金色の夢を、ずっと見てる

2005年11月25日(金) 恋愛遍歴(社会人編・2)

11月16日『恋愛遍歴(高校時代編)』
11月17日『恋愛遍歴(大学時代編)』
11月21日『恋愛遍歴(社会人編)』
の続きです。よろしければそちらからお先にどうぞ。

※文中の男性は仮名です。



最初の職場でいろいろあった結果、私は1年と経たずにそこを辞めて転職した。最初の職場よりも私の希望に近かったし、やたら院長の個人的な雑用を頼まれる事を除けばやり甲斐もあった。私はそれなりに楽しく働いていた。

村木さんと出合ったのは、そこに就職してそう経たない頃だったと思う。

きっかけは友人の一言だった。
「ねぇ咲良ちゃん、コンパしない?」
相手はその友人がその時通っていた病院の職員だった。ちょっと前に車で衝突事故を起こし、むち打ちのリハビリのために通院してた病院で、リハビリ室の職員と仲良くなったのだと言う。メンバーはリハビリ室の先生、いわゆる理学療法士の人と、その助手、そしてその助手さんの友達だという出入りしてる製薬会社の営業マン。

しかしよく聞いてみると、その理学療法士の先生は既婚で、独身なのは後の2人だけ。
「ん〜だからまぁコンパって言うよりおごってもらって楽しく飲もう、みたいな感じなんだけど」
と笑う友人。日頃からそのリハビリ室での楽しかった話などを聞いてた私は、特に出会いに期待するわけではなくただ楽しそうだから、と参加を承諾。もう1人友人を誘って、3対3での飲み会が実現した。その『理学療法士の先生』が村木さんだった。


初めて行った居酒屋だった。村木さんのお気に入りだというこじんまりした店。料理もおいしくて話も楽しくて、本当に楽しい飲み会だった。

その帰り。

車で来てた私は、友人2人を送って帰る予定だった。すると最初に話を持ちかけた友人が言った。
「村木先生も近所だよね?」
聞けば、友人2人の家も近いのだけど、村木さんの家も2人のすぐ近所なのだそうだ。当然、
「じゃぁ一緒に送りましょうか?」
という話になった。おごってもらったし、そのお礼に・・・という軽い感じ。


まず友人を1人おろす。次にもう1人。最後に村木さんが残り、
「じゃぁ俺ナビするから」
と助手席に移動してきた。言われるままに車を走らせる事5分、突然村木さんが言った。
「そのちょっと行った先に道の脇に駐車スペースあるから、そこで1回停まって」
・・・・なんで?と思いながらも車を停める。
「ちょっと休憩させて・・・久々に飲みすぎちゃった。この状態で帰るのはキツイわ」
と言ってシートを倒す村木さん。確かに相当飲んでる感じだったから
「そのまま帰ったら奥さんに怒られますね」
なんて笑って、そのまま10分ほどたわいない話をしながら時間をつぶした。

「咲良ちゃん・・・」
「はい?」
顔を覗き込んだ。

ひょいっと抱き寄せられ、キスをされた。

そのまま助手席に引き寄せるように抱きしめられ
「今日は咲良ちゃんに会えたから行って良かった」
と言われた。


もちろん、本気になんかしなかった。酔っ払いはすぐ調子のいい事を言うから、と苦笑するような気持ちで
「はいはい」
と言って抱きしめてあげた。

家まで送った。別れ際に
「今度連絡していい?」
と言われた。どうせ覚えちゃいないだろうと思い
「いいですよ」
と答えた。

本当に連絡が来たのは翌日だった。

電話が来れば話す。1週間ほどそんなやり取りが続いただろうか。ある日の夜、電話がかかってきた。
「今日、仕事関係で飲み会なんだ。終わってから会わない?」
「それ、迎えに来てって事ですか?」
と笑う。
「そう、迎えに来て欲しいの(笑)・・・・ついでにデートしようよ」

既婚者だ、という事はもちろん判っていた。でも、好奇心が勝った。


本当は、最初の飲み会で会った時から好みだと思っていたから。

もちろん、自分から誘うつもりはなかった。でも向こうから誘ってきたんだし・・・と考える。1回ぐらい、そういう事があったっていいんじゃない?

出たとこ勝負だ、みたいな気持ちで指定された場所に行く。村木さんの言うままに車を走らせると、やがて住宅街にある小さなホテルに着いた。初めて行く場所だった。
「こんな所にホテルがあったんだ・・・誰と来たの?(笑)」
「専門学校時代にここの前通って通学してたんだよ。まぁ昔の彼女とも来た事あるけど(笑)」

罪悪感、とか後ろめたい、という気持ちは不思議とまったくなかった。そして、そんな自分に少し驚いていた。

部屋もこじんまりしたホテルだった。ゆっくりくつろぐというよりはまさに隠れ家。特におしゃれでもないし、豪華でもない。いつも村木さんがお金を払っていたので、部屋代がいくらぐらいなのかは全然判らなかったが、そう高くはなかっただろう。


初めて関係を持ってしまった翌日、電話をくれた。いつものようにたわいもない話をして、切る時に
「また会える?」
と聞かれた。それが始まりだった。


何度か思った。1回だけで終わってたら、あれは『浮気』と呼ばれるものだったんだろう。でも何度も続いてしまったら・・・・今自分がしてる事は『不倫』なんだ。それでも、不思議と罪悪感はなかった。私、貞操観念がおかしいのかもしれないなぁ、と思った。

会うのはせいぜい月に1回程度だった。多くても2回。ほとんどの場合、村木さんが何かしらの飲み会の帰りに電話をしてきて、迎えに行ってそのままホテルへ行く。テレビを見たりちょっと眠ったりしながら2回SEXをして、村木さんを職場の駐車場まで送る。

なんかていのいい足代わり+SEXのオマケ付き、って感じだなぁと思いつつ、でも村木さんは嫌いじゃなかった。村木さんは、私を抱く時いつも丁寧だった。避妊もキチンとしてくれたし、前戯も手を抜かない。無茶な要求もしないし、たまに眠り込んでしまう時も肩を抱く手が離れることはなく、絶対に背中を向けなかった。


回を重ねれば情も沸く。いつしか私は村木さんからの電話を心待ちにするようになった。でも私から電話をする事は滅多になかった。『それはしちゃいけない』という自分なりのルールのつもり。奪いたいとか独占したいとかそういう気持ちはない。もし奥さんにばれるような事があったら、即土下座して関係は終わりにする。そんな覚悟はしていた。


「咲良ちゃんの誕生日にはどこかでご飯食べようか」
と言われた。嬉しかった。2人で食事なんてできないと思ってたから。

でも、それは結局実現はしなかった。約束なんてなかったかのように、誕生日は通り過ぎて行った。


きっかけを作った友人にも話してなかった。だから彼女は無邪気にリハビリ室での村木さんの様子を話す。自分が持ってた缶コーヒーを取られた事。助手さんと2人して『早く彼氏作れ』といじめられる事。こないだどこかで講演したんだって、という事。

そんな何気ない会話の中で聞いた。

村木さんが家を建てた、と。

「すごいよね、31歳で一戸建てって割りと早いよね?PT(理学療法士の略称)って給料いいもんね〜。子供もついこないだ1歳になったばっかりって言ってたし、奥さん幸せいっぱいだろうね」


産まれたばかりの子供がいることはちゃんと知っていた。でも、改めて聞いたらなんかショックだった。なんで私はショックを受けてるんだろう?と思った。私は、自分で思ってる以上に村木さんにのめりこんでいたみたいだ。


私は、2つ目の職場も1年ぐらいで辞めた。事務長と徹底的にそりが合わず、私を疎ましく思った事務長が院長や専務(院長婦人)にある事ない事吹き込んだせいで居辛くなったのだ。話もまともに聞いてはもらえず、最後には
「解雇扱いにしますから。それなら失業保険がすぐ出るからいいでしょう」
と切り捨てるように宣告された。


仕事を辞めた後、友達の紹介で2ヶ月だけの短期のバイトをした。村木さんとは続いていた。そして春先、どんな流れだったのかは覚えてないが、村木さんと助手さんと助手さんの彼女さんと4人で、助手さんカップルが同棲してる部屋で一緒にご飯を食べる事になった。

彼女さんのおいしい手作り料理をご馳走になり、村木さんと2人でマンションを出た。帰る途中で、川沿いの桜がキレイな場所を通った。
「ちょっと花見していこうか」
と言われ車を停め、公園になってる川原の桜の下を散歩した。ベンチに並んで座り、ぼーっと桜を見上げて
「キレイだねぇ」
と話した。

なんとなく別れがたくてそのままホテルへ行った。

そして、それが最後になった。




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咲良 [MAIL]

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