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2021年07月04日(日) ■ |
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東京バレエ団『HOPE JAPAN 2021』 |
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東京バレエ団『HOPE JAPAN 2021 東日本大震災10年 コロナ禍 復興プロジェクト』@東京文化会館 大ホール
東日本大震災が起こった年、シルヴィ・ギエムが先頭に立ち公演を実現させた『HOPE JAPAN』がこの度復活です。KENZOさんは昨年新型コロナウイルス感染症により亡くなり、『HOPE JAPAN』が復活したこともご存知ない。十年後こんなことが起こるなんて、誰が想像しただろう。もう十年ともいうが、たった十年ともいえる。バレエ団は震災遺児への支援を継続しており、今回もロビーに募金箱が置かれておりました。
「ギリシャの踊り」で幕開け。暗転後、聴こえてくる潮騒に『M』を思い出す。マルセイユ生まれのベジャールは「地中海人」を名乗り、海をこよなく愛していたとのこと。さざ波のようにフロアを滑り現れるダンサーたちの美しさ! 二人の若者によるパ・ド・ドゥは池本祥真と昂師吏功、ハサピコは上野水香とブラウリオ・アルバレス、ソロは樋口祐輝。溌溂とした男性同士のパ・ド・ドゥが観られるのも、この作品の魅力です。装飾なしの黒一色、白一色というシンプルな衣裳は、ダンサーたちのポーズの美しさを際立たせます。
「舞楽」初演版、主演は宮川新大。黛敏郎の音楽とともに、身体がオブジェのようにも映る振付が印象的。一見華奢なダンサーたちが、土台になるパートもリフトも抜群の安定感で踊ります。マッチョになりすぎると身体の線や柔らかさが失われてしまう。細身な東洋人ダンサーの特性がよく活きているように感じました。
「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥは秋元康臣と足立真里亜。全幕観たいと思わせる、情感豊かなストーリーテリングぶり。カジュアルな衣裳の男性ダンサーたちが演じるモンタギューとキャピュレット両家の争いは、ベトナム戦争という当時の社会情勢が色濃く反映されたパートになっています。これが現代にも通じるものになっているところに寂しさも覚えますが、だからこそ、まっすぐな思いを貫くロミオとジュリエットに憧れを感じるのだと思います。秋元さんも足立さんもとてもかわいらしく、美しい強さを備えた踊りを見せてくれました。また観たい!
「舞楽」も「ロミオとジュリエット」も初見だったんだけどすごくよかったなー……。なんでも「舞楽」は1988年の初演版の復活、「ロミオとジュリエット」は38年ぶりの上演だそうで、そりゃ流石に観てないですわ。昂師さんも足立さんも、抜擢という言葉が浮かぶフレッシュなキャスティング。バレエ団の層の厚さと充実ぶりが感じられます。
そしてようやく柄本弾がメロディの「ボレロ」を観ることが出来ました。鼓舞という言葉がふさわしい、オールメールの力強いボレロ。表情もよく見え、ありきたりな言葉で申し訳ないけれど気合いが感じられました。うーん、そうとしかいいようがない、他にどんな言葉がふさわしいだろう? メロディを踊るダンサーは技術やスター性は勿論のこと、こうした「気」をリズムダンサーたちへ、ひいては観客へと波及させていく触媒のような役割をも背負える者でないと務まらないように思います。男性ダンサーと女性ダンサーでは少し違う振付を観る楽しみもあり。終盤のブリッジや頬杖をつくポーズが男性にはないんですよね。今では動画サイト等でさまざまなボレロを観ることが出来ますが、これが結構違うんです。「あれっ、ここ端折った?」と思ってしまうような踊りのひともいる(笑)。細かい所作はダンサーに任せているところもあるのかもしれません。それだけダンサーの“ニン”が露わになる恐ろしい作品でもあります。
一月の『ニューイヤー祝祭ガラ』での「ボレロ」同様、リズムを担うダンサーたちの充実ぶりも素晴らしい。昔はメロディに注目するばかりでしたが、前述したメロディの「気」がリズムに伝播する様子が見てとれるようになったここ二本の「ボレロ」に、この作品の奥深さを改めて思い知らされています。
モーリス・ベジャールが亡くなって13年。今回のプログラムも半分は1960年代、もう半分が1980年代の初演です。時代は巡り、世代交代が進み、ベジャール作品を初めて踊るダンサーも増えたことでしょう。その分新鮮に感じたところも多く、だからこそベジャール作品の普遍性を再確認出来ました。官能と野性、生命力に満ちた踊り。若いダンサーたちはそれを見せてくれました。前回ツアーを牽引してくれたギエムはいませんが、今は彼らがいる。東京バレエ団のダンサーたちを頼もしく感じた公演でした。
これからバレエ団は全国ツアーへ出発。十年前の『HOPE JAPAN』は東北をはじめとした各地を励ましたいという意義のもと敢行されましたが、今回はステージに立つ側も困難な状況のなかでのツアーとなります。全ての日程が無事行われますように。
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『かぐや姫』、今秋は第一幕のみ。来年以降第二幕、第三幕と創作を続けて全幕を完成させる数年がかりのプロジェクトになるとのこと。音楽はドビュッシーからというのも楽しみです
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