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2011年02月05日(土) ■ |
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『幽体の知覚』 |
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小谷元彦展『幽体の知覚』@森美術館
『Phantom-Limb』は発表されたとき結構な話題になった衝撃作で印象に残っていたのですが(鴻上尚史さんが『天使は瞳を閉じて インターナショナル・ヴァージョン』の「ごあいさつ」で“ファントム・ペイン”について話していたことが頭にあったからでもある)、その作家さんと『New Born』シリーズやおおかみの毛皮ドレス(両袖部分がおおかみの頭部)『Human Lesson』、人毛で編んだドレス『Double edged of thoughts』の作家さんが同一人物と気付いたのは随分経ってから。身体感覚が大きな要素を占める作品が主ではあるものの、手法が多岐に渡っているので全容がつかみづらい印象でした。
オッシャレーにも見えるし、デザイン面からすると非常に洗練されている。しかしその素材は骨や歯、髪の毛だったりする。ふとした瞬間そのギャップに気付き、モヤモヤ感が一気に不気味さに変換されギョッとする。洗練されればされる程その実感が身体から離れていく感じがすると同時に、身体について、肉体についての自覚が強烈に促される。ボンデージ&ディシプリンな作品も多い(拘束具的な装置等)。容れ物としての身体。魂がそこに宿るか、と言うことも含め、“幽体が知覚を持つ”ことについても考えさせられる。目に見えないもの、肉体の喪失、脳化するシステム。それを頭において作品を観ていくと、どういう作家さんかがちょっとクリアになってきたように感じました。
いちばん楽しみにしていたと同時に、何故これを小谷さんが?と思っていた映像を使ったインスタレーション『Inferno』も、インタヴュー(森美術館公式ブログ『映像で彫刻をつくるということ 〜小谷元彦インタビュー(2)』)でご本人が語っているように「映像の彫刻」と言う観点から観ると腑に落ちる。時間とともに変化するもの(それは肉体もそうである)をどうやって捉えるか。その瞬間を捉えたときには、すでにその対象は次の瞬間に移動している。常に追いつかない感覚。
んあーしかしこれ、ひとりっきりで観てみたいわ…土曜の昼と言うこともあり、行列が出来ていたのです。20人くらいずつ作品内に入って観た(こんな感じ)ので、アトラクションっぽい雰囲気になっちゃってたのがちょっと残念。側面は映写幕、天井と床面は鏡になっているので、ひとが多いとその鏡像も多くなる。映像の可視面積が減るので、理想としては多くてもこのくらいの人数で観たかったー。平日夜遅くに行けば多少空いてるかなあ。
あとこのひと、恐ろしく器用な印象。今回メイキングの様子も映像で流れていたのだが、弁が立つし、自分の作品を解説するのも巧い。外見もオシャレなお兄ちゃんと言う感じで、通りかかった年配の鑑賞者が「…この子が作ってるの?」と驚いていたのも納得な、独特の軽さがある。このギャップも、作品に通じるものがありました。見せ方の整理も巧い。
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