光・母子殺害、TV発言波紋 弁護団と橋下弁護士対決へ山口県光市で99年に起きた母子殺害事件の差し戻し控訴審で、元少年(26)の死刑回避を訴える弁護団側と、テレビで弁護団の懲戒処分請求を視聴者に呼びかけた橋下(はしもと)徹(とおる)弁護士(大阪弁護士会)が法廷で全面対決することになった。「業務を妨害された」と訴訟を起こした弁護団側に対し、橋下弁護士は徹底抗戦の構えを見せる。懲戒請求は全国で少なくとも3900件を数え、刑事弁護のあり方が社会現象を引き起こす異常な事態になっている。 訴訟の火種となったのは、5月27日放送の読売テレビの番組「たかじんのそこまで言って委員会」で語られた発言だ。 この事件で、殺人、強姦(ごうかん)致死、窃盗の罪に問われている元少年は最高裁で現弁護団に代わってから、殺人や強姦致死などの事実を明確に否認。弁護団も傷害致死罪との主張を展開している。 橋下弁護士はこうした被告・弁護側の主張の変遷を疑問視し、「この番組を見ている人が一斉に弁護士会に行って(弁護団の)懲戒請求をかけてくださったら、弁護士会のほうとしても処分を出さないわけにはいかない」と呼びかけたとされる。 その後、22人の弁護団メンバーへの懲戒処分請求が急増。すべてが発言の影響か定かでないが、今月5日現在、メンバーが所属する東京や大阪、広島などの10弁護士会に少なくとも計3900件の請求が寄せられたことが日本弁護士連合会の集計でわかった。過去最多だった昨年1年間の全国の請求数1367件をすでに大幅に上回っている。 広島弁護士会所属の弁護士4人は今月3日、事態を放置できないと、橋下弁護士に1人300万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴。反論書面を作ることなどを余儀なくされ、業務を妨害されたと訴えている。 一方の橋下弁護士は5日、都内で記者会見し、「法律家として責任をもって発言した」と争う方針を明らかにした。 「弁護団は(被告が)なぜ主張を変更したか、被害者や社会に分かる形で説明していない。刑事弁護人は被告人のためだけに活動すればいいんだというのは、(弁護士法で定める)品位を失う活動にあたる」と主張。懲戒処分請求が殺到したことには「世間は今回の弁護団に怒っている」と語った。自身は懲戒処分請求していないことを問われると「時間と労力がかかる。弁護士である僕というより大多数の国民がどう思うかが非常に重要」と述べた。 だが、弁護団への「反応」は懲戒請求にとどまらない。訴訟の原告の1人、今枝仁弁護士の事務所には、嫌がらせや脅迫めいた匿名の電話も数十件かかってきている。今枝弁護士は橋下弁護士の発言に「世間の偏見や誤解を助長している。弁護士がそのような活動をするのは問題で、刑事弁護する弁護人が風潮や世間の目を気にして萎縮(いしゅく)することにつながる」と批判している。 (朝日新聞 2007年09月06日13時30分)ほか関連ブログ:痛いニュース(ノ∀`) 2007年09月05日【母子惨殺】 弁護士ら 「橋下弁護士、業界の笑い者」「懲戒請求した人達、彼にそそのかされた被害者だから今は提訴しない」-----------------------------(引用終了)----------------------------5月27日に放送された『たかじんのそこまで言って委員会』での橋下弁護士の発言を基とし同日の拙日記で懲戒請求を呼びかけた身として、同じように懲戒請求を煽った側と位置づけられていることでしょう。ただ、安田弁護士らに懲戒請求が届くばかりか、脅迫文まで相次いで届くという予期せぬ暴走が起こった事で、責任を感じてしまい懲戒請求のやり方を紹介したその日記を消したわけですが、 それでも、どうしてもこの件に関しては考えてしまうことが多く、これからも書いていくべきだとも感じております。 懲戒請求に関してはネットでなんだかんだと騒がれ、この日記も含め多くのブログが弁護士会のサイトに掲載されている懲戒請求のページを紹介したとしても、書類を提出するためにはそれなりの知識を必要とし、自分の個人情報も晒さなければいけないので、実行に移す人はせいぜい数百件程度だと5月の段階では思っていました。ところが、各弁護士に対しての懲戒請求テンプレートをアップしたHPを誰かが作ったことにより、お手軽感から4千件近くにも増えてしまったのではないでしょうか。ただ、あのテンプレートで懲戒請求をするのは問題が多いそうです。詳しくはsokさまのブログをご覧ください。sokの日記 2007年07月02日刑事弁護人の懲戒請求について 広島弁護士会所属の弁護士4人が橋下弁護士を訴えた理由は、橋下弁護士がテレビで懲戒請求を扇動した事で業務が妨害されたということですが、いくら橋下弁護士が懲戒請求を扇動したとしても、世間が安田弁護士らの弁護活動に賛同していたら、誰も反応せず、それに応じる形で懲戒請求を出す人は現れなかったことでしょう。橋下弁護士が懲戒請求を紹介する以前からも、ネット上では21人の弁護団の主張に対して、「弁護方法としては理解できるんだけど、それでもこれは行き過ぎじゃないか。」と、少なからずの疑問や憤りを感じている人の声が多かったわけです。そこに橋下弁護士の発言が出てきたことで、「そうか、懲戒請求って制度があるのは知らなかった、利用しよう」と、一気に懲戒請求運動が広まったのではないでしょうか。どちらにせよ、橋下発言をきっかけとして、懲戒請求が3900件も届いたということは、発言に触発されたということは確かなので、それを扇動と考えても間違いはないのかもしれませんが、個人個人の判断で懲戒請求を出した人の数にしても、懲戒請求を出さずとも以前からの言動に疑問や憤りを感じて、ネット内や日常で発言している人が多いというのも、すなわち世間の反応はあの弁護活動を絶賛するほど狂っておらず、まだまだ健全だということの表れではないでしょうか。 最後に今回のこの件で疑問に感じることを三つ示しておきます。4人の弁護士は同じ業務妨害で訴えるのならば、橋下発言を放送した読売テレビも訴えないとおかしいのではないかと思います。そこを全く無視しているのは、やっぱり今後、懲戒請求が増えぬよう脅し、見せしめの意図にしか見えません。しかしながら、橋下弁護士を訴えたことが様々なメディアで、大きく報道されたことにより、『たかじんの委員会』を見られない地域の人々や、ネットで懲戒請求に関しての議論が活発に行われていることをしらない人々にまで、この懲戒請求制度がさらに広まってしまったことにもつながり、こんな制度があるのなら自分もあの弁護士には憤りを感じていたからと、懲戒請求が増えることは充分にありえます。見せしめの意図があったのだとしても、訴えた弁護士4人がそこまで考えているのかどうか疑問です。 ほかにも、過去に懲戒請求を出して裁判沙汰になったこともあるそうですが、相手の弁護士に訴えられ、裁判になったりというのでは、いったい何のために存在している制度なのか疑問に感じます。懲戒請求の仕組みや考え方で揉めたり、この制度が営業妨害に当たるというのであれば、この形骸化した制度自体を弁護士法から無くすべきだと思います。「何してるの〜?」