あれはいつのことだったか…。
数年前僕が忙しい部署に異動になったときだ。 帰宅する度に見慣れぬものが増えていて,心底不安になったものだった。 僕の監視が行き届かず,妻が暴走したからだ。
あれから何年もたって,僕は再び忙しくなった。 すると…。数年前と同じ現象が起きたのだ。
初めは,ゴミ箱だった。 ゴミ箱くらい,と思ったアナタ。 アナタは妻の恐ろしさを知らないのだ。 ゴミ箱ひとつだって妥協しないのだ。 使い勝手はともかくデザインにもこだわりがあるらしい。 どうせ流しの下に置くのに。 どうせ客なんか来ないのに。 しかも,2つ買いやがった。
次は炊飯器の内釜。 まあ,これは実用品だからな…。 しかし,その合間に妙に和風な宅急便をこそこそとタンスにしまっているのも目撃されている。 だいたい,隠すならさっさとやればいいのに,僕が帰宅するまではだらーっとして片づけもしない。 そこはかとなく腹立たしい…。
そして一昨日は,帰宅するなり, 「携帯電話のバッテリーのフタがない」と訴えてきた。 なんでも,納戸でおっことして飛び散ったらしい。 ちゃんと探しなさいよ,家の中なんだから。 そういえば,少し前から機種変更をしたがっていた。危険だ。 わざと見つけないんじゃないか。
さらに,昨日はばかでかいアイロン台が夜9時半に代引きで配達された。 アナタ,僕のワイシャツを張り切って洗ってくれたのはいいけど, そのまま2週間アイロンがけせずに放置してますよね。 それなのに,なぜアイロン台…。
「いや,これを待ってたんだって」 「魔法のようにちゃかちゃか〜ってアイロンがけができるんだよー」
そんなことあるわけないだろ。 しかも,その待ってたアイロン台はまだ梱包も解かれずに玄関に転がっている…。
しかし,こんなことはたいしたことではなかったのですよ。
昨夜,かかってきた電話。 妙に愛想のよい妻。
「はい,はいー」 「えー,そうですね。少々お待ちください」
「ねー,日曜の午後って家にいるかなあ」
は? あ,そうですね。天気が悪いようだし,連休最終日だし,いるんじゃないですかね。
「んじゃ,来ていただいていいね?」
だ,誰に?
「○○ホームさん,リフォームの見積もりが出たって♪」
ふっふっふ…。
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