合い、 共に学び共に成長できるブログ空間は現代の私塾でありるということをリアルタイムで実感しているところです。また、アドバイスをくれる方々は、ネット上のみで直接会ったことがなくとも、学ぶべきことが多く、自分が想い描くロールモデル(あこがれ)の対象で、師と仰ぎ尊敬できる「私淑」でもあります。日本では、ネットはネガティブな印象ばかりを与える報道が目立ちますが、本来のネットとは、個人が持つ知的財産をオープンにすることによって、その知的財産を不特定多数と共有することができ、それをきっかけに新たな表現者が現れたり、志向性の共同体による私塾が生まれ学習する機会が増え、自分の知識や能力が増幅する機会に恵まれた、志し次第では一生学び続けることのできる魅力的なツールなのではないでしょうか。