昨夜も帰宅したら切ってない。今日買いに行くのに。 仕方ないんで、ぼくが切りました。
「あれ?やっぱり切るの?」 「手伝う?」
結構です。今さら。
いっしょに買う母の分も切る。 下に持って行ってみせると、 「大きいのでいいって」と言っていた妻の言葉とは違い、僕の提案した大きさになった。 「ふーん」 「昨日はなるべく大きいのって言ってたよ」 「脅したんじゃないの」
違います。実の母を脅してどうします。 ちゃんと現物を持っていかないからわからないんです。
「ふーん」 「さすが血のつながった親子だね」 「血は水よりも濃し、だね」
なんだか使い方が微妙におかしい気もするが。まあ、いい。
さて、本題です。 あなたが買おうとしているのはこの大きさです。 ばさり。
「で、でか」
と、つぶやいたのは、妻でなく電波ちゃん。 おお、味方が。 しかも、どこにも僕の血が流れていなさそうな電波ちゃん。
しかし、僕の血を色濃くひくはずの下の娘は、 「いいねぇ!」とどこかのおやじのような発言。
裏切り者め。
うーむ、二対二かっ。
と、思った瞬間、
紙を持った僕に近づいてきた妻が、手で大きく丸を書く。
「翔さんの顔がこれくらい」
「きゃー、いいねぇ。いい。それで」
くっ。 卑怯な。
「まあまあ、持っててあげるからちょっと食卓の方から見てご覧よ」 「全然大きくないって」
そ、そうなのかな。 たしかに離れるとまた感覚は違うのか? では。
…。 でかい…。 でかすぎる…。 ありえない…。
結局、紙を切ってはみたが、妻を説得することはできなかった。 そして、僕はといえば、予想を超えたあまりのでかさに、今日の買い物がさらに憂鬱になったのだった。
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