まつや清の日記

2004年04月04日(日) 『クモはなぜ糸から落ちないのか』(PHP新書)を読む




 本屋さんで『クモは何故糸から落ちないのか』の標題に引かれて買い込んでしまいました。衝動買いに走ったのは、クモの糸の不思議さは、カキの貝殻の硬さが未だ解けきれないということと並んで興味が以前からあったからだろ思います。

 ざーと急ぎ足で読みました。
 前半は、クモの糸にかんする科学的な分析です。
 後半は、クモから学ぶ社会政策についてです。
 
 300万年間という人間の歴史に比して4億年という進化の歴史、4万種のクモのうち日本には1200種があり、半分は空中に巣をつくり、半分は地上、クモの巣には縦糸と横糸があり、横糸に粘着力がありエサを確保する網の役割があり、縦糸は粘着力はなく、クモ自身が移動用に使用とか、いろんなことがわかり、知的刺激は充分です。

 クモといえば、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の最後のシーンでフロドをクモの糸でぐるぐる巻きにして、毒で筋肉を弛緩させ一時的に仮死状態にするシーンがありましたが、この本で、クモの生態を知ると「なるほど」とうなってしまいます。特に、タバコの煙に反応する蜘蛛や紫外線に弱い蜘蛛の糸など地球環境と自然界を結ぶ「蜘蛛」という視点は大変面白いお話です。

 アメリカ映画『スパイーダーマン』、往年のグループサウンズ・スパイーダーズ、芥川竜之介の『蜘蛛の糸』、蜘蛛に関する社会的表現は「蜘蛛の生態から導き出される神秘性」に起因して多種多様です。

 著者は、大崎茂芳さんという方で、高分子物理化学の学者で、蜘蛛の研究は25年という方です。さすが学者ゆえに、蜘蛛から社会政策への展開が、蜘蛛の糸と張力の科学的分析を通じての弾力限界値を境に線形・非線形現象を媒介にして語っていただいているところが「遊び的」学問の世界です。

 私は、その面白さも受け入れたいと思いますが、『古事記』や『日本書紀』の大和朝廷に屈服しない辺境の土着民族を『土蜘蛛』と呼んだというくだりの方に大変な関心が向かってしまいます。
  
 楽しく短い時間にさっと読めてしまいますので、是非一読を。


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K.matsuya

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