2004年11月29日(月) |
「ベルヴィル・ランデブー」 |
◆ ベルヴィル・ランデブー Les Triplettes de Belleville
[フランス・ベルギー・カナダ/2002年/80分] 監督・脚本:シルヴァン・ショメ
フレンチ・アニメである。 フレンチ・アニメと聞くと、「ファンタスティック・プラネット」「時の支配者」など素晴らしきルネ・ラルーの世界を思い出す人もいるだろう。 フランスのセンスの良さを受け継ぎながら、昨年度のアカデミーアニメーション部門と歌曲賞にノミネートされた本作は、より幅広い層に受け入れられそうなアニメだ。
映画は、白黒テレビの映像で始まる。 ジャンゴ・ラインハルトやフレッド・アステアやグレン・グールド(猫背でうめきながら弾いていたので多分そうかと思う)の時代、(この映画の後に登場する)歌い踊るベルヴィルの三姉妹も同じくテレビ出演していて人気を博していたようだ。 ストーリーは、これらのテレビを見ているおばあちゃんと孫から始まる。 セリフが無く映像のみで簡潔に過不足無く説明する手際とセンスの良さは、本当に気持ちがいい。
その後、小さな男の子だった孫が成人し、ツール・ド・フランスに出場するあたりから話の本筋がスタートする。レースの最中に孫誘拐→孫救出に疾走するおばあちゃん。 孫を追ううち、ベルヴィルという街に到着する。 この街、ツール・ド・フランスの中間ゴール地点のマルセイユから船で航海した末に到着した大都会である。 この船のチェイスが脱力するほどナンセンスで凄い!大型汽船を足こぎボートで追うのだ! 着いた街は、ちらとイタリア語らしき看板が目についたが、架空の都市のようである。 この街の裏社会を牛耳るマフィアらしき組織に誘拐されたわけだ。
このベルヴィルまでたどり着いたはいいが、お金も頼る所も孫の手がかりもなく途方に暮れるおばあちゃん。 そこへ登場、救いの手をさしのべるのが、今はもう年老いているが冒頭テレビで歌っていた三姉妹なのである。 三姉妹は彼女らが住むスラムのおんぼろアパートにおばあちゃんを招き入れる。 ここでふと時計を見上げると(会場のヤクルトホールはスクリーンというか舞台の上方にデジタル時計があるのだ)始まって40分、きっかり折り返し地点だった。 起・承と来て、転の部分で、きちんと半分、あぁ気持ちがいい。
この三姉妹の住むアパート、外は荒れ果てているが室内は質素ながらも居心地よく整えられている。 壁にはジャック・タチの「ぼくの伯父さんの休暇」のポスターが貼ってあり、るつ、大いに喜ぶ!
老三姉妹は過去の栄光の力でショーに出演しているが、おばあちゃんも一緒にステージに立つ部分はこの映画の白眉か。冒頭から再三繰り返されるこの「ベルヴィル・ランデブゥゥゥー〜♪」のメロディは頭から離れませぬ。 昨年度のアカデミー賞授賞式で、冷蔵庫や掃除機で歌い踊っていたシーンがよみがえる。
とにかく、三姉妹と協力して孫救出という本来のストーリーより、ディテー ルの楽しさ・センスの良さ・小気味よいギャグですっかり気に入ってしまった映画だった。
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