光母子殺害:元少年に死刑判決 広島高裁山口県光市で99年4月、母子を殺害したとして殺人と強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(27)に対する差し戻し控訴審の判決公判が22日、広島高裁であった。楢崎康英裁判長は「身勝手かつ自己中心的で、(被害者の)人格を無視した卑劣な犯行」として、無期懲役とした1審判決を破棄し、求刑通り死刑を言い渡した。元少年が差し戻し審で展開した新供述を「不自然不合理」と退け、「1、2審は改善更生を願い無期懲役としたのに、死刑を免れるために供述を一変させ、起訴事実を全面的に争った」と批判した。弁護側は即日、上告した。 最高裁は06年6月、高裁が認めた情状酌量理由を「死刑を回避するには不十分」として1、2審の無期懲役判決を破棄し、高裁に差し戻した。 元少年は差し戻し審で弥生さん殺害について、「甘えたい気持ちで抱きつき、反撃され押さえつけたら動かなくなった」とし、夕夏ちゃんについて「泣きやまないので抱いてあやしていたら落とした。首を絞めた認識はない」と述べた。 供述を変えた理由については、「自白調書は警察や検察に押し付けられ、1、2審は弁護人が無期懲役が妥当と判断して争ってくれなかった」とした。 判決は「弁護人から捜査段階の調書を差し入れられ、『初めて真実と異なることが記載されているのに気づいた』とするが、ありえない」と、元少年の主張を退けた。 また、弥生さんの殺害方法について元少年が「押し倒して逆手で首を押さえているうちに亡くなった」としたのに対しても「不自然な体勢で圧迫死させるのは困難と考えられ、右手で首を押さえていたことを『(元少年が)感触さえ覚えていない』というのは不自然。到底信用できない」とした。夕夏ちゃん殺害についても、「供述は信用できない」と否定した。 また、元少年が強姦行為について「弥生さんを生き返らせるため」としたことについて、「(荒唐無稽こうとうむけい)な発想であり、死体を前にしてこのようなことを思いつくとは疑わしい」と退けた。事件時、18歳30日だった年齢についても「死刑を回避すべきだという弁護人の主張には賛同し難い」とした。 また、元少年の差し戻し審での新供述を「虚偽の弁解をろうしたことは改善更生の可能性を大きく減殺した」と批判。「熱心な弁護をきっかけにせっかく芽生えた反省の気持ちが薄らいだとも考えられる」とした。 1、2審は殺害の計画性の無さや更生可能性を重視して無期懲役を選択。最高裁は強姦目的や殺害方法などの事実認定を「揺るぎない」とし、「量刑は不当で、著しく正義に反する」として審理を差し戻した。 判決によると、元少年は99年4月14日、光市のアパートに住む会社員、本村洋さん(32)方に排水管検査を装って上がり込み、妻の弥生さん(当時23歳)を強姦目的で襲い、抵抗されたため手で首を絞めて殺害。泣き続ける長女夕夏ちゃん(同11カ月)を床にたたきつけた上、首にひもを巻き付けて絞殺した。 2審の無期懲役判決を差し戻した死刑求刑事件は戦後3例目だが、他の2件は死刑が確定している。 ◇9年は長かった 本村洋さんの話 9年は遺族にとって長かった。判決は裁判を通じて思った疑問をすべて解決してくれ、厳粛な気持ちで受け止めている。私の妻子と(死刑判決を受けた)被告の3人の命が奪われることになった。社会にとっては不利益で、凶悪犯罪を生まない社会をどうつくっていくか考える契機にしたい。(毎日新聞 2008年4月22日 10時36分)ほか関連ソース:光母子殺害:【本村洋さん会見詳細】<1>「裁判所の見解は極めて真っ当」光母子殺害:【本村洋さん会見詳細】<2>「どこかで覚悟していたのではないか」光母子殺害:【本村洋さん会見詳細】<3止>被告の反省文は「生涯開封しない」NHKニュース弁護団“不当な判決だ”痛いニュース(ノ∀`)2008年04月22日朝日新聞女記者「この判決で死刑に対するハードルが下がった事に対してどう思いますか?」 ----------------------------(引用終了)----------------------------主文後回しでも無期懲役になることもあるということだったので、裁判の途中まで気が気でありませんでしたが、裁判官は、過去の判例に囚われることなく一つの事件として捉え、差し戻し審での新供述の一つ一つを喝破し、至極まっとうな判決が出されたと思いました。>また、元少年の差し戻し審での新供述を「虚偽の弁解をろうしたことは>改善更生の可能性を大きく減殺した」と批判。>「熱心な弁護をきっかけにせっかく芽生えた反省の気持ちが>薄らいだとも考えられる」とした。こう裁判長が述べたように死刑判決へと導いたのは、遺族である本村さんの強い信念よりも、他ならぬ死刑廃止論者も含めた弁護士どもだったのではないでしょうか。理屈として通じない見え透いた嘘の供述などせずに、仮にも1審2審が無期懲役であったのですから、ヘンに同情を買おうとしたり、精神的未熟さを戦略として利用せず、誠心誠意、反省の弁をしていれば、本村さんが会見で述べたように、元少年である被告の死刑は免れていたかもしれません。そういった意味においては、結局、この元少年は安田弁護士らによって、その機会を奪われただけではなく、利用されただけではないでしょうか。 ところで、今日の本村さんの会見を見ていると、人権派弁護士と呼ばれる安田弁護士らよりも、本当に命の重さや人権を理解していると感じました。だからこそ、妻子だけにとどまらず、本来であれば憎むべきである被告の命が死刑によって償わざるを得ないこの状況さえも本来であればあってはならない社会的損失だとも言い切りました。本村さんはとっくに憎しみを越えた次元に達し、被告、社会、犯罪の根本を冷静に見つめておられるのではないでしょうか。本村さんが会見で述べたように、どうすれば死刑という残酷な制度をなくすことができるか、死刑やむなしとする犯罪をいかにこの社会から無くすか、この事件を機に今一度考えてほしと、死刑存置論者も死刑廃止論者にも、さまざまなことを投げかけたのだと思います。本村さんの言葉は、いつも一つ一つが身に沁みます。これほどまでに理路整然と正論を述べるまで、自分の思考や心を強化し一人で戦わざるを得なかったというのは、いかに、これまでの日本の社会や司法システムが、被害者や遺族に対し如何に冷たすぎたのかを如実に表している、悲しい結果であるとも言えるのではないでしょうか。