拉致問題も参院選次第 北朝鮮次官がヒル氏に北朝鮮の金桂冠外務次官が、六月に訪朝したヒル米国務次官補に対し、拉致問題を含む日朝関係について「参院選の結果をみて考えたい」と伝えていたことが十七日、複数の日朝関係筋の話で分かった。北朝鮮側は、経済制裁などの“圧力路線”を崩さない安倍政権が参院選で苦戦している状況を踏まえ、当面は政権の行方を見定める姿勢を示したとみられる。 北朝鮮は核問題をめぐって、寧辺の核施設の稼働停止を十五日に発表。十八日からは北京での六カ国協議首席代表会合で、核施設「無能力化」などの具体的手順が論議される見通しとなるなど前進が見られるが、拉致問題をはじめ、日朝関係はなお停滞が続きそうだ。 ヒル氏は六月二十一日、平壌での金氏との会談で「日朝関係を改善していくことが重要だ」と指摘。その上で(1)日本は日朝平壌宣言に従って日朝国交正常化に取り組む用意がある(2)北朝鮮が拉致問題を含む日朝関係に真剣に対応することを期待する―との日本政府の意向を伝達したが、金氏は参院選の結果を勘案するとの回答にとどめた。 当時は、年金記録不備問題や松岡利勝前農相の自殺で安倍内閣の支持率が急落。これを受け「世界で最も日本の選挙情勢を研究している」(政府関係者)とされる北朝鮮側が、参院選の結果によっては日本の対北朝鮮政策が変化する可能性もあるとみて、様子見の構えを取ったとみられる。 日本側は「以前から参院選までは実質的交渉は困難とみており、織り込み済みだ」(政府筋)と現段階では冷静な受け止め方をしている。( 中国新聞 '07/7/17)日本の政策転換なければ核無能力化留保、朝鮮新報在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)機関紙の朝鮮新報は18日、日本が北朝鮮に対する敵対政策を転換しなければ、北朝鮮は核施設の無能力化を留保すると報じた。 同紙は、北朝鮮が主張している6カ国協議合意の完全な履行において、現時点で最大の障害となっているのは、日本の旧態依然とした態度だと指摘した。日本の対北朝鮮政策は6カ国協議合意に相反するもので、周辺に自国を敵対視しながら圧力強化を叫んでいる国が存在している状況では、北朝鮮としても自衛的核抑制力の生産基地無能力化は保留し続けるしかないとの見方を示している。 (韓国 聯合ニュース 2007/07/18 17:33)北、安倍首相在任中は日本との対話拒否=朝鮮新報北朝鮮の高官は、安倍晋三首相が在任している間は日本との対話を拒否する方針であることを表明した。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の機関紙「朝鮮新報」が17日、報じた。 同紙によると、北朝鮮外務省の高官は、安倍首相の北朝鮮に対する強硬姿勢を非難、日本政府に対し譲歩または歩み寄りの意思がないことを明らかにしたという。 北朝鮮の高官らは、「北朝鮮は安倍首相が退いた後でなければ日本との対話は再開できない」と強調したとのことだ。 昨年9月の就任以来、安倍首相は北朝鮮のミサイル発射や核実験に対し制裁を強化するなど、強硬な対北朝鮮政策を執っている。 (朝鮮日報 2007/07/18 07:05:56)日経 北朝鮮代表団、対日交渉担当者随行せず・「日本外し」演出か-----------------------------(引用終了)----------------------------本日より6者協議が再開されましたが、北朝鮮は核施設凍結の見返りに、韓国から重油の提供を受け、しばらくの間は、日本との対話を突っぱねても問題が無いというような余裕が生まれてきているように感じ取れ、一時の猶予も許されない拉致問題の解決を狙う日本にとっては、厳しい局面を迎えていると思います。 ところで、拉致問題に書かれている本で、久々に良書に出合いました。川人博 著『金正日と日本の知識人 アジアに正義ある平和を』(講談社現代新書) 東大教授の姜尚中氏をはじめとする、北朝鮮寄りの発言に終始する日本の左派知識人や人権派弁護士の欺瞞と独善性を暴きだしています。川人 博氏は「特定失踪者問題調査会」の常務理事を務めつつも、在日支援や慰安婦問題や日本国内の過労死問題に取り組む人権派の弁護士ではありますが、本を読む限りにおいて、川人氏の人権感覚は、常に人権を優劣順位が付いてしまう縦軸だけではなく、平等に一直線上に捉える横軸でも見ており、日本に多く存在する偏った人権派弁護士とは違い、非常にまともな感覚を持ち合わせていると本書から感じとることが出来ます。 本書では、私が2002年9月17日以降に常々感じていた日本の護憲平和主義者と人権派に対する不信感や言いたかった思いの全てが代弁されており、これから抜粋する数ページだけでも、この新書を買って良かったと感慨深くなりました。179頁より抜粋北朝鮮独裁体制は、人の善意を利用する謀略国家である。かかる国家が近隣に存在する日本においては、憲法九条の理想とその危うさを過不足なく把握しなければならない。 九条の平和主義は他国の侵略を阻止する力にもなる、という主張が長く唱えられてきた。しかし、北朝鮮による拉致犯罪は、1960年から80年代にわたり継続してきたことが証明されている。(実際の拉致はもっと早くからもっと遅くまで行われていた可能性が高い。) 九条は、拉致という攻撃によって、挑戦を受けた。一貫して、九条は独裁国家によって利用されたのである。 このような主張を述べられておりますが、川人氏は次のページで詐術に基づいている今の改憲議論や、それを良しとする改憲賛成派を真っ向から否定しているので護憲派と思われます。川人氏のさらに主張は続きます。184頁より抜粋もし知識人が日本国憲法を大切にしようと主張するのであれば、この日本国憲法に挑戦してきた北朝鮮独裁者に対し、徹底して闘うのが筋なのである。ところが、日本の護憲派知識人のほとんどは、金世襲独裁政治とは闘わない。少し頁を戻して180〜182頁より抜粋本来、平和主義者こそ、外部からの攻撃に対して、先頭に立って身を挺して闘うのが筋ではないだろうか。 この場合、闘うとは、被害者の実態を調べ、被害実態を内外にアピールして、国際的な包囲網によって、加害者=金日成・金正日独裁体制を追い詰めていくことである。そして、軍事によらない活動によって、人権侵害をなくし、原状回復を図るものである。 ところが、九条護憲を唱える知識人の多くは、このような闘いを放棄し、中には、陰に陽に闘いを妨害している者もいる。ヒューマニズムを忘れた平和主義者の何と多いことか。 戦後日本の平和主義は、ある意味で、「自分だけ」安全主義と言い換えてもよい思想であり、行動であった。もちろん、自分を大切にするのは重要なことであるが、「自分だけ」というのは、人道的でなく、本来の平和主義ではない。 (略)軍事攻撃ではなく平和的手段で独裁体制を打倒してこそ、平和主義の勝利と言える。 もし仮に、人権蹂躙と闘わない平和主義が今後も続くとすれば、その思想と行動は、むしろ戦争を誘うものである。なぜなら、外国の拉致犯罪を容認する平和主義に、国民が納得せず、平和主義に対する根底的な不信感が生まれるからである。 (略)戦後日本の平和主義は、広さはあっても、重さに欠けているのではないだろうか。重みのない思想は、長続きはしない。拉致という事実に直面したいまこそ、広さも重さもある、闘う平和主義が日本社会に求められているのである。 2002年9月17日の小泉首相の初訪朝、そして、拉致が疑惑ではなく事実であったと判明して以降、急速に支持や信頼を失い先鋭化せざるを得ない状況下に置かれている左派思想の人にこそ読んでほしい本ですが、まぁ、今の日本の左派連中は、自論に引きこもって、こういった他者の声を排除し思考をストップしてしまった、頑固な引きこもり人間ばかりですから、残念ながら、この本を読んで、己のダブルスタンダードな平和と人権への考え方を恥て、引きこもり世界から脱却し、真の平和を構築するべく立ち上がる左派が増えることは皆無なのかもしれません。だって、真の平和を構築したいのであれば、2002年9月17日をきっかけに北朝鮮独裁体制の拉致問題を含めた人権侵害を徹底的に糾弾するべく立ち上がり闘っていることでしょうから。だからこそ、引用した下記の箇所のように、>もし仮に、人権蹂躙と闘わない平和主義が今後も続くとすれば、>その思想と行動は、むしろ戦争を誘うものである。>なぜなら、外国の拉致犯罪を容認する平和主義に、>国民が納得せず、平和主義に対する根底的な不信感が生まれるからである。いまの日本には、平和や人権を主張する左派連中が、振りかざした説得力のない主張(ダブルスタンダード)に、不信感が増し反発する人が増えてしまい、左派連中が言うところの、いわゆる“右傾化”が生まれている土壌になってしまったのではないでしょうか。私自身が朝日新聞的な左派思想から保守的思想に心変わりしたように。