私の弟は指が3本しかない。
それも「妖怪デビュー」したのは今年の夏だった。
仕事中の事故で、左手の親指と人差し指を切断してしまったのだ。
「妖怪人間ベム」の3人は
自分達の手に指が5本しかついていないことで
非常に苦しい思いをしていたが
私の弟も同じ道を行く者となってしまった。
やれやれ。
古き良きアニメ作品など、引き合いに出して茶化しているが
実際はかなり大変な出来事だった。
あるべきものが、そこに無い。
直面するには重過ぎる現実。
もちろん悲観して死んでしまうほどのものであるはずもなく
毎日は普通に過ぎていくのだし
弟自身も、自分の心とそれなりに折り合いを付けて暮らしている。
「障害なんて、なんのその。人間、頑張ればなんだってできる」
口にするのは容易いが、実行するのは相当キツイ。
けれど……
癒しの風が吹かずとも、それでも進むしかないだろう。
自らの心の赴くまま、燃え盛る洋館に消えていった
あの、妖怪人間達のように
自らの心の赴くまま、日々を過ごすしかないだろう。