表身頃のココロ
ぼちぼちと。今さらながら。

2004年11月10日(水) 「ビハインド・ザ・サン」

◆ビハインド・ザ・サン
Behind the Sun [ブラジル/2001年/92分]

監督: ウォルター・サレス
出演: ロドリゴ・サントロ  
ラヴィ・ラモス・ラセルダ 




「セントラル・ステーション」と「モーターサイクル・ダイアリーズ」の間に作られた
作品。それが今になっての公開だ。
「セントラル・ステーション」のモチーフは聖書だったが、こちらはギリシア悲劇だと思う。

物語は、長年の宿敵家族に長男が殺された後、次男が復讐をしなければならない状況を描き出し、それをラストシーンに繋げる三男のナレーションから始めている。
ラテンアメリカ人の血を代償とする誇りは「予告された殺人の記録」にも描かれていたが、いわゆるやくざではない普通の人々の中にも受け継がれている気質のようだ。

二家族の死を死であがなう因習を縦糸に、対称的にきらめく“生”も描きつつ進むブラジルの美しくもせつない寓話だ。
映像は美しく深い。
黙々とサトウキビから砂糖を作る作業の繰り返しの毎日。
そうした日々では荒れ野に太陽が照りつけ砂ぼこりの舞う乾燥した映像が続く。
それがクライマックスでは一転、雨期でもないのに時ならぬ大雨。
乾いた土に雨がしみこみぬかるみとなり、木々は緑を濃くし風に従う。
それまで淡々と描かれ続けていた人間の表に出せずにいた感情もほとばしる。
生きる事の意味も問わず、疑問も持たずに繰り返してきた生活と因習がついに大きな変化を迎える時だ。
それが定期的な訪れの雨期に起こったのではなく、唐突な雨のなかで迎えた意味は大きい。

しかし「セントラル・ステーション」でも感じた事だが、ラストのセンチメンタルさに少々のマイナスを。
余計な感情を入れず事象の積み重ねで進められてきた物語が、最後にセンチメンタルに流されてしまうのは私の好みではない。

「モーターサイクル・ダイアリーズ」でのクライマックスでもそのにおいはあったものの、格段に洗練されていたと思う。
ますます楽しみな監督なのだけれど、次回作はJホラーハリウッドリメイク版「仄暗い水の底から」って・・・。
ハリウッド進出第一弾として、雇われ監督の仕事を手堅くこなして評価を得た後、好きなことができるようになると思われるので、とりあえずがんばれ〜♪


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るつ [MAIL]

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