遅ればせながら『鋼の錬金術師』荒川弘を読んでみた。そしてハマった。ズボッっとな。感動した。猛烈に感動した。漫画を読んでこんなに感動したのは『ニューヨーク・ニューヨーク』羅川真理茂を読んで以来だ。
ストーリー漫画としての素晴らしさもさることながら、登場人物に年齢差があるところがいい。そして漫画にしては珍しく「年相応」な描き方がされているのだ。子供は子供のように。大人は大人のように。ピュアで一途な子供の魅力もさることながら、大人の格好よさが際立っていたように思う。年相応の格好良い大人を書かせたら藤田和日郎の右に出る少年漫画家さんはいないと思っていたが、なかなかやってくれるなぁ。
そして何よりも素晴らしいのは作品のテーマの1つになっている『等価交換』というキーワードだ。何かを手に入れようとすれば何かを失う(あるいは代価を払う)という当たり前の道理が、何度も何度も登場する。この『等価交換』の扱いが最高に素敵なのだ。
自らを振り返ってみるだに『等価交換』は日々行われている。何かを得るために、何かを失ったり、何かを守るために、何かを得ることが出来なかったり。しかし私の場合はその現実に目を向けないようにしている節がある。「最初からそれほど欲しいとは思ってなかったしね」と酸っぱい葡萄を気取ってみたりするんである。ある意味、これは生きていく上での技術とも言えるが、潔い態度ではない。生温くて、小狡い生き方だとも思われる。
『等価交換』を真正面に受け止めた上で前進する主人公を仰ぎ見るようにして、いっきに7冊を読み終えた。
こんな風に感想をかくと、小難しい作品のようだが、純粋に楽しめる漫画でもある。テーマが暗いわりに、重さを感じない描き方になっているし。小学館漫画賞受賞というのも、なるほど納得。まだまだ物語は進行形なので、最終巻までずっと追い続けていくことになるた思う。
『鋼の錬金術師』について語りたいことはまだまだあるのだけれど、語りだすときりがないので、軽く感動を記してみたところで、今日の日記はこれにてオシマイ。