夕張 人口流出が加速 孤独死も相次ぎ「破産した自治体」として全国から注目を集めた北海道夕張市。昨年3月6日の財政再建団体入り後、「全国最低の行政サービス」と「全国最高の市民負担」が、高齢化の進んだ市民生活を揺さぶってきた。再生の要の企業誘致は進まず、人口流出が加速している。一方で、「第二の夕張」になりたくないと、なりふり構わぬ歳出カットに取り組む他の自治体。財政破綻(はたん)1年後の夕張の今と、「夕張ショック」の余波を追った。 2日朝、夕張市内唯一のプール「市スウィミングセンター」の屋根が崩落しているのが見つかった。財政破綻前は通年で運営し、冬季も暖房で屋根の雪は解けていた。昨年からプールを開けるのは夏季約1カ月のみ。豪雪地帯・夕張の同日の積雪は122センチで、雪の重みが老朽化した屋根を押しつぶした。 市内には他に4カ所の屋外プールがあったが、すべて閉鎖。藤倉肇市長は「子供のために修復しなければ」と話すが、財政再建計画外の巨額の費用を捻出(ねんしゅつ)できる当てはない。近所の主婦、大槻裕子さん(44)は「幼稚園児の娘は(市内で)泳げる機会がなくなってしまう」と残念がる。 1月30日朝、1人暮らしの伊藤太郎さん(71)が自宅の玄関先で雪に埋まって死亡しているのが見つかった。前日の昼間に雪かき中、屋根から落ちた雪の下敷きになったらしい。隣家はわずか数メートル先だが、積もった雪が壁になり、近所の住民も気付かなかった。除雪車の出動回数が減らされ、高齢者の生活を圧迫している。 高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は4割を超える。全国の市で最も高く、孤独死の問題は深刻だ。市によると、07年に自宅で死亡した1人暮らしの高齢者は判明しているだけで9人。死後3日ほどたって発見されるケースが多かった。市は「お願いしている町内会の見回りも高齢者」と窮状を明かす。 人口流出を食い止め、市の税収を増やす切り札に位置づけたはずの企業誘致も破綻後の成果はゼロ。夕張市沼ノ沢で工業団地を分譲する「中小企業基盤整備機構」(本部・東京)は昨年4月から全国最安値の1坪(3.3平方メートル)707円まで分譲価格を引き下げた。だが、企業側は「光回線どころかADSL(非対称デジタル加入者線)もないなんて」と脆弱(ぜいじゃく)なインフラへの不満を突きつけた。 ADSL回線を通すには一定の利用者が必要だ。同機構は今月に入り、周辺住民にADSL加入を呼びかけ始めたが、高齢者が多く、インターネット需要はあまりない。通信インフラの不足に加えて若い働き手が少ないことも企業が二の足を踏む要因だ。 市にカネがないことを前提とした自主再建路線が企業誘致の足かせとなり、市の財政をさらに悪化させる悪循環。08、09年度の借金返済額は10億円強の予定だが、年々増えて24年度は30億円近くになる。「破綻のまち」の知名度を利用した観光PRの動きが活発化してはいるが、経済振興なしに計画達成は不可能。市の将来像は見えないままだ。(毎日新聞 3月5日10時3分)-----------------------------(引用終了)----------------------------一昨年のニュースの中で、一番ショッキングだったのが、夕張市の財政破綻でした。その理由は、市が破綻すると、今までに想像もしていなかったリスクが多く発生するという、その現実をまざまざと見せつけられたからです。「全国最高の市民負担」は年間一人当たり約10万円の負担。それが20年以上続くわけですから、引越せる余力のある人々は夕張市を離れるため、残った人々の負担がさらに増えるという悪循環がずっと続きます。引越せる余力すらない人々は、主に高齢者です。夕張市の破綻は起こるべくして起きたとは思いますが、今のこの悪循環を断ち切る術(すべ)はないのでしょうか。また、夕張市の現実を目の当たりにして、第2第3の夕張市になる市町村がまだまだ出てくるであろうことを考えると、その当事者にならない限り真剣に考えようという姿勢がないのか、あえて現実を見ないようにしているのか、危機感を持っている市町村の少なさにも愕然とさせられます。