白い木蓮の花の下で  

    〜逝くときは白い木蓮の花の下で〜

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引越し先 白い木蓮の花の下で


2002年01月20日(日) 「ヒレ酒」それは、ある種、大人の楽しみ、

その夜。私はどうしても「ヒレ酒」が飲みたくてたまらなかった。
自棄酒に走りたかったって訳でもなく
なにか美味しい食べ物が手に入った訳でもなく

猛烈に、純粋に、ひたむきに「ヒレ酒」が飲みたかったのだ。

私はヒレ酒ってものを29年という歳月の中で
まだ1度しか飲んだことがない。
「ヒレ酒」というのフグのヒレを感想させて、焼いたものに
熱い日本酒を注いで飲む……という魅惑の飲み物なのだが
ヒレ酒の味を知らない間は「なんか不気味な飲み物なやぁ」と思っていた。

が。

たった初めて口にした時、私は瞬時にしてヒレ酒の虜になっていた。
ちょっぴり香ばしくて、フグの「旨味」がお酒に染み出していて
とんでもなく美味しい「お吸い物」と「アルコール」が合体したというか
うむむむむむ……
ちょっと私の筆力では表現しきれないくらい素晴らしい味で
「フグのヒレ」と「日本酒」が醸し出す至上のハーモニーなんである。

しかし。

その夜、残念なことに私は「ヒレ酒」を飲める環境にはなかった。
だいたい一般家庭に「乾燥したフグのヒレ」なんて、ある訳がない。
そこで私は考えた。
「ヒレ酒」は無理でも、それに近い味を作ることなら可能ではないかと。
キュウリ+ハチミツ=メロン味……みたいな感じで。

そして私は深夜こっそりと「ヒレ酒もどき」を作ってみようと思い立った。
要するに決め手は「だし」なのである。
自宅にある「鰹節」と「昆布」で出汁を作り
そこへ日本酒を熱したものを投入して
「だしの味がする熱い日本酒」は、とどこおりなく完成した。

そして肝心の味。

鰹節と昆布のだしの味がする日本酒……以外の何ものでもなかった。
当然と言えば、当然過ぎるような結果なのだが
そいつは「ちゃんとした日本酒」から
「とんでもなく不味い日本酒」に変わり果てていた。
ごめんよ。日本酒くん。アルコールは生命の水なのにね。

その夜、私は1つの真理を身体で学んだ。
「まがい物は、どこまでいっても、まがい物でしかない」
……ってことを。
そして思った。
いい年した大人なんだから、馬鹿な行動は慎もうと。

あぁ。それにつけても「ヒレ酒」が飲みたい。
冬が終わってしまうまでに、1度は飲もう……

ちょっとした馬鹿さ加減を披露したところで
今日の日記はこれにてオシマイ。


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