嗚呼!米国駐在員。
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2006年03月21日(火) WBC イチローの「思い」

昨日のWBC日本一は素晴らしかった。
アメリカではESPNで中継されたのだが、カレッジバスケットボールの中継が長引いて、WBC中継が始まった時には既に試合開始30分後。画面が切り変った時には日本が先制点を入れていた。いくら米国が予選落ちしたからといって、ベースボールの世界一を決める試合より大学バスケが優先されるこの状況。バスケが長引いていたときは本当にイライラしたが、所詮はアメリカでのWBC関心度なんてこんなものだったのだろう。それにしても、日本チーム、よくやった!アメリカに住んでいてこれほど日本が誇らしげだった事はない。


それにしても、日本代表で印象に残ったのは何といってもイチローだろう。
一連の彼の動きを見ていると、何となく気持ちが少しだけ分かるような気がする。

自分の場合はそうなのだが、アメリカ人に囲まれて働いていると、本当に虚しくなる。奴らは組織の事は考えずに自分の事ばかり。自分の都合が全てに優先するから、会社がどうなろうと知ったこっちゃない。もっというと、隣の同僚が困っていようと、自分の仕事の範疇外であればまるで関心が無い。こんな環境で働いていると、まずは組織よりも自分のキャリアアップだけに専念したいという気持ちになってくる。でも、それは長くは続かない。そのうち、組織力、いわゆるチーム一丸で何かを目指す、とかチーム一体感という感覚に本当に飢えてくるのだ。

日本で働いていたときは、組織行動が当たり前でそんな環境が少し窮屈でさえあった。個人の裁量で行動できるアメリカがうらやましく思った。ところが、いざアメリカに来て個人で動いてみると、どんなに1人でやり遂げた成果があっても、やっぱり組織力を生かして何かをみんなで達成する事の方が、はるかに充実感がある事に気がつく。

サラリーマンとメジャーリーガーの比較は出来ないけど、WBCでのイチローを見ていると、シアトルマリナーズという最下位チームでそんな気持ちを抱えていたのではないかと勝手に想像する。

マリナーズの選手は試合前に練習せずにロッカーでトランプをしているという。
自分の成績さえ良ければいいや、年俸さえ上がればいいや、そんな考えのメジャーリーガーは多いだろう。野球を心から愛しているイチローは、そんな同僚の姿が許せないのではないか。WBC決勝戦、午後6時からプレーボールなのに、午後1時には球場に現れてトレーニングしているイチローの姿が放映された。そして、そんなイチローに引っ張られるようにアップをしている他の日本人選手たち。まさに勝利を目指す集団としてのこんな一体感に、イチローは飢えていたのだろう。そう思えて仕方が無い。

逆に言えば、イチローがメジャーに来ずに日本であのままプレーし続けていたならば、きっとあそこまで気合は入っていなかったのかもしれない。

これ以上ない結果と、最高の充実感を持って終了したWBC。
イチローはこれからマリナーズに合流する訳だが、こんな体験をした後では、自分がどうすべきか戸惑い気持ちが途切れてしまうのではないかと余計な心配をしてしまう。






Kyosuke