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2013年06月14日(金) ■ |
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城山羊の会『効率の優先』 |
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城山羊の会『効率の優先』@東京芸術劇場 シアターイースト
旗揚げ時からDM頂いていたのにタイミングが合わずずっと行けなかった。そのうち深浦加奈子さんが亡くなった。こういう後悔は増える一方だろう。
と言う訳でやっと観に行けました。いやはやこれは…伝え聞いていた通りのエグさ、面白さ。クセになるわー。こんな職場じゃなくてよかった、でもちょっとこの職場知ってる(ええ?)。段差がない舞台は客席に地続き。目の前で起こるとっくみあいの臨場感も素晴らしかったわ…で、昔の職場で同じようなことがあったことを思い出したわ……。色恋はともかくとっくみあいはよくあったなあ、あの職場(遠い目)。で、そういうときの周囲の反応とか、ホントこれこれ!って感じだった。ヒー。以下ネタバレあります。
某広告代理店子会社。大きなプロジェクトを抱えるその部署の男女は色恋でどろどろりん、女性同士の水面下での闘いもどろどろりん。部長はその「濁った芽」を早急に摘み、業務に専念してほしいと部下たちにそれとなく伝えるが、それとなくではもうどうにもなりません。疑心が疑心を呼び、繕おうとした綻びは大きくなる一方。そのうち転がるふたつの死体。スケジュールを遅らせまいと部長は部下たちに死体を隠すよう命じ、それを知った専務は……。
部長以外の女性社員が醸し出すうわあやべえこの女って様相が半端ないんですよ。松本まりかさんてあんなに細かったっけ?吉田彩乃さんの細さも異様な程。クールな部長(石橋けいさん)がどっしり構える大地の女に見えてしまう程です。石橋さんだってスレンダー美人なのに…そしてふたりとも表情(つうかもはや顔筋)がやばい。松本さんのマジでキレる5秒前の顔とかちょ、皆逃げて!てな恐ろしさ。吉田さんはメイクであろう痣も、肌の荒れ具合や目の下の皺のより具合もちょうリアルで、マジじゃねえのと思えてしまう程。今でもあの顔思い出せる…夢に出そう……うわーやべえーこの女には関わっちゃいかんと脳内サイレンが鳴りっぱなし。病的に細い女優と言えばネクストシアターの茂手木桜子さんがいますが、彼女の場合逆にそういう役柄をやったのを観たことがないなそう言えば。『たいこどんどん』とかちょうかわいかったもんね。身体と言う見た目(まあ見た目も相当だったが)だけでない「やばさ」を醸し出していた女優陣、見事でした。そして彼女たちの衣裳(加藤和恵さん、平野里子さん)がまた素晴らしい。這いつくばったり暴れたりするのでシャツがめくれて腰や背中が丸見えになるシーンも多いのですが、絶妙にパンツが見えない!おしりの割れ目も見えそうで見えない!このあたりしっかりサイズあわせてチェックしたんだろうなーってくらい見えない!いやーなんか感心してしまいました。
反面、男性社員はそのヤバさが一見しただけでは判らない。だから本性を表したときのきもちわるさが半端ない。気の弱そうな松澤匠さんや気軽に相談出来そうないい同僚ふうの金子岳憲さんが本性を現したときの虫酸の走りっぷりったらなかったですね(笑顔で)。で、その本性見たりの台詞がまた最高にきもちわるいのよー!課長のニブチンっぷりも絶妙だったわー、そんなだから不倫相手が発狂するんだよー(笑)。この課長を演じた鈴木浩介さんや、専務を演じた岩谷健司さんの「理解があり、常識人の振りをして実は逃げ道を沢山用意してる」っぷりも素晴らしかったわあ。
そして部長ですよ。色恋どうでもいい業務ちゃんとやれってなクールな上司なんですが、しかし連発される「どうでもいいけど」の前には、妙に詳しく男女関係を把握した語句が付く。全然どうでもよくないってのが丸見えです。これは隠してる何かがあるな、過去か、それとも進行形か…最後にそれが露になる。と同時に濡れ場になだれ込む。一触即発のテンションが解放される爽快さすらありました。「いくううううう」で幕ってとこも最高です。
客席は演技エリアをコの字型に囲むように配置されており、席によって登場人物の表情は見えたり見えなかったりする。あのとき彼は、彼女はあの言葉をどう受け取っていたかを想像し乍ら観る面白さもありました。まともなひとがひとりもいねえ。でもまともって何かしら?常識の位相がジワジワズレていくさまが怖いやらおかしいやら。人間のグロテスクな感情をこうもおかしく悲哀を持って描かれてはもう笑うしかないわー。皆やるなら徹底的に隠して!隠し通して!バレても知ったこっちゃないけど!一日の三分の一から半分を過ごす職場、そこが人間関係でこじれまくってるストレスたるや。そんなところにどーして在籍し続けるのって言えれば楽ですねえ。
細やかな言葉のひとつひとつが「濁った芽」になる。この「濁った芽」って言葉自体も面白かったな。目じゃなくて芽。わざわざ「芽の方ですか」って台詞で確認する念の入れよう。全員が張らなくても通る声で、そのむずむずする会話が展開される。いかにもありそうだわーと思えてしまうところがまた怖いですね(笑)。ある意味ブラック企業、業務と直接関係ないからタチがわるい。広告代理店勤務だった山内ケンジさん、職場で何を見てきたの…虚と実の境目はどこですか……。そうそう、あの当日パンフのごあいさつをどこ迄信じていいか判らずオロオロしました。上演観た直後なんか「ああこういう人間のどろどろを深いとこ迄探ってたらおかしくもなるわねー」なんて納得してしまったくらいです。後に知ったところによると、「ごあいさつを書いたのが奥さまってのは本当」「入院云々の内容は嘘」「ハイバイが大好きってのは本当」だそうで、ちょっとホッとしました。おっかない作家さんだわー。
次作も観たいなー、優先順位がグッとあがった。そうなんだよなあ、観たいものの優先順位をどう決めていくかと言うところもやっかいだ。今回のタイトルじゃないけど『効率の優先』で決められればどんなにいいか。でも、効率を優先させるとああいうことになる訳です(笑)。ままにならぬは浮世のならい。
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