表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2004年12月20日(月) 「ビフォア・サンセット」

◆ ビフォア・サンセット
Before Sunset
[アメリカ/2004年/85分]

監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演・脚本:ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク

「恋人までの距離(ディスタンス)」という変ちくりんな邦題になってしまった前作「Before Sunrise」の正統派続編である。
あれから10年近い年月が流れ、作家となったジェシー(イーサン・ホーク)が前作の経緯を書いた本のプロモーションのヨーロッパツアー最終地パリを訪れた所から始まる。
本屋でファンとの質疑応答の合間に差し込まれる前作のシーンの数々。観客である私もあのリアルで生き生きとしたお話に思いを巡らせつつ何故か涙ぐみそうになったりする。
と、急に過去のフィルムではないセリーヌ(ジュリー・デルピー)のアップが映し出される。何と粋な登場!
もちろんジェシー(イーサン)も驚いただろう。その微妙な体温が伝わる繊細な演出である。
このシーンに限らず、繊細でスマートな演出とリアルな会話は健在である。
脚本にイーサンとジュリー・デルピーもクレジットされていたので、役柄に成りきった二人もこのリアルなお話の創造者であったのだろう。

本屋でのプロモーション後、アメリカに帰る飛行機の時間までという期限付きで、また二人でパリを彷徨いリアルな会話劇を堪能させてくれる。
もちろん、前作のラストでした再会の約束はどうなったのかという観客にとっても重大な関心事にもちゃんと答えがあり、ため息。

本屋でのジェシー(イーサン)の登場時に既に指に結婚指輪が示されている。
もちろん彼女の方もすぐに気づいただろう。
出会ってから最初のさぐり合いが一段落した後、その話題に触れられる。
その時、一緒に公園を歩いていた二人の間に奇しくも階段の手すりが現れ、手すりを挟み左右分かれて降りることになる。
またすぐに合流するのだが、ん〜っと唸ってしまうこんな演出が山盛り。
また、言葉と気持ちが違うことを語っている・・・というのは我々現実の生活ではごく当たり前の事だけれど・・・それをこんなに繊細にかつ普通に描いた映画がかつてあっただろうか?などと思ってしまう。

再会の喜び→質問やちょっと表向きの現状報告→さりげない探り合い→少しづつ見えてくる本音→ほわほわほわ〜ん。

ラストは曖昧ながらも確固たる方向を示して終わっている。
この余韻の素晴らしさ。
もうこの続編は見たくないと思う。
「そして二人は末永く幸せに暮らしました」で終わるお話に続きはいらないのだ。
(いや、もし映画が出来たら見るけどさ・・)

もう一回しみじみ見たい、その価値のある映画である。

ただ、ひとつだけ。
ジェシー(イーサン・ホーク)着用のカウボーイシャツ的切替入り小花柄シャツ。
パリのアメリカ人を強調したかったのか、これだけはいただけない・・・。


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