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2014年05月24日(土)
『錬金術師』『WAR & POLYRHYTHM REGION 2014 / NEW DCPRG SPRING CIRCUIT』

『錬金術師』@東京芸術劇場 シアターウエスト

ベン・ジョンソンと聞いてえっと思ったのは、一時期スズカツさんが言及することの多かったあの陸上選手のこと。その後山本耕史版『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の翻訳を手掛けた北丸雄二さんが、新聞記者時代ソウル五輪で取材したことをどこかのテキストに書かれていたなあなんてことを思い出していた。

と言う訳で入り口からなんか間違ってる感じですが(笑)、不勉強故今回初めて知りました。陸上選手ではなく、シェイクスピアと同時代に活躍した劇作家・詩人であるベン・ジョンソンの作品だそうです。公演前からスズカツさんがテーマも教訓もな〜いとやたら主張してたのでそうでございますかと言うスタンスで観るつもりで行きました。いやはや楽しかった。

さて開演してみれば、「テーマも教訓もない茶番劇」です、とのご挨拶。徹底してる。そんなこんなで小賢しいことを言うと、この朴璐美さんによる前口上や台詞まわし、口上役の平野潤也さんを黒子的に扱い附け打ちも担当させたところは歌舞伎っぽいなあ、主人のいぬ間に従者がなんかやらかすって構成は狂言ぽいなあなんて思ったり。原作テキストは未読なので、どこからどこ迄がアダプトされたものか、稽古場によって生まれたものなのかは推測に過ぎません(前口上についてはパンフレットでスズカツさんが「原作にはない」と明言)。

茶番劇と称される本編はとにかく騒々しく愉快。絶叫調で音が割れ、聴き取れない台詞も沢山。これは流していいものなんだなと了解し、それでもやっぱり気になるので、販売されていた上演台本を読んで補足。まんまと術中にはまっております。舞台美術はジャクソン・ポロック調でシンメトリー、音楽はボサノヴァ。反復による笑い。そしてやはり組み込まれる雨の音。衣裳がアレクサンダー・マックィーンみたいで格好よかった!と言えば朴さんのボインは『DUMB SHOW ダム・ショー』での浅野温子さんと同じ仕組みかなーなんて思ったり(笑)。そういえばこれも人間てバカねえ、かわいいそうねえって話だったな。

終盤の橋爪さんの口上は、シェイクスピアの台詞にもありそうなものでした。エピローグの前だったんだけど、ここで拍手が起こる程。そして再び朴さんが、茶番にひたすら献身した役者たちを安らぎへと導いていく。まるで一夜の夢のよう、楽しいパーティは帰り道が暖かい寂しさなんだよね。

あー人間て愛しいなあ。おもろうてやがてかなしき…ではないな。悲しくはないよ。しみじみといい舞台でした。個人的には「神様バカ」と橋爪さんがハカ踊るとこがツボにスパーンと入って息吸えなくなるくらい笑った。吐きそうになってやばかった。

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さて『錬金術師』からの〜DCPRG。すずかつさんときくちさんのハシゴって今回で四回目くらいなんだけどなんでだ…なんで一緒の日にやるんだ。何?どっちもAB型だから?(関係ない)そして金田明夫さんは左利きなので、そこらへんも無理矢理結びつけてみよう(根拠どこ)。まあこじつけて何故このふたりが好きかと言うと「それでも人生にイエスと言う」ってとこかなー。自分でも言ってることが判らない。どちらも愛してやまないですよ。

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DCPRG『WAR & POLYRHYTHM REGION 2014 / NEW DCPRG SPRING CIRCUIT』@TSUTAYA O-EAST

「生まれたときからエースで四番」を欠いたDCPRG、今回はトラもいません(これは敢えてのことだと思われる)。ポリリズムのリテラシーをメンバー間で浸透させてから二度目のライヴ、新曲大量投入とのアナウンス。今後の展開は?と臨むつもりでしたが、不測の事態により若干心構えに加わる要素あり。そういうときはそういうときこそのものを聴かせるバンドです。ひとり欠いてる、それでこれだったんだから、エースで四番が帰還したらどうなるんだ?気の狂った指揮官と彼に率いられる傭兵部隊の未来に思いを馳せる。

大儀見さんの不在に加え大村さんが欧州ツアー中でリハ不参加と言う環境で新曲をドカンドカンとやるものだから、あちこちであれ?あれ?となってる様子が見えたのは面白かった。一曲目から混乱があったようで、本来類家くんだったらしいところで坪口さんがソロに入る。譜面を何度も見る類家くん、高井くんや研太さんに「今ここだよね、ここ俺のソロだよね…?」と確認しあっているが坪口さんはガンガン弾いてる。気付いた菊地さんが坪口さんの様子を見つつ類家くんへサイン、その後ソロへとキューを出す。あと曲中坪口さんが小田さんのところへテクテク歩いていって譜面を指し乍ら打ち合わせしてたりとか、珍しい光景がぼちぼちと。毎度のこと乍ら演奏が停まることはないし、軌道修正もそのなかでやっていく。

読み書きが浸透してから格段に化けたのは千住くん。今回の「Catch 22」はPerc不在と言うこともあり教順さんと千住くんのやりとりで起点や分岐点を作っていたんですが、複合リズムでガチッとやりとりしてる!全然違う!こういうやりとりって今迄は教順さんが作っていく様子を見乍ら千住くんが隙間を埋めていくって感じだったんだけど、今回は感覚を外した意識上で噛み合ってる。それに伴いアウトロのソロにもリズムのなまりが表出してた。ひぃーとなる。

ビバップと言うよりハードバップ要素が強くなった印象。スウィングなリズムもあり、ジャズの年譜を見ているような気分にもなる。DCPRGで?とも思うが、それらをDCPRGマナーでやっている、と言うところがミソで、スウィングがファンクだったりPerc不在なのにハードバップを連想すると言う混血っぷりです。坪口さんが弾いていたフレーズを小田さんが弾いたり、ツインヴォコーダー(!)になったり、と言った細かい仕様変更は数知れず。センターにある筈のPercがなく、コンダクターを中心に田中/千住、坪口/小田がシンメトリーのヴィジュアル、それと相反する音のアシンメトリー。音でロールシャッハテストを受けている気分。そしてもうひとりのセンターアリガス、恐怖の安定感。

菊地さんがあんな長く弾いたkeyソロも新機軸か(「ネルソン・マンデラ」)。それがまた「泣きたくなる様な安っぽい話し」にも匹敵するようなメロウなリフレイン。こういう形で甘いメランコリーが顔を出したかと困惑。泣きそうになる。指揮官の背中を見詰める。そしてCDJがなかった。新しいシーズンに入ったと判断したうえですが、前シーズンには言葉が溢れていた。アミリ・バラカのアジテーション、SIMI LABとの交流を重ねた日本語と英語の混血ライム。

今の編成で初めて演奏された「Hey Joe」の爆音は、『THIRD REPORT FROM IRON MOUNTAIN』じゃないのか。アナウンスされてたとは言えこのときのフロアの待ってましたっぷりすごかったですね。だってあれよ…これ演奏されたの、七年前DCPRGが一度終了したとき以来だよ。パートチェンジしてやったグダグダのやつ……。そりゃギャー!とか言うよ。

菊地さんがステップを踏む。踊る。そしてぽろっとあの表情を見せる。ああ、この顔好きなんだ。

アンコール、「当日迄どうなるか判らないし、怖くてずっと振り向けなかった。でも、」とフロアを見渡しててへへと言う笑顔。「本当はここに聖なる楽器があるんですが、」と大儀見さんのことを話す。「ピンチはチャンス」とぽつり。そして「カヴァーなんだけどこれも長いから、アンコールは一曲になっちゃうかなー。では『Talking Book』から一曲、」と始まった「Tuesday Heartbreak」。時間の都合でとは言っていたけれど、「Mirror Balls」は彼の帰還迄おあずけのようにも思う。琴線に触れるどころかかきならされました。帰り難くてフロアをうろうろする。

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セットリスト(公式にあがったので曲順訂正しました・5/29)

01. 新曲(ロナルド・レーガン)
02. circle/line
03. Playmate at Hanoi
04. 新曲(ゴンドワナ・エキスプレス)
05. 新曲(ネルソン・マンデラ)
06. Catch 22
07. 構造1
08. Hey joe
encore
09. Tuesday Heartbreak(Stevie Wonder's cover)

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(「Mirror Balls」は東京以外ではやったようで。ハハハ、過剰にセンチになっていたのはこっちだったか)

以下おまけ。

・ちょっとひっかかったことを書くとSMASH-jpnのこのツイートにはうるせえよと思ったわー。オーディエンスが目にするとこで書くことじゃない。舞台の千秋楽に「千秋楽だからっておふざけはなしですよ」って役者に言ってすげー怒られた演出助手の話を思い出すね!
・物販がなかったのはeweからSONYに移籍したから?

・今回いちばん笑ったのは菊地さんが『S 最後の警官』を観てたってことですね
・「類家くんがトランペット構えてこっちにらんでるとスナイパーの綾野剛が銃構えてこっち見てるみたい!」「もうねこれの綾野剛むちゃくちゃ怖いの!犯人を撃ち殺すためのスナイパーなんだけど(以下『S』の説明)撃ち殺そうと構えてると向井理が素手でガーッとその犯人に殴り掛かっていくので撃てないの!」
・ああ、あの口調、再現出来ない
・類家くんがパーマかけて綾野剛ぽいねなんてサさんと話してたんですが、もう腹がよじれた

・大村さんは欧州ツアー帰国したその足でライヴ参加。「痩せた?」と菊地さん
・バスツアーだったってことで「ああー、バスツアー大変だよね…俺らその手のツアーにはネタがいっぱいある」「統一前のドイツ、東独でのツアー。スケジュールもエグくて。めっちゃ舗装の悪い石畳をずーっとバスで移動して。ガックンガックン揺れて三半規管の弱いやつからゲーってなってく」「マスコットで同乗してたシェパードがゲーッて吐いた。ひとだと『いや〜もう具合悪い〜気持ち悪いです〜』とか言うけど犬は言わないじゃない、『いやもう菊地さぁんつらいです〜』なんて言う犬いたら気持ち悪いけど。で、直前迄何の予兆もなかったのにいきなりゲーッて」
・ああ、あの口調、再現出来ない(再)

・高井くんタンク重ね着でチャラ〜い!「身体に傷(銃痕)のない50cent、六歳」ソロふてぶてしい程のキレッキレ
・千住くん白シャツ素敵☆
・「Catch 22」の千住くんアウトロソロのとき研太さんが教順さんとポジション替えしてた。「こっちから見てみれば?」って感じだったんでしょか
・その研太さん、随分ロマンスグレーロン毛に……「研太こんなになって…歳下とは思えない」@菊地
・「どんどん70年代ロックスターみたいになっていく。ファッションも昔は地味にスマートだったのに…研太くんどこへ行くんだろう」@サさん
・小田さん裸足(追記:に見えたが映像観たら履いてるか)、アンコールで野獣先輩Tシャツ。ヤバい
・涼しい顔してブイブイ弾きます。女声ヴォーカルがDCPRGで聴けたのも楽しかったなあ
・「これを機にDCPRGは五年計画で全員女性になります」。ええ楽しみですね