新国立劇場オペラ劇場 作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ 演出:野田秀樹 美術:堀尾幸男 衣装:ワダエミ 指揮:リッカルド・フリッツァ 東京交響楽団
マクベス:カルロス・アルヴァレス マクベス夫人:ゲオルギーナ・ルカーチ バンクォー:大澤 建 マクダフ:水口 聡
野田版「マクベス」昨年の初演から一年も経たないうちの再演である。 初めてのオペラ演出なのに大胆な・・。 私はずっと野田ファンなのだけれど、昨年の「マクベス」、解釈は面白いとは思ったものの、肝心の演出が好きにはなれなかった。 なので今回の再演は見るつもりはこれっぽっちも無かったのだ。 なのに、今回ちょっと評判が良いと小耳に挟み、性懲りもなくつい当日券で行って見たのだった。
演出は、初演時とほとんど変わらず。
まず、マクベスの未来を予言する魔女を、従来の死者と生者の間に位置するものとしてではなく、既に死者となっている骸骨と設定したのは面白いと思う。 そのため予言に取り憑かれる業の深い人間の苦悩を描くというより、逆らえない運命に操られた人間を描いた日本的な解釈ができあがった。 運命が動いているときに舞台上に現れる骸骨・・特に象徴的だったのは、バンクォーの息子が命からがら逃げるとき、骸骨達が彼を取り巻き守るようにして脱出させる所だ。 骸骨を使った受動的とも言える野田の予言=運命論は面白かったのだが、骸骨ありし!で満足してそこで止まってしまったような気がする。 そして舞台演出は・・だんだん胃のあたりが重くなり、「醜悪」などという言葉がぼんやり浮かんだりするなど、本当に私には合わなかったようで辛かったのだ。 ・・と思ったのは初演時。
前回私には受け入れられなかった美術や衣装は、今回とりあえず醜悪な衝撃が薄れ、気にならなくなっていた・・というか気にしないようしたんだけど。 心底ひいてしまった群衆の動き部分は、(私の気のせいかもしれないが)改善されていた部分があったように思う。 魔女(骸骨)の饗宴シーンでは幼稚な小道具が無くなっていたように思うし、スコットランド難民のだらだら動きの繰り返しもシェイプされていたような気がするし。
出演者はマクベス・マクベス夫人とも、それぞれの事情で当初キャスティングされた歌手の代役というアクシデントが起きたのだが、逆にそれが吉と出たようだ。 結局マクベス夫人は、初演時と同じソプラノになってしまった。声の迫力だけはあるものの、前回、装飾音を皆すっとばして歌っていた(・・と思ったのだけれど・・)二幕目のアリアは一応ちゃんと歌っていたように思う。好きなタイプではないけれど前よりは良かったかと。 マクベス役のアルヴァレスは格好良かったし♪歌も声も良かった。 あ!合唱が素晴らしかった。演奏も良かったように思う。
てなわけで、割と満足したのだった。
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