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2014年03月25日(火)
『オトナの銀英伝ナイト Part1〜ヴァーチャル・ヒストリー「銀河英雄伝説」の世界〜』

『オトナの銀英伝ナイト Part1〜ヴァーチャル・ヒストリー「銀河英雄伝説」の世界〜』@六本木 Bee Hive

発表時のアオリが「卿にはこの会に参加する資格はあるか」とか「コアファン必見」とかハードル高くて、うへー怖い、私参加する資格なくね…?と思ったんですが、構成演出がスズカツさんだと言うので思い切ってチケットとりましたヨ!て言うか自分の親しんでる分野に好きなひとが乗り込んでくると結構狼狽えますね…マジでビックリした……ザズゥシアターにヨタロウさん初参加したときくらいヒーッてなりました。

ここで個人の情報を語っておくと、原作はノベルスの三巻辺り(巻数表記がアラビア数字ではなくローマ数字だった)からリアルタイムで読んでいて、好きなキャラクターはシェーンコップとロイエンタールです。フリカッセって料理を初めて知ったのはこの作品の白兵戦描写からですヨー、人肉フリカッセ!で、八巻でヤンが、九巻でロイエンタールが死んじゃったことにガックリきて最終巻を数年読めなかったん…です……よ………。ずるずる読まずにいるうちにシェーンコップも死んじゃうよーと噂も耳にし、ますます手が伸びなくなる。結局読了したのはいつだったか。相当ブランクあった。

その後展開されたアニメやら舞台やら宝塚やらパチンコ(パチンコにもなってたんだよ、すごいよね!)やらは通っていません。原作が好き過ぎて他は認めないわ!ってことは別にない…のですが、なんか、手が出なかった……。と言う程度のファンです。あーでも、清原昌美/赤坂好美さんにはとても影響を受けました。と言うか、男子バレーから知ったこの方の現在の活動、ってことで銀英伝と出会ったんだもの。田舎の女子高生にすごく親切にいろんなことを教えてくださった(当時はwebなんかないから手紙でな!)。今でもこの方の絵でキャラクターが動くと言っても過言ではない。

ああもうここらへん、わかるひとにはわかるとしか言えないですハハハハハ。そんなレベルのファンが書いた感想だと言うことをお含みおきください(こわごわ)。

で、今回の公演は原作テキスト好きには結構しっくりくるもので楽しかった。自分の持っているヴィジュアル情報が少ない(それこそ清原さんの絵くらいしか・笑)ので、登場人物を自分の好きな顔で想像して聞けるヨー!第一巻『黎明篇』を主軸に、物語の歴史解説とヤン語録で構成されたテキストを陰山泰さんが朗読し、効果音や音楽を大嶋吾郎さん、木戸やすひろさん、久保田陽子さん、鈴木佐江子さんらのコーラスグループがつけていくと言うライヴ感溢れる構成。近年サラヴァ東京でスズカツさんが開催しているリーディングシアターのノウハウが活かされていました。得意とするカット&ペーストの構成力にも唸る。

ヤン語録で構成されているので同盟視点からの内容。こうなると帝国側の登場人物の言葉で構成されたものも観たくなる。登場人物はそりゃもうものすごい数なうえ、皆さん数多の名言を残しているとくる。シリーズ化を期待するなと言う方が無理ですね。壮大な物語のダイジェストを見せるのではなく(スズカツさん曰く「そんなの無理!」)クロニクル紹介によってその後の展開に思いを馳せることが出来た今回の構成は、絶妙な作品のプレゼンテーションにもなっていました。

個人的には原作を読んでいた当時より切迫感が強くなった箇所もありました。勿論、そこを教訓が〜とか啓蒙が〜とは思いません。自分のなかで戦争の予感が近くなっているから気になるのだろうな。本文中に出てくる単語を淡々と並べて行くシーンがあったのですが、その単語ひとつでパッとその場所の様子や人物、階級や家族がぞろぞろ数珠繋ぎで思い出されていく脳内ゲームも楽しめました。それこそ途中から「フリカッセって言わないかなー」なんて思ってた(笑)。あとやっぱ「ムライ」は異彩を放つのですごく耳が惹き付けられる(笑)。

朗読のタイミングに合わせて大嶋さんがキューを出し、コーラスのタイミングを合わせていたのですが、大嶋さんはイヤーモニターをしてiPhone(iPodかも)に繋いでいた。インプロの部分もあったのかな、どうやっていたか知りたいなー。ボブ・ディランの「Blowin'in the Wind(風に吹かれて)」をメインテーマに、スズカツさんらしい選曲でこの辺りも楽しかったです。

このリーディングが一部で、二部は田中芳樹さんとスズカツさんのトークイヴェント。司会は今回の公演を企画した安達裕章さん。うわわ、田中先生初めて生で見た…動いてる、喋ってる……。書いてもいいかなと言うところをちょっとだけおぼえがき。記憶で起こしているのでそのままではなく、話も前後しています。

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す:オファーを頂いて、安達さんから全巻送られてきて読みました
あ:こちらとしてはスズカツさんにやってもらえるなんて、願ったり叶ったりで夢のようでしたよ
(そう、ここが気になってたのー!経緯が判ってスッキリ)
す:これをダイジェストでやろうなんて無理!と思った。僕としては説明があまりないものが好きなんです。物語はお客さんの頭のなかに入っている訳ですから、テキストや音から想像してそれぞれの銀英伝を楽しめるような、記憶を呼び起こせるようなものをやってみたいと思った。回を重ねるごとにダンサーが入ったり楽器が入ったりするのもいいし、可能性が沢山ある。
あ:本当に長くこの作品を愛してくださってるお客さんが多いんです。ほんの少ししか出番がなかった登場人物のことを憶えてらしたり、台詞をそらんじていたり

あ:マニア向けと前振りしていたので、こちらが足元にも及ばないくらいの思い入れを持ったお客さんばかり来るだろうし、今更これを売ってもな〜と思いつつ物販に『黎明篇』を二十冊持ってきたら、即完した(笑)三十冊くらい持ってくればよかった!
(考えてみれば自分もノベルスでしか持ってないし、文庫版とか新装版とかだったら買いたかったかも)

あ:僕が勝手に企画を進めていたんですけど
た:この日は空けといてください、六本木に来てくださいと。六本木なんて日本のヨハネスブルグでしょう、そんなとこに……

す:演出家は自分で何もすることがない。こういう舞台が観たいな〜とスタッフに提案すると、役者が体現してれるし、照明家が明かりも作ってくれる
(この辺りスズカツさんが常日頃主張していることですね)
す:なので、作家はどうやって物語を生み出しているのか知りたい。朝書いてるのか昼書いてるのか、生態を知りたい(笑)
た:決まってないんですね。小人さんが書いてくれる。十人小人がいると思われているようだけど、五人くらいかな。起きて、ねこにちくわをやって、魚肉ソーセージは食べないのでちくわを……(ふわふわ)
(その後『アルスラーン戦記』を脱稿した翌日に大雪が降り、宮崎にいた安達さんがあたふたした話で大ウケ)

あ:で、当日パンフレットに書いていますが、次は秋に。まだスズカツさんにも言ってません、て言うか今言いました(笑)
す:(笑)てことは次を構想してもいいんですね!

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ゆっくりゆっくり話す田中先生。一言も聞き逃すまいと耳を澄まし、ひとこと毎に頷く観客。貴重な時間でした。楽しかった!