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2007年07月13日(金) これから食えなくなる魚

数ヶ月前に書いた新書マイブームは続いていて、

題名と帯と目次だけを見て内容をほとんど吟味せず買いまくっています。

ですから、当たり外れの差が激しいのですが、

例えハズレであっても知識の一つになっているので良しとしています。

 そんな中から一冊をご紹介します。

『これから食えなくなる魚』(幻冬舎新書)

日本と世界の魚事情について興味深いことが多く書かれていました。

 執筆者は、国際捕鯨委員会の日本代表であり、

今時の日本人にしては珍しいタフネゴシエータとしても有名な小松正之氏。

小松正之 フリー百科事典『ウィキペディア』

 当然のことながら魚は自然繁殖する生き物です。

しかし、人間が資源の管理を怠り、今のような乱獲を続けていれば、

2048年には海から魚がいなくなるという論文が、

科学雑誌『サイエンス』(2006年11月号)に発表されているように、

驚くべきことに、世界の主な漁業資源の75%は、

本来であればもう獲ってはいけない魚なのだそうです。

その75%の内訳は、

FAO(国連食料農業機関)「世界漁業・養殖白書2004」によると、

漁業資源のうち25%が「過剰に利用されているか、枯渇している」

漁業資源のうち50%は、すでに「満限に利用」

つまり過剰利用の一歩手前、許容範囲のギリギリまで消費されているということで、

トータル75%がこれ以上は獲ってはいけない状態の魚なのだそうです。

残りの25%だけが開発に余地のある魚で、

ようするに「獲ってもよい魚」なのだそうです。

1974年以降の30年間で、獲ってもよい魚は40%から25%に減少し、

過剰利用もしくは枯渇している魚は10%から25%に増加しているそうです。

すでにマグロの漁業規制は知られていますが、

漁業規制される魚はさらに増えるのではないでしょうか。

そんな深刻な事態にありながらも、魚はヘルシーな食料ということが欧米や、

経済的発展で裕福層が増えている中国で認知され、

世界的なシーフードブームとなっていることにより魚の消費量は急増、

世界中で水産資源の争奪戦が起こっており、

日本の商社が外国に「買い負け」することが多くなっているそうです。

 ほかにも漁業に関しては、日本にとっては深刻なことが多くあります。

国内の漁業者が3万人にまで減少し、

その半数は60歳以上の高齢者で、

漁業者の高齢化により漁業存続の危機を迎えています。

(これは、漁業に限らず、農業でも同じことが起こっているので、
 現在の日本の食物自給率40%は今後さらに減少していく非常事態となっています。)

また、漁業者が資源管理をきちんと行わず乱獲してきたせいで、

日本近海では多くの魚が資源量を減らしているにもかかわらず、

乱獲をやめようとはしていないので減少に歯止めがかからず、

このまま事態が悪化すれば、

国内の漁業生産量は限りなくゼロに近づく恐れもあるそうです。

 クジラについても書かれていますが、

絶滅の危機に直面しているクジラは、

シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、コククジラのみで、

それ以外のクジラは横ばいか頭数が増えています。

日本が国際会議で捕鯨再開を求めているのは、

100万頭いるミンククジラや12万頭いるニタリクジラなど

頭数が多いクジラだけで、しかも、捕鯨したい頭数も

2千頭から数百頭レベルでの科学的根拠に基づいた捕鯨要求です。

ですが、IWCはこの科学的根拠を見ようともしません。

(IWCは本来、「捕鯨」を前提とした鯨の資源管理を
 協議する場であるにもかかわらずです。)

 クジラは大きな口を開けて食事をすることにより大量の漁業資源を食べています。

漁業資源の減少はクジラの影響だけではないのですが、

今後、クジラが増加すれば、人間が利用できる漁業資源が

さらに減ることに繋がる理由の一つなることは確かです。

世界中が水産資源の奪い合いをしている現状では、

今後は、反捕鯨国だった国々も、

クジラを間引きすれば漁業資源が増えると態度を変え、

捕鯨賛成するのではないか、もしくは、増えたクジラを食べようと、

これまで捕鯨に反対していた態度はどこ吹く風とばかりに、

マグロのようにクジラの争奪戦を行う可能性があると私は考えています。

何せ人間というのは利己主義な生き物ですから。

 私は肉と魚どちらが好きかと言われれば、魚なので、

(生まれてこの方、焼肉屋に行ったことがないぐらいですから。)

このまま食べれなくなる魚が増えるのは困りものです。

 ほかにも、日本の漁業はこのままで大丈夫なのか?と心配なるような深刻な話や、

今後日本が取るべき対策の提案が多く書かれていますが、

気になる人は本を買っていただくとして、これぐらいにしておきます。









名塚元哉 |←ホームページ