上のムスメを塾に送っていくのに,途中まで下のムスメと妻がついてきた。
給料が出たので,パン屋で菓子パンを買うそうだ。
そういうことをするから,また給料日前に苦しい思いをするのに…。 と,言いたいが,反撃が怖いのでやめておく。
常識の範囲内の買い物にしてくださいよ,と祈りながらムスメを送って帰ってみると…。
いやしねー。
どこに行ったんだ。 本屋あたりか? まあ,静かだからいいか。 少しゆっくり…。
ぷるるるる。
いやな予感。
はい,もしもし。
「あっ。今ね,アンタが機種変更できそうなとにかく安くて薄いヤツを押さえてあるから」 「ちょっと来て」
来てってお前どこにいるんだ。
「ト○タ」
あー,こいつやっぱり本屋に行ったんだな。 そして,隣にあるト○タを見て急に思いついたな。
「アンタの好きそうな,じみーなねずみ色はもう一台しかないんだよ」 「とにかく来て触ってみたほうがいいって」 「びみょーな開き方するし」 「でも,これならポイントで機種変できちゃうんだよ」
ねずみ色って。シルバーだろうが。 まあ,そこまで言うなら,ちょっと行ってみるか。 確かに今使っているのは,万が一通話なんかしようものならフル充電してあっても半日持たないしな。
現場についてみると,パンフレットやら何やら広げた上に,携帯が何台かちらばっていて,妻とムスメはコーヒーとジュースを出してもらって飲んでいる。
「あー,やっと来た。早く早く」
はいはい。わかりましたよ。 触ってみるとたしかに微妙な開き方なのだが…
「最近薄い機種はだいたいこういう開き方ですねえ」と営業マン。
なるほど。 薄さをとるとこの開き方…。
まあ,開くことめったにないしな。 閉じた時のほうが重要だな。 これは今使っているのと…
「同じメーカーだよ」 「だから使い方もたいしてかわんないって」 「メールくらいすぐに送れるから,これにしなさいって」
畳みかけるような攻撃は,営業マンではなく妻。 しかも。
「えーと,私は…」
と,見るからに派手で高そうなブツを手にしている。
こら。 お前は変えたばかりだろうが。
「えー,もう2年たってるんだよ」 「それに私はもうなんちゃらじゃなくてなんちゃらにしたいのっ」
あー,なんだか聞き取れないし,聞き取れても意味がわからない…。
それを聞いた営業マンが素早い対応で妻が欲しがっている機種の在庫確認。 いえ,ちょっと,この人のはまだ使えるから変えませんよ。ええ。
「ずるい…。ずるー」
うるさい。
しかし,幸い妻が欲しい機種は在庫がなかった。
そんなこんなで,無事に,僕だけが新しい携帯を手にしたのだった。
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