【溶けゆく日本人】子供以下の親 身勝手な論理、平然と20年以上のキャリアを持つ都内のベテラン保育士は、ある母親の言動に耳を疑った。おもらしをした子供に貸した保育園のズボンを返却するよう促したときのことだ。 「保育園のものの方がすてきだから、譲ってくれない」。母親は真顔でそう答えたという。 「昔は言わなくてもアイロンをかけて返してくれた。(借りたものを返さないことが)悪いという認識が感じられない。親に社会性がなくなってきています」。保育士は深い嘆息を漏らした。 この保育園では「子供が恥ずかしい思いをしないように」との配慮から園名をズボンの裏側に書いていたが、以後、表に記すことにした。それでも返却率は悪く、10着あった替えズボンがゼロになったクラスもある。 告発は尽きない。 「ウチのたたみ方じゃない」と保育園が洗濯し、たたんだ子供服を突き返す▽「パチンコで負けたから」と、お金を借りに来る▽熱が39度もある子供を預けに来て、「平熱ですから」と平然と言う▽子供の体調が朝よりも悪化したことを伝えようとしたが、携帯電話がつながらず、後で理由を尋ねると、「忘年会中だから電源を切っていた」と答えた…。すべて、複数の保育士が目の当たりにした親の姿だ。 子供を教育する立場にある親の、子供以下の振る舞い−。幼児教育関係者は“親育て”の負担が増したと口を揃(そろ)える。 「これまで現場は、子供の保育80%、(親などの)家庭20%の割合で力を注いできた。現在は、保育と家庭が半々です」 都内のある公立保育園長の実感だ。 目を耳を疑う親の行状は、保育園にとどまるはずがない。 都内のある公立小学校では、夏休み前なのに子供を休ませて海外に旅立つ親が増えているという。閑散期のほうが航空運賃が安いからだ。 「『家庭優先』といわれれば、無理に止めることもできない。それにしても、義務教育が随分軽く見られるようになった」と、この小学校の元校長は嘆く。 「自分たちが参加できないから小学校の運動会は楽しくない」。別の公立小学校の校長はある父親にそう告げられ、閉口したことがある。「楽しみたい」という父親の言葉を投影するかのように運動会では親たちの飲酒が横行し、運動場が「花見会場」に一変する。 もちろん、子育てに対する関心が高いゆえに、保育園や学校に苦言を呈する親も少なくない。しかし、複数の事例から浮かび上がるのは、自分たちの都合を過度に優先する非常識な親が“増殖”しつつある実態だ。 昨年12月中旬のこと。東京都府中市の教育委員会幹部や給食調理員ら44人が、給食費未納の世帯を回った。これだけの大人数で徴収に出向くのは初めてのことだった。 給食の食材費は学校給食法で保護者の負担とされているが、全国で「義務教育だから払う必要がない」と、月4000円程度の支払いを拒否する親が急増している。府中市でも、ここ数年は未納率が1.8%程度に上る。 その結果、“大規模徴収”に至るが、2日間で徴収できたのは未納分の8%にあたる57万円のみだった。「駅前の一等地の高級マンションや新築の3階建てに住んでいたり、駐車場に3ナンバーの車が置かれていたり。せめて子供の給食費くらいは払えるのではないか、という例があった」と、市教委の担当者は打ち明ける。 悪質な世帯に対して法的措置に踏み切る自治体も相次いでいる。未納により不足する材料費分を補うために「(食べる量を増やしやすい)汁物のメニューを多くすることもある」(学校関係者)という。 親の自分勝手な論理のしわ寄せは最終的に子供に及ぶ。 駐車場の車内に乳幼児を放置したまま、パチンコに興じる親も後を絶たない。業界団体の全日本遊技事業協同組合連合会によると、統計を取り始めた平成10年以降、こうした事故は毎年数件発生し、昨年も乳児2人が熱中症で命を落とした。 「何もできない乳飲み子を何時間も車の中に放っておく。車に免許がいるように、親になるにも資格が必要なのではないでしょうか」と総務課の前島透さん。店側から注意を受けても「まだ子供は寝ているじゃないか」と言い放つ親もいる。 常識と非常識の判断ができない、いや、しようとしない一部の親たち。約40年間にわたって幼児教育に携わってきた帝京平成大学講師の磯部頼子さん(幼児教育)は、親のモラルの低下を痛感している。 「これまでは親が子供に合わせるのが普通だったが、今は逆。自分が中心になり、欲求もエスカレートしていく。『人の話を聞くよりも個性を出そう』…そんな教育を受けてきた結果なのかもしれません」◇ 《メモ》国立教育政策研究所が平成13年度に子供のいる全国の男女3859人を対象に行った「家庭の教育力再生に関する調査研究」によると、「家庭の教育力が低下している」と答えたのは、45〜54歳では71.9%、25〜34歳の若い世代でも54.6%に上った。理由(複数回答)は、子供の過保護、甘やかしすぎ、過干渉な親の増加が66.7%で最多。そのほか▽子供に対するしつけや教育の仕方がわからない親の増加▽しつけや教育に無関心な親の増加−などの意見が多かった。(産経新聞 2007/01/09 07:43)-----------------------------(引用終了)----------------------------ここまで酷いのは極端なケースで、まだ少数派なのだと思いたいぐらいですが、最近の親の傾向というのは、度が越えた過保護か、自由にさせすぎている放任かの両極端で、バランスの取れた中間がないように感じます。このような状態の親が急増しているのは、自由や個人主義のことを、利己主義と都合よく履き違えている人が増えているからではないでしょうか。自由や個人主義はリスク(責任)を伴うものなのですが、日本のマスメディアで持ち上げられている自由や個人主義は、甘えの構造による無責任な利己主義です。メディアは、意味を履き違えた甘えの構造による責任不在の個人主義を煽るような内容(例えば自分さがし)ばかりを持ち上げ、国民を自分勝手で自己中心的な人間へと誘導しています。教育現場では個性や自己実現ばかりにとらわれすぎて、社会性の育成が疎かになっています。教育とメディアが個人主義を煽動し、社会性の啓発には努めず、社会的無関心な国民を増やすたことが、昨今のすべての社会不安の原因に繋がっているのではないかと思います。マナーやモラルを子供時代に学ばなかった親が子供を躾けられるわけがなく、こういう親の元で育った子供が、今後、親になってさらに意味を履き違えた自由や個人主義で子供を育てる。さらにその子供が大人になり・・・と、時間が経つにつれ、下流化した日本人がさらに増えてしまう。そのことに対し危機感を感じている人も多いのですが、それ以上に、何も感じない人のほうが圧倒的多数なのと、全ての非常識な人間が、常識を兼ね備えた立ち居振る舞いのできる人間に劇的に変化をすることは難しく、日本は“美しい国”に立て直せるどころか、“美しくない国”へ急速に進んでいて、もう手遅れなのではないかとすら感じることが多いです。↓エンピツ投票ボタンです。 押してくださると日記を書く励みになります。エンピツ時事/社会ランキング エンピツ総合投票ランキングMyエンピツ追加