けちぞう日記
妻やムスメから「けちぞう」と呼ばれる男の日記。
と,いっても書いてるのは妻。

2007年05月13日(日) 時速

妻が夜歌舞伎に行くと言う。

朝からその準備で家事その他ほとんど何もしない…。
あ,朝食だけは前の晩から用意したりして,マフィンを焼いていた。
しかし,これは今凝っているだけであって,「焼け」と言えば金輪際焼くまい。

暑い,とかうまく行かないとか,鏡を買えなどうるさく吠えながらも,なんとか着物を着たと思ったら,

「車」

アナタねえ。

せめて,「車で送ってください」と言いなさい。

まあ,後々うらまれてもいやなので,駅までお送りする。
帰りはムリですからね。
たぶん風呂に入って,寝てしまいますからね。
タクシーがいますから,それに乗って帰ってきてくださいね。

思えば,これがまずかった。

妻がいないので平和な我が家でゆっくり過ごし,風呂に入っていると,

「おとーさーん,おかーさんからメール」と下のムスメ。

は?もうお風呂に入っているって言ってくださいね。

風呂から上がって,
タクシー拾いなさいね,と念押しでメール。
これをやっておかないと,おかしなところがけちなあの人のこと,
勝手に歩いて帰ってきて,ぶうぶう文句を言うに決まっている。

しかし,これも実はまずかった。

「タクシーいない」と不穏なオーラが漂うメール。

電話を入れてみる。

えーと,今歩いてらっしゃるんですかね。

「ええ。歩かないと帰れませんから」
「タクシーなんか全然いませんから」
「タクシーいるからって言われましたけど」

矢継ぎ早に八つ当たり。

それで歩いて帰ってくるんですね。

「はい。じゃ」

ぷちっ。

完全に逆恨みだと思うが,仕方ない。
ちょっと遅いが夕涼みがてら様子を見に行くか。

自転車に乗って行く道に目を凝らすと,
真っ黒な塊が向こうからすごい勢いでやってくる。

おお,まさに猪…ではなく妻である。

「自転車で迎えに来られてもねえ」

むっ。
まあ,そう言わずに荷物だけでもかごに入れなさいよ。

「バッグと人形焼きだけだけど,まあいいか」

なんでそんなに威張ってるんだ。
こういう無意味な威張り具合は下の娘にしっかり遺伝してるなあ…。

家で待つ娘達に思いを馳せながら,がしがしと歩き続ける妻の横をゆるゆると走る。

ふと自慢のサイクルコンピューターを見ると,なんと時速5kmだ。

「えっ,そう?」
「着物で時速5kmって速いよね」
「じゃあ,洋服だと6kmは出てるよね,すごーい」


思わぬことですっかり機嫌が直ったのだった。

つけといてよかった。サイクルコンピューター。


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きゅ〜